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「東京無地染」から覗いてみる「くすみカラー」な和色の世界

先日、新宿高島屋で行われた
東京都伝統工芸展に遊びに行ってきました。

東京都で受け継がれてきた
様々な伝統工芸の実演販売や体験イベントが行われる催し。
職人さんとの距離も近く、見どころ盛沢山です。

百貨店ということもあり年配の方が多めでしたが、
老若男女問わず、若いカップルや
外国人観光客の方も来られていてとっても賑やか。

私も伝統工芸には少ーし興味はあったのですが、
東京都の伝統工芸品は「江戸切子」くらいしか知らない程度。あせあせ。
それでも気さくな職人さんや販売員さんが多く、
解説を聞きつつ楽しむことができました。

東京無地染を体験!~無地染に模様をつくる~

「とりあえず体験イベントをやりたいな~」と思い
開催されていたものから選んだのは
「東京無地染」絞り・板締め染め体験!
手ぬぐいまたはトートバッグの染付けができる体験とのこと。

いざ、職人さんのいる体験コーナーへ。
*この時、教えてくれた職人のおじさまたちが
なんとも愉快な方々だったので、堅苦しくもなく、楽しく体験ができました!ありがとうございます!

まずは、手ぬぐいorトートバッグを選びます。

わたしたちはトートバッグをチョイス。
身近に使えるアイテムだと、体験のハードルが低くなる気がします。

その次は、
絞り・板締めをするためのアイテムを選びます。

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「絞り」はただ輪ゴムで縛るだけでも
できますが、ビー玉やクリップを使ってもおもしろいとのこと。

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こうやってきゅっと結んだ部分が
染まらずに残ることで模様になります。

「板締め」は、丸や四角などの形をした木の板で
布を挟み、工具で締めることで染まらず模様が残るというもの。
イルカやペンギンの形もありました。

「無地染」なのに模様を作るの?無地じゃないの?
という疑問は一旦置いておきましょう。あとでわかる。

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それらをどうにか頑張って組み合わせて。。。

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結んだり挟んだり。

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・・・できました!

トートバッグなので、表裏違う模様をつけることが可能。
さらに取っ手も絞っちゃえ~と色々やっているうちに
とんでもないモンスターを生みだしていたようです。前衛的ぃ。

何色にでも染められる、それが無地染。

いよいよこのモンスターたちを染めていくのですが、

午前中でまだ色を作っていなかったらしく、
「何色にしたい?」と聞かれました。

「何色があるんですか?」と聞くと
「そりゃあなんでもあるよ!」と。

そう、無地染とは
白い布をお客さんの求める色に染める技術

何色でも、要望通りの色を作り出すのが「職人技」なのです。

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楽しくおしゃべりをしながらも、
真剣に色をつくってくださった職人さんたち。

お鍋でコトコトつくります。
その姿は感覚だけで味を作り出す料理人のよう。

染める作業自体は機械化が進み、
昔ながらのやり方と変わった部分はあるけれど
色を作りだすには人の感覚が必要だそう。

お客さんの求める色をつくる無地染職人さん
今では都内に6軒ほどしかないそうです。

さて、完成品は何色?

さあ色も作ってもらい、いよいよ染めるよー!
と、その前に。
模様部分に色が染み込まないよう
最初に全体に水を通します。

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そしてようやく鍋の中に!

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わー!

たまに混ぜながら10分程度煮ます。

鍋から上げて、職人さんに洗ってもらい、
いよいよパーツを外していきます!

どうなるかどきどき。

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\じゃーん/

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綺麗な「青」に染めていただきました!

輪ゴムで絞った部分も綺麗な模様に。

手作りの色に染め上げられたトートバッグは
和風でかっこいいものになりました。

普段なかなか意識しない「色」も、模様を出すことで際立つような気がします。自分で模様をつくるからこそベースとなる「無地染」が身近に感じました。


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※後日撮影

裏面には長細い四角の板締めを。
なんとなく竹っぽい。

和の色彩は着物の色彩

今回染めてもらった色は「青で」とお願いしましたが、
普段無地染の職人さんたちが作っているのは
着物を染める色。つまり、何色?

今回作ってもらった青も、
絞り模様も相まってか和風な印象をうけますが…。

東京無地染が作ってきた色って、
どういうものだろう?

東京都染色工業協同組合によると、

最も基本の染め付けである無地染。平安時代、仏教の伝来と共に藍と紅花が伝来し、江戸時代になると、紫紺で染めた「江戸紫」が「江戸っ子の粋」としてもてはやされました。現在の東京無地染は染料の進化や生地の高級化に対応しながらも、江戸の色と伝統工芸の技を活かし逸品を生み出しています。

江戸で染められた紫が「江戸紫」と呼ばれ人気だったということから、
時代や地域独自の色文化があったようです。

そんな流れから受け継がれてきた無地染の技術。

着物に使われてきた歴史があるから、着物じゃなくても「和」を感じる。
今まであまり意識していなかったけれど、和装独自の色彩感覚っておもしろそう!

日本では昔からくすみカラーが人気だった!

もう少しだけ、色について。

日本古来より伝わる色を「和色」と呼ぶそう。
おもしろいのはその名前や由来。

たとえば「ふじねずみ」

最も品格高い部類とされる「藤鼠」の無地染めも。刺繍半衿をアクセントに軽やかな染め帯を選べば、普段着にも適した装いに。無地だからこそのコーディネートの幅を楽しめます。
「鼠」と名の付く染めは、繊細に染分けられ江戸の人々が特に愛したシックな色合い。なかでも紫がかった「藤鼠」は、着る人を品良くたおやかに見せてくれます。金銀糸を織り込んだ重厚な唐織の袋帯を合わせれば、格式のある場にもふさわしい華やかな着姿となります。

東京都染色工業協同組合
http://www.tokyo-senshoku.com/muzi/index.html

名前だけ聞くと、あまりきれいな色に思えないけれど、
江戸時代から人気が高いとても格式高い色。

鼠色=グレーで、●●鼠という名前の色は
まさに今流行りのグレーがかった「くすみカラー」のこと!

はっきりしない色、ニュアンスカラーと言われたりもしますが、
日本人にとっては古くからなじみ深い色のようです。

水墨画、わびさび文化から無彩色への関心が高まったともいわれていたり、江戸時代に幕府が派手な色を禁止していたことからだったり。

とにかく彩度の低い色は人気があって、種類も豊富。

微妙な違いで呼び名を変え、
色を楽しんでいたのでしょうか。
粋だなあ。

名前を見ているだけでおもしろいです。

↑このサイト、とても分かりやすくてずっと見てられる。

わたしの染めてもらった「青」別の名前があてはまるかもしれませんね。

「知る」から広がる世界

今回、東京無地染の体験イベントに参加し、
染物文化に触れ、日本独自の「色」について少し調べてみよう!と思うきっかけになりました。

まだまだ知らないことだらけですが、
少し調べてみるだけで世界がわーっと広がって楽しい!

和風な色ってあまり使わないと思っていたけれど
知らず知らずのうちに身近にあって、
無意識に「いいな」「好き」って感じていました。
(本能的に良いと感じてしまうものなのか?)

そして、やっぱり着物の色って素敵だなあ、と。
色の名前や意味からお気に入りを見つけていくのも良いなあ、なんて。。。

今すぐに挑戦するのは難しいけれど、
ちょっとずつ、どこかで触れていきたい!ともくろみます。


今後も体験ができる伝統工芸のイベントをやるようです。興味のある方はぜひ触れて、世界を広げてみてはいかがでしょうか。


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