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絵本をDIGれ! 第1話:絵本ディガーの誕生 『そよ風とわたし』編

「絵本をDIGれ!」とは、意外と知られていないポプラ社の隠れた名作絵本をピックアップして、DJっぽいノリで紹介していくコーナーです。

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第1話 絵本ディガーの誕生 「そよ風とわたし」編

漫画:小山ゆうじろう

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『そよ風とわたし』 文/今江祥智 絵/上野紀子
レア度 ★
魔法使い度 ★★★★★
お父さん度 ★★★★★

突如として絵本のDIGに開眼し、絵本ディガーとなった私は、日々、絵本DIG道に邁進している、、、とまあ、そんな感じで、第1話目で取り上げるのは1975年9月ポプラ社刊行の『そよ風とわたし』(自分が持っているのは2016年7月の29刷!)です。


文は、絵本と言えば真っ先に名前があがる『すてきな三にんぐみ』(トミー・アンゲラー)の日本語訳や『ちからたろう』、そのほか『ぼくはライオン』『たんぽぽざむらい』など数多くの名作を残した今江祥智先生。
絵は、こちらも有名な絵本『ねずみくんのチョッキ』を、なかえよしを先生と共に作りあげた、上野紀子先生です。


もはや、この二人の名前を見ただけで、絵本ディガーの身体に作り変えられてしまった私は、ぶるっと震え、手に取らない理由は無い!という感じなのですが、、、。


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どうですか、この表紙。激シブかっこいい! そして、『そよ風とわたし』というレモン色の明朝体のタイトルが醸し出す雰囲気。初めて見た時は、まるでロジャー・ディーンやヒプノシスが描いたプログレのジャケかと思いました。

ロジャー・ディーン
イギリスの画家、イラストレーター。プログレッシブ・ロックバンド、「イエス」のジャケットを数多く手がけたことで有名。

ヒプノシス
イギリスのデザイン・アートグループ。「ピンク・フロイド」や「ジェネシス」など70年代のバンドを中心に、有名なアートワークを多数制作した。

どことなくマグリッドなどのシュルレアリスムっぽさを感じさせる雰囲気ですが、それもそのはず。情報DIGしてみると、なかえ先生と上野先生はシュルレアリスムに強い影響を受け、瀧口修造さんとの深い交友もあったとのこと。なるほど。
よりその影響の色濃い『宇宙遊星間旅行』や『扉の国のチコ』などの名作を生み出しているので、そっち方面は引き続き、各自DIGお願いしまーす


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この背表紙までぐるっと回った空の青色、たまらない。本屋の棚に並んでいる本にとって、背表紙は第2の顔と言っても過言ではない。読者とのフェイストゥーフェイス。ここから絵本の中の物語に思いを馳せるのです!

ちなみに、この本は「おはなし名作絵本」シリーズの23番です。このシリーズは、今読んでもバイブス半端ない作品多数あり!


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カバーのソデには、今江先生と上野先生のお写真が。
なんか最近の絵本って、あんまりこういう著者紹介無いよねー。


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表紙の絵から続くような見返しのデザイン。まるでお話全体が、空と雲で包まれているような錯覚を起こします。何とも言えない浮遊感。めちゃくちゃ最高です!


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これがお話の主人公、魔法使いの女の子プン。赤い帽子と服が素敵。しかも帽子の先っぽがくるくるでオシャレ。
じつはプン、こう見えて60歳! そう。魔女の世界では、60歳もまだまだこどもってこと。人生長すぎて、ヤバし!

お話は、プンが魔法で咲かせた花を、お父さんが得意な風の魔法で毎度吹き飛ばしてしまうというもの。けなげなプンが、それでも花を咲かせようと頑張る姿にホロリ。「なんでお父さん、分かってくれないの!」って、かつての自分を思い出しましたわ。

今江先生の言葉によれば、もともとこの作品は童話集の中の1篇で、この本の前にも、宇野亜喜良先生や長新太先生が絵をつけたバージョンもあるとのこと。そちらもDIGらねば!


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とにかく、この本の上野先生によるプンは、独特の魅力があるんです。
じつは、目立たないけど、ずっと表紙のまん中左端にいたんですよプン。あんた気づきましたか!? あえて前に出ないけど、実は主人公って感じがイケてる、、、。私が編集者だったら、こんな風に攻めた表紙作りたいと思うね。


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四角形の窓で切り取られたような絵の配置が、独特でかっこいい。どのページをめくっても、全部ジャケ買い出来そうな良さで充満している。あれ? もしかして私、FULLでジャケ買いしたってこと? そう、新概念「FULLで買える・ジャケット」の誕生です。キューブリック?

ところで、この構図、なんかどっかで見たことないですか?

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白い四角の中に、ぽつりとたたずむ主人公。
そう、なかえ先生と上野先生の代表作「ねずみくん」シリーズにそっくりではありませんか。この本からも一貫した美学が感じられます。DIGって、こういう発見が面白いですよね。


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何と言っても、この見開きに私やられました。これまで四角の枠内にかかれていたお話の絵が、ここに来て急に山がダダ漏れ! この世界はどんだけ広いんじゃ! と突っ込みたくなるような壮大なスケール感。お話の外側の設定まで感じさせるような、マイフェイバリット見開きです。


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自分の好きな作品を部屋に飾るという行為は、精神衛生上とても良いものですね。絵本をレコードのジャケみたいにお部屋に飾って、ふとした瞬間に手に取ってぱらぱらめくるなんてのも、けっこうアリなのでは? 絵本空間 in my room
私はとりあえず、自分のレコード棚に並べてみました。
表紙は見えないけど、これはこれでなんか良い気がします。

では、また次回の「絵本をDIGれ!」でお会いしましょう!
DIGGIN’!

(文/ポプラ子 漫画/小山ゆうじろう)

小山ゆうじろう プロフィール
1990年東京生まれ。2012年漫画家デビュー。「週刊少年ジャンプ」のギャグ漫画新人公募賞で『ランニングディ』が受賞。「少年ジャンプ+」にて連載していた『とんかつDJアゲ太郎』(原案: イーピャオ)が話題になり、2020年10月に実写映画化。少年ジャンプの連載「巻末解放区!WEEKLY週ちゃん」のイラストを担当中。

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