”単純であるということは、純粋であるということ。いちばん大事なことね。“ 「くまの子ウーフ」50周年記念・神沢利子さんインタビュー
心の中にウーフが生き続けてくれているとうれしい
(神沢) あっという間ですね、本当に。人生なんてそんなもの。過ぎてしまえば、みんなあっという間。子どものときは、自分がおばあさんになるなんてどんな感じだろうって、不思議な気がしてたけど、おばあさんになってしまったら、なんてこともなかったわね。
(神沢) 子どもは好奇心のかたまりだと思うんですよね。『くまの子ウーフ』は、いつもどうしてどうしてと考えているから、子どもたちは一緒になって、おもしろがって読んでくれるんだろうなあと思っているのだけど。
(神沢) 大人になるにしたがって、いろんなことが当たり前になってくると、好奇心が薄れていくっていうことはあるでしょうね。子どもにとっては、いろんなことが新鮮だと思います。
(神沢) ウーフはぼーっとしているところがあって、友達のきつねのツネタはちょっとお利口さんでお兄さんぶったりしている。その二人の対比ね。それがこの物語を面白くさせてるんじゃないかと思います。
(神沢) 誰の本か忘れちゃったけれど、翻訳本で、くまが「ウーフー」って言う、というようなのがあったんですよ。いいなと思って、それを名前にしたの。ツネタはきつねらしい名前だから。
(神沢) 私も、ウーフと同じようにいつもわからないんですよ、いろんなことが。私も、いつも、どうして? どうして? って考えているんです。
(神沢) それはないのね。私、自分の子どもくらいしか、子どもとのつきあいがなかったんですよ。だから、子どもたちからヒントを得たとかモデルみたいなものはまったくないの。私の子どものころからの疑問を大事に持ち続けているの。
(神沢) ウーフを子どものときに読んで大人になった人、たった今ウーフを読んでいる子どもたち、たくさんの人の心の中に、ウーフがずっと生き続けてくれているとうれしいなと思っています。
たった今を、大事に、十全に、力いっぱい生きてほしい
(神沢) 楽しい絵本が作りたいなあと思うんだけれども、なかなか書けないわね。物語絵本ということではなくて、シンプルで、全宇宙がこめられたような短い詩のような絵本。そんなに難しい事柄じゃないんですよね。たとえば、木の実が熟して大きくなるだけでも大自然であるし、命を表してもいる。そういうものです。
(神沢) 書けていませんね。もっともっと単純で…。単純であるということは純粋であるということ、いちばん大事なことね。誰にでもわかって、何かを感じさせる絵本。だから単純じゃないといけないのね。
(神沢) いっくらでもありますよ。どうして人間は戦争ばかりしてるの? とか、どうして昔から子どもは喧嘩ばかりしているの? とか。子どもは喧嘩ばかりして大きくなるんだけども。
(神沢) 良かったのは、たくさんの人と出会えたことですね。子どもたちと直接接触することは非常に少ないんですよ。子どもの本は書いているけれども。でも、本を書くことで子どもたちとつながっていけるということが、とてもうれしいですね。子どもの声をそこで聞くこともできるから。私が作った童謡なんかを歌ってくれているのを聴くと、「あ、子どもの心の中に響いているんだなあ」と感じられて、とってもうれしいですね。
神沢 そうね…。ちょっと難しいの、今考えていることは。たとえばね、生きるっていうことは息をすることっていうことね。それで、たった今っていうことね。ちょっと前のことは「生きていた」ことになるし、先のことは「生きるだろう」ってことになるから。「生きている」っていうことはたった今ということで、そのたった今の持続が「生きている」っていうこと。そのたった今は、たった今しかないんだから、それを十全に生きるということね。大事に、十全に、自分の力いっぱい。力が及ばなくてもいいのよ、また明日があるんだから。
(文/吉田有希)
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