![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/19923698/rectangle_large_type_2_76e03cc399520e2393ea9bf01457a154.jpeg?width=800)
さぁ、みんなで家に帰ろう。
夕食の片づけを終え、逃げ回る次女をなんとかつかまえて歯磨きをしている頃、スマホがメールの受信を知らせる。
早稲田アカデミーからのお知らせです。〇〇校より、2020/02/25 19:55:16 に下校しました。
長女の塾の授業が終わったのだ。
そのメールからほどなくして、再び私のiPhoneが短く震える。
東急セキュリティのサービス「エキッズ」から届く、バスの乗車を知らせるメールだ。
さて、出かけるか。
スマホと家のカギをポケットに入れて、下の娘にコートを着せる。
このタイミングで「トイレに行きたい」と言われると、バスの時間には間に合わない。
今日はトイレはスルーだったけれど、玄関前で「ミニーちゃんの長靴を履いて行きたい」とぐずられた。
今晩は東京でも星がよく見えるほど、雲ひとつない夜空なんだけど。
オーケー、長靴で行こうか。
家を出てしばらく歩くと、突如、道端に立ち止まり、上目遣いで私の目をとらえ、無言で両腕を伸ばす次女。
なだめすかしながら歩かせるのと、抱っこしてバス停へ向かうのと、どちらが早いかを頭の中で瞬時に計算する。
よし、抱っこだ。
すっかり重くなった4歳児を抱え、バス停へと急ぐ。
ところが、数十メートル進んだところで、急に手足をバタバタさせ、腕から抜け出そうとする次女。
「おかあさん! ミニーちゃんの長靴が脱げちゃったよ!」
泣きそうな顔で訴えられ、慌てて来た道を戻る。
暗い道路の真ん中に、ぽつんと倒れた赤いリボンが目に入る。
あった!
あんなところに落としちゃったのね、ごめんね、おかあさん、気づかなかったわ。
次女に長靴を履かせて、再びバス停へと小走りで向かう。
もうすぐ、バスが到着してしまう。
降りたときに、バス停に私がいなかったら、長女は不安に思うだろう。
早く行ってあげないと。
「おかあさん、がんばれ!」
にこにこしながら、次女が歌うように声援を送ってくれる。
この角を曲がったらバス停はすぐそこ、というところで、バスが目の前を通り過ぎる。
そのバスの中に、一瞬、長女の姿が見えた。
停車したバスのドアから、白いコートを着た小さな女の子が降りてきた。
重そうな、大きなリュックを背負っている。
キョロキョロと周囲を見回し、まだ少し離れた場所にいた私を見つけて、パッと花を咲かせたような笑顔になった。手を振りながら駆け寄ってくる。
「おかあさん、ただいま!」
おかえりなさい! 今日も一日、よくがんばったね。
無事に帰ってきてくれて、ありがとう。
姉妹の子育て、特に長女の中学受験の伴走記録です。 いただいたサポートは、勉強をがんばる娘へのご褒美に使わせていただきます!