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弱聴の逃亡日記

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東京から故郷の岩手県まで歩いて旅した経験談を少しコミカルに、ときどき真面目に綴ります。
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2018年8月の記事一覧

弱聴の逃亡日記「決意の夜」

 午前0時。明かりのない六畳間に、テレビだけが耳障りな音と薄暗い光を放っている。テレビの前の円卓には使った食器やら食べかけのパンやらお菓子のビニールやらが散らかっている。

 そのすぐ脇の、シワだらけの布団に丸まり、テレビ画面を見つめたまま微動だにしない物体。これがこの部屋の主であり、この旅の主人公、弱聴だ。
 弱聴はつい最近、女にも関わらず頭を刈り丸坊主にした。それで周りから「弱聴」と呼ばれるよ

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弱聴の逃亡日記 予告編

弱聴の逃亡日記 予告編

――この物語は坊主頭の28歳独身女、弱聴(仮名)が現代社会という荒波から抜け出し、東京から故郷の岩手県まで約430キロの距離を歩いて旅したお話である。
(本編より)

仮タイトル「弱聴の逃亡日記 ~430キロ徒歩の旅~」

――弱聴は突然むくりと起き上がり、ニット帽を脱いだ。
 坊主頭が露わになる。数ミリしか伸びていない髪の毛に、丸い頭の形がはっきりと表れる。さっきまでニット帽に入っていた耳がなん

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弱聴の逃亡日記

坊主頭のフリーター、弱聴でございます。

去年11月下旬、「しばらく会社休みます」のメールを残し、連絡が取れなくなった弱聴…。
失踪?蒸発?病気?…いろいろな疑惑が飛び交ったことでしょう。
何せその数週間前に頭を丸刈りにして周囲をざわつかせた女ですから。

連絡が途絶えた期間、弱聴は何をしていたか…

東京から岩手まで歩いて旅をしておりました!

本当です。ウソじゃないです。

「それ、本書いたら

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