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【エッセイ】入学式に私のお尻を触ったおとこのこ

小学生一年生の入学式の日のことだ。
まだ割と新しいピカピカのピンクの校舎、
綺麗な教室、綺麗な木の椅子と机。

お母さんに連れられ、緊張しっぱなしの私は言われるがまま、指定の席に座らされじっとしていた。

私は極度の人見知りだったため、隣の席に知らない男の子が来てずいぶんニコニコしていて明るい子だったが、会話もせずにいた。

担任の先生の声にならい、みんなが一斉に立ち上がって挨拶を終えたとき、その子は突然満面の笑みで私のお尻を左手を伸ばしてサワサワと触ってきたのだ。

ひっ〜。私は顔をひきつらせた。横にいる少年のヘラついた笑顔が不気味で恐怖を覚えた。

さて、そんな少年は、中学校も同じで三年生の時に同じクラスになった。私の尻を触ったことなど覚えて無いだろう。相変わらずニヤけた顔で、クラスの男子とわぃわぃとああだこうだとお喋りをしている。
そんな彼もブラスバンドの部長になってたらしく、成績も割と良さそうで、「なんだ文武両道マン、私の尻を勝手に触った恨みを晴らしてやる」と一方的に敵意を抱いていた。
そして、私は見事に期末テストでクラスで1番の成績を収めたことを先生から直接教えてもらった。
彼が、成績表をみながら「俺、クラスで2位だった〜。1位だれだよー!お前かー?」などと男子と戯れている哀れな姿。私は彼に勝った。

私と彼は違う高校に進学した。彼は北海道で優秀な高校に行き、私は東京に引っ越した。

それから全く関わることは無かったが、女友達から彼が京都大学に進学して宇宙の研究をしていると聞いた。

なんだって?宇宙の分野は私の趣味の領域だった。高校の担任の先生には『宇宙への探求』とデカデカと表紙に書いたノートを一方的に見せていた。それなのに、彼は京大で宇宙の研究だと?私は完全に敗北してしまった。

彼は社会人になってから、どこで何をしているのだろう。私は平凡な医療事務をやってるけれど、彼はもっと偉くなってジャンジャン稼いでいるかもしれない。

ふふ。それでも君が私の尻を触った時のあの
にへら顔は一生忘れないので、いつか再会したときは必ず君に伝えてやろうじゃないか。

#創作大賞2023 #エッセイ部門



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