休職中に蕎麦屋でイキった話
私は突然休職することになって、時間を持て余していた。
すると妻(世界一可愛い)が「近所の蕎麦屋で板わさ食べるのはどう?」と提案してくれた。
板わさ…? その手があったか!
私は常々、蕎麦屋で板わさを食べることに一種の憧れを抱いていた。
それは以前YouTubeで見た、とある動画に起因している。
その動画は胡散臭い男が東京の有名な蕎麦屋にぶらりと立ち寄り、
板わさと日本酒で一杯やり始める内容だった。
驚くべきはその板わさの値段…
正直覚えてないし、動画を見直すつもりもないが、1,000円近かったような気がする。
私は驚愕した…
だって板わさだよ、板わさ。
かまぼことワサビだけだよ…?
まるでそれが江戸っ子の『粋』であるかと言わんばかりに、その男は板わさを食い、飲み、別のおつまみにも手を伸ばしていた。
そこは居酒屋じゃなくて蕎麦屋なんですけど…?
正気とは思えないようなその内容に、私はくぎ付けになっていた。
いつか、私も蕎麦屋で板わさで一杯やりたい…!!
そんな夢がついに叶うことになったのだ。
決戦場は家から徒歩2分の蕎麦屋。
以前妻(世界一可愛い)と一回来たことはあるが、板わさがメニューにあったかは定かではない。
平日の真っ昼間、景気づけに『うまぴょい伝説』を聴きながら向かう。
うまぴょい! うまぴょい!
当然だが聞き終わる前に到着した。
満を持して入店。
「いらっしゃいませ~!」
若い店員さんが笑顔で出迎えてくれた。
一人で来たせいか、ちょっと緊張してきた。
いや、ここで蕎麦ランチだけ食って逃げ帰っては男がすたる…!
テーブルに案内され、メニューを穴が開くほど眺める。
ふむふむなるほど…
あったよ板わさ…!
その値段、なんと700円!
いや、あの動画よりは安いはず…
私は逃げ出したい衝動をかろうじて抑えた。
そして地酒も半合ほどいただくことにした。
お酒に弱いから、昼間っから一合も飲んだらフラフラになっちゃうからね。
お蕎麦は何にしよう…
ランチだしそんな豪勢にいくわけにもゆくまい…
とりあえず、一番安いせいろ(900円)でお茶を濁すか…
ややお客さんが増えつつある店内。
店員さんを呼び、恥ずかしさをこらえつつなんとか注文した。
ただこの店員さん、大声で注文を復唱するのである…!
そして厨房のおばちゃんもさらに復唱。
何回言うねん…!
完全に昼間っから蕎麦屋でイキってるおっさんだと思われてしまうだろ…!
実際その通りなので、私は開き直って再び『うまぴょい伝説』を聴く作業に戻った。
五分ほど待っただろうか。
蕎麦を素揚げしたようなもの(サービス)と、板わさ、日本酒が出てきた。
再度大声で注文内容を繰り返すおばちゃん。
何回言うねん…!
この時、私は他の客席に背を向ける形で座っていたため事なきを得たが、もし他のお客さんに顔を見られる状態だったら、一体どうなっていただろうか。
想像するだけで恐ろしい。
到着した板わさを眺めてみる。
真っ白で分厚いかまぼこが5切れ、互い違いに配置してあった。
これで700円か…とは思わず、ややねっとりした美味しそうなワサビと醤油をかまぼこにつけ、口に運んだ。
うん、普通に美味しい。
もっちりと弾力が強いかまぼこは、食べ応えがある。
魚の風味はそこまで強くはなく、ワサビの香りも楽しめた。
そして日本酒をキューっと流し込む。
これだよこれ…!
私が求めていたものはここにあったのか…!
ついでに蕎麦の素揚げ(?)も食べてみようか。
うん、素朴な味わい!
味付けされてないなこれ!
窓から外の風景(近所)を眺めながら杯を傾ける。
今頃、職場の同僚は一生懸命働いているんだろうなあ、とか、働いてないって素晴らしいなあ、とか、罪悪感とも優越感ともつかない複雑な感情が私の中で入り混じっていた。
気が付けば板わさはすっかり無くなっていた。
ワサビが少し残っていた。
もったいないから醤油をつけて酒のつまみにした(貧乏性)。
ツーンと来た。
そしてせいろ(900円)登場。
しかし油断してはならない。
ここまで来たら、『粋』に食べる必要がある。
まずは "つゆ" をつけずにそのまますする。
なぜかって? SUSURU TV.ではつけ麺を食べるときそうしているからだ!
蕎麦にも応用した形だ。
う~ん、蕎麦の風味がより感じられたような、よくわからないような…
普通につゆをつけて食べてみた。
うん、コシがあって美味しい!
メニューには何割蕎麦がどうたら、田舎蕎麦がどうたら書いてあったが、そんなの関係ねぇ!
美味しければいいのだ!
そのままぺろりと完食。
うーん、もっと食べたいがこれ以上の出費は避けたいので我慢しよう。
お蕎麦ってなんか量少ないよね。
私の食い意地が張ってるだけか?
そんなこんなで蕎麦湯が出てきた。
ガブガブ飲んで、ふぅ~満足!
お会計です!
合計2,100円(くらい)!
ランチにしては高くついたが、まあこんなもんでしょ!
一生に一度であろう、良い"イキり”体験をさせてもらいました!
ごちそうさま!
…という話を妻(世界一可愛い)にしたら、喜んでくれました。
良かった良かった!
完
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