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小説『世界見学』① / 華乃(Geno)

空を見ていた。
とても青く透き通るような空。
それと同時に、あの日のことを考えていた。
煩いくらい雨が降り、寒かった日。
今でこそ僕は世界を旅する写真家だが、
あの日が全ての始まりだった。
そして、あの日がなければ今の僕はいなかったであろう…

僕は決して不幸な家庭ではなかった。
小学の時に親は離婚、母に育てられていたが金持ちの家系だったのもありお金にはこまらなかったし、友達だって多くはないが、最低限の深い仲の友達はいた。
そこまで勉強ができるわけではないが、最低限の点数はとり、まじめではないが、怒られるようなことはしない、いたって普通の人間だった。
変わっていることをあげるとすれば、小さい頃、親戚と遊んでいる時大怪我しそうになった。
その時なぜか、自分は無傷で親戚が怪我をしたことがある。
ある時はまた、自分が飼っているペットが、なぜか毎回早死んでしまったりと、なぜか自身ではなく自分に関わりが深い人が傷ついたり不幸になったりしたのだ。
今思えば親が離婚したのも僕のせいだったかもしれない。
その現象は中学になっても続いていた。
奇妙すぎて、偶然だと信じてもらえない。

それから高校になり不思議な現象に目を向けなくなっていた。
不幸は意識しなければ、存在しないものなのかもしれない。
不幸という現実から目を背けるために、青春に没頭していた。と言えばカッコよく聞こえるかもしれない。
しかし、現実から逃げた異空間へと逃げ入ったことは、刹那的な時間の過ごし方で、
その時、未来など考えていなかった。
つまり、特別勉強などしていなかったのだ。
そして、高校3年の冬。受験に落ちた。
当然と言えば、当然だ。
しかし、幸運なことにお金に困っていなかったため、浪人を決め勉強にはげむことに決めた。
浪人を選んだのは、プライドが高く、夢もない自分に甘えた結果なのかもしれない。
この時、私は何者なのか?と初めて自分に尋ねたかもしれない。
だが、枠に収まらない今、未来の見通しもつかないのに、
なぜか、孤独とか不安とか、そういった感情はまったくなかった。
むしろ、レールから外れたことに自由さを感じるほどだ。
そうして、確約のない未来へと一歩進んだ。

そして、1年が経った。
とても寒く、煩い雨の音でめざめた。
受験もおわり、手応えもあり怠けた日々を過ごしていた。
しかし、結果はいいものではなかった…落ちたのだ、不合格だったのだ。
僕ははじめて未来への不安や、自分は不幸ではないかなんて考えた。
そう、挫折を味わったのだ。
この時、初めて自身について考え、見つめたかもしれない。
今までは周りが不幸を悲しみ、どちらかといえば他人を想っていたからだ。
そんな中ふと、小学の時に亡くなったお爺さんの言葉を思い出した「国の経済発展の裏には不幸になっているひとがいる、工業発展している裏には沢山の苦しんでいる人がいる、良いことの裏には、必ず良くないこともおこっている。」っと何度も聞かされた。
今考えてみると、その言葉が良くわかった。
僕の住む国は勉強もでき、裕福な人も多い比較的恵まれた国だった。
そこで、ふと思ったのだ。
多くの違った土地を旅し、そこに住む多くの人々と直接触れ合い様子を写真に収め広げたいと。
この時は、受験から早く逃げ、何か意味のある道に進みたい、という同期だったかもしれない。
だが、幸いにもやりたいようにやらしてくれる、放任的な家庭で、また、金銭的にも余裕があったため、この行動に後押しがあった。
そうして、自分探しと言えばいいのか、そんな長旅がはじまった。

"1章 名前のない国"
どんな国だろうと思いながらワクワクする反面、はじめての国で少し緊張もした。
名前がない?どういうことなんだろう、やはり国の名前がまだきまってないということなのかな。
なんて考えてながら道をあるいていると、先に大きな門が見えてきた!門の前に2人の銃を持った人が立っていた、おそらくあの門が名前のな国の国境、入り口なんだなんだろう。と思いながら、目の前に着いたとき。
「どのようなご用事ですか?」っと聞かれ。
旅をしながら写真を撮るものです。
入国を許可していただければありがたいです。と言った。
「では門を開けます!」
思っていたよりすんなり入れたようで、少し緊張もとけてきた。
そして、国への一歩をふみだした。
最初の印象はとにかく普通の街、家があり、店があり、見るからに街っと言った感じで、普通としか表現できない街だった。
その風景からは、名前がない国という理由が想像もつかなかった。
とにかく、1泊する宿を探し、それから、国を探検することにした。
宿は少し安めの古そうな宿に決めた。
とても、優しい老婆が部屋に案内してくれることとなった。
ついでに、何か聞き出したいと思い、話を聞くと、客人は久しぶりだと言っていた。
それが気にかかり、「なぜですか?」と聞き返すと、
「こんな普通で、何もないところに誰もこない」と言っていた。
そして、国を夜まで探索することにした。
街をぶらぶらあるいていると、袖をまくりものを運ぶ中年の男性とすれ違がった。
そのとき、右腕に英語と数字が書かれたものG-1022と焼かれているのが、ふと目にとまった。
その後も、中年や歳をとった人の腕には似たようなものD-2014やE-2243のような英語と数字の組み合わせがみられた。
それ以外には、何も変わったものはなかった。
宿に帰り、みたものを老婆に聞いてみた。すると、老婆が、話せば長くなりますが、お聞きになられますか?と聞いてきた。
教えてください。と答え、
椅子に座るように言われ、言われるがまま腰をおろした。
そして、少し重い口調で「昔、この地は植民地で多くの国の人々があつまり労働を酷使していました。
とても、苦労し死ぬような思いで働いていました。
この国が名のない国と呼ばれるようになったのもそれが原因です。
街で腕に記号をつけている人をみて不思議に思ったかもしれないですが、
この国ではそれがその人の名前になり、国も名前など必要ないとつけられなかったまま今の国に成長したのです。
あの頃の名残のまま、それがこの国の当たり前なのです。
自由な今でも、子供には記号をつけますしそれで呼び合っています。」と言っていた。
僕は、それが素直に受け入れることができなかった。
人には名前があることが当たり前と思い生きてきたし、普通の名前が与えられている事に、なんの疑問すらもたなかったからだ。
しかし、ここで改めて自分に名前があるありがたみに気づけたような気がした。
最後に老婆は、「君の名前はなんっていうんだい?」と尋ねてきた。
僕は、ーーーー。
そして、その日は終わった。

朝、カメラを持ち街に出ていた。
理由を知れば見えてくるものも違った。
街を少し離れると広大な大地が広がり、大きな機械が自動で畑をたがやし、水をあげていた。
もう、おそらく植民地時代の跡は残っていないだろうと思われるほどに機械が導入され近代化が進んでいた。
今も残る昔の跡のようなものを撮るのを想像していたため少し困ったが、これが今のこの国のあり方だからこれを撮ることにした。
結局、現代の姿と、近くで作業をしていた腕に記号をつけた男性を写真におさめた。
名残惜しいが、この国のことが分かり写真も撮ることもで、つぎの国もあるので遊んでいる暇もなく、宿の老婆に挨拶をし、この国を去ることにした。
門を出たあとに門から中を覗くように写真をとり、名のない国をあとにした。
暗い過去に縛られず、前向きに進展している様子がわかりとても良い街だったな。
なんて考えながら、つぎの街を目指しまた歩き出した。 (続く)



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。これまで、物語を書いたことがなかったため、誤字や脱字が多くあると思われます。読みにくくて申し訳ないです。未来への不安、何かしたいけどできない、といった感情をテーマとしています。この旅の中で、主人公がどのように変化していくのか。お楽しみに!!

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