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人に強さをもたらすもの


前回徳を積むをテーマに、粗筋を書かせていただいた名著「還暦ルーキー」の主人公、古市忠夫さん

古市忠夫さんは、60歳でプロテストに合格しプロゴルファーになった方です

改めて読み返すと、この本にある古市忠夫さんの人生(ドキュメンタリーです)は、とてもスピリチュアル的です

なぜかと言うと、天が古市さんに味方しているとしか思えない出来事が、続々起きてくるからです

そして何より心を打つのが、古市さんのゴルフにかける純粋な想い、そこからくる強い精神力

この強さは、一体どこから来るものなのでしょう

今回は、古市さんの物語を切り口に、人に強さをもたらすものについて書いてみたいと思います


実を言うと、この本を初めて読んだ頃、私が抱えていた悩みは、もっぱらピアノのことばかりでした

どうしたら人前で自分が思うようなパフォーマンスができるのか、どうしたら雑念に気を取られず演奏に集中できるのか、そんなことばかり考えていました

思えば贅沢な悩みですが、本人は、いたって真剣

演奏が上手くいかない時などは、この世から消えてなくなりたいと思うくらい落ち込んでいました

好きなはずのピアノが、私の苦しみの源泉にもなっていたのです

今では、何故あれしきのことであれほど深刻になれていたのか不思議です

スピリチュアル的には、人は生まれてくる前に、自分の人生をある程度設計してくると言います

子育てだったり、仕事だったり、親の介護だったり、また病気などを通して魂を磨くために、この世に生まれてくるそうです

私の場合、それがピアノだったのかもしれません

そして「還暦ルーキー」を読んだ時、ここに答えがある、そんな風に思えました

プロテストという人生のかかった大舞台で、それでも緊張せず、ゴルフを楽しめている古市さんの姿に答えを見たのです


奇跡

古市さんの物語には、幾度かの奇跡が存在します

初めは震災後、立体駐車場で見つかった車です

この車は、震災のわずか1カ月前に、その立体駐車場に移したばかりでした

以前停めていた自宅前の駐車場でしたら、焼失していたはずの車でした

しかもその車は、立体駐車場の中で残ったただ1台の車でした

さらに驚くべきことには、その車のトランクにはゴルフバッグが残されていました

普段盗難を恐れて、決してトランクに入れっぱなしにしないはずのゴルフバッグでした

これはもう神様から「お前、ゴルフやれよ」と言われているようなもの

古市さんでなくとも、そう思うような気がします

さらに奇跡的と思えるのは、やはりプロテストの最終日、松林に入ったボールを出すところでしょうか

万に一つもないような可能性に賭け、良い意味で開き直った古市さんのスウィングは、本人にさえも、打ったか打たないか判別のつきにくいものでした

今まで数え切れないほどボールを打ってきた古市さんにも手応えのない感覚、それは一体なんだったのでしょう

殆ど神がかり的としか思えません

そして、その一件に続く奇妙な感覚

一般的にはゾーンに入った状態というのでしょうか

自分の少し先の未来、さらに言えば、成功へと導かれる未来を見ることのできる状態、これはスピリチュアル以外の何ものでもないような気がします

一体、この奇跡の数々は、何によってもたらされたのでしょう


エゴ

私がこれを読んだ当初、まず思ったのが、古市さんにはエゴがない、ということでした

物語の中だけでしか知りようがありませんが、古市さんには、人目を気にする様子が全くありません

自分が好きなゴルフを続けるためならば、ゴルフウェアにこだわることもせず、ゴルフクラブも折れたり錆びたりしない限り買い替えませんでした

ゴルフというと、ちょっとお金に余裕のある人の優雅な道楽というイメージがありますが、古市さんのそれは、優雅な道楽とは真逆のど根性スポーツといった印象です

ただひたすら上手くなることだけに、なりふり構わず工夫を重ね、努力を重ねています

片やその頃の私と言えば、とにかく失敗を恐れてばかりいました

肝心なのはどんな演奏をするかなのに、「失敗したらどうしよう」と、ビクビクしながら舞台に立っていました

フォーカスするところがズレまくっていたんですね

以前、失敗したくなかったのは、自分にガッカリしたくなかったからと書きましたが、やはり人の評価を気にしていたんだと思います

ではなぜ古市さんは、そんな人目を気にしないといった境地になれたのでしょうか


器(うつわ)

スピリチュアルでよく聞くフレーズに、「ワクワクすることをしなさい」というものがあります

ワクワク・・この感覚、確実にこれ、と判る方はいらっしゃいますか?

実は私は経験しています

長くなるので詳しくは書きませんが、10年ほど前、本屋さんでカルトナージュの本を見つけた時のあの感覚は、ワクワク以外の何ものでもありませんでした

心が踊って、いてもたってもいられない、そんな状態になりました

そしてそれが、古市さんにとってのゴルフだったんだと思います

だからこそなりふり構わず、人に何と言われようとも自分の道を突き進めたんだろうと思います

とにかく、ゴルフが好き、ゴルフをしていると楽しい、上手くなりたい、いくつになっても目を輝かせていたい、そんな純粋な想いの古市さんには他人の目など全く眼中になかったことでしょう

けれど、それだけでは自分とゴルフだけの小さな世界に生きる人、ということになってしまいます

そしてそんな人には、あれ程の奇跡を天は起こしてくれなかっただろうとも思います


古市さんには、ゴルフに熱中する以外にもう一つの顔がありました

それは、人のために何かせずにはいられない一面です

古市さん、震災当日には、自分の命も顧みず、多くの人の命を救いました

震災後は、街の復興のために

復興後は、孤独死で問題視されていた老人のために尽力しました

そのためには、大事なプロテスト前の時間も差し出すことを厭いませんでした

そんな大きな器の古市さん

私は、ここに古市さんの強さを見ました

と同時に、私に欠けている部分も知ることとなりました

ずっと自分とピアノの間の事にしか意識のなかった私

そんなピアノという、小さな価値基準しかない器の中からでしか世界を見られなかったこと

そのことが、自分自身の心を縛りつけていたのだという事に気がついたんです

もっと自分自身を解き放っていい、失敗を恐れず楽しんでいい、他人にどう思われれてもいい!

何より、どんな結果が待ち構えていようとも、頑張った自分を褒めてあげよう

そう思えるようになりました

そこから緊張がすっかりなくなったかと言えば、そうではありません

けれど、自分を無駄に追い込まなくはなりました


人に強さをもたらすもの

古市さんの強さの源泉、それは「人に尽くすことによって生まれる器の大きさ、そしてゴルフへの純粋な愛情」そんな風に思います

私も古市さんのように、もっと世間に目を向けて、人との交流ができたら、今以上に自分の器を大きくしていけると思います

ですが、人には向き不向きもありますので、今の私は、なかなか古市さんのようにはいきません

けれど、まずは自分のできるところから、無理なく人のためにできることをしていきたいと思う今日この頃です


読んでいただき、ありがとうございました

                  きみどり










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