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日本映画を愛好する海外の音楽家たち(個人的まとめ10選)

外国人に大人気の日本文化。日本庭園に日本文学、ラーメンに空手…と数多列挙できるのだが、今回は「日本映画」に焦点を当ててみようと思う。
日本映画の影響力は海外では絶大である。ウディ・アレンは「ハリウッドでは全ての監督は例外なく黒澤明を敬愛している」と語っているし、小津安二郎、今村昌平、宮崎駿、大友克洋、押井守、是枝裕和…とたくさんの映画クリエイターが海外で尊敬の念を集めている。

それで今回は日本映画を愛好する海外ミュージシャンたちを調べた。日本映画ファンは数多くいるが、自分が特に気になったものをまとめる。個人的まとめである。


1.アンディ・パートリッジ(XTC)

ミュージシャンズミュージシャンといえるXTC。ザ・ポリスのスティングやサウンドガーデンのクリス・コーネル、リヴァー・フェニックス、ピーター・ガブリエルなど数多くの熱意のあるフォロワーを持つ。そんなXTCのアンディ・パートリッジは親日家としての側面も持っているようだ。
パートリッジは日本映画を好んでいる様子で、特に黒澤明の映画であれば全て好きらしい。

★アンディ・パートリッジの好きな日本の映画(人名は監督名)
『どですかでん』黒澤明
『羅生門』黒澤明
『大日本人』松本人志
『ナイスの森 The First Contact』石井克人、三木俊一郎、ANIKI
『蜘蛛巣城』黒澤明
『SF サムライ・フィクション』中野裕之
『タンポポ』伊丹十三
『乱』黒澤明
『キングコング対ゴジラ』本多猪四郎、円谷英二
『ゼブラーマン』三池崇史
『火垂るの墓』高畑勲
『サマーウォーズ』細田守
『時をかける少女』細田守
『HANA-BI』北野武

https://twitter.com/PopNaTweet/status/1462587386957860864?s=20&t=yHknthyK0IMnaaVncsX-TQ

パートリッジの好きな日本映画は以上のようだ。大好きな古典のクロサワからジブリや細田アニメ、ゴジラ、ダウンタウンのメンバーまで実に幅広い。
彼の日本映画への熱がとてもよくわかるリストである。筆者も黒澤明を再視聴したくなった。

 ※引用元のリストには『将軍』という80年代にアメリカで制作・放送されたテレビドラマも入っていたが、これは日本が舞台であるものの(三船敏郎やフランキー堺が出演している)、厳密には日本制作のものでも映画でもないので除外させてもらった。だが興味のある方はぜひご覧いただきたい。


2.オマー・ロドリゲス・ロペス(マーズ・ヴォルタ/アット・ザ・ドライヴイン)

かつては激しいライヴ・パフォーマンスで知られたオマー・ロドリゲス・ロペス。マルチプレイヤーである彼は映画フリークでもあり、映画クリエイターとしても活動している。映画に演者として出演したり、自分の映画を監督したり、自身のマーズ・ヴォルタのMVの監督も務めている。
そんなロペスはとあるインタビューで好きな映画監督について言及している。

(インタビュアーに一緒に仕事をしてみたい映画監督は誰か?と聞かれて)
ロペス 「間違いなくデヴィッド・リンチだね。デヴィッド・クローネンバーグも僕が大好きな監督だ。三池崇史も非常に興味深いよ。」
※和訳は筆者による 

https://xlr8r.com/features/mars-volta-vs-jaga-jazzist-boiling-points/

ロペスはリンチやクローネンバーグと並んで三池崇史のファンであるようだ。ミイケ作品はその尖ったバイオレンスと新鮮さで多くの海外のクリエイターを魅了しているようだ。


3.モービー

アメリカのミュージシャンであるモービーは日本に魅了されているようだ。彼は2002年に来日した際の感動を公式サイトの日記に記している。

「日本はとても素敵な場所だ。日本の人びとも素敵だね。(中略)そして僕のお気に入りの映画監督、北野武もここに住んでいる」
※和訳は筆者による

https://moby.com/journal/japan/

モービーは北野武の大ファンである。日本に来た喜びを、北野が住んでいる地として表現している。


4.フランク・オーシャン

筆者はオーシャンは親日家であると見ている。彼は日本のカルチャーを愛好している。『ドラゴンボールZ』や『ストリートファイター』のファンであり、彼のシングルのアートワークには日本語が用いられている。

2ndシングルの『Swim Good』。インド仏教の僧侶(?)が首元まで水に浸かっている背景に、「良い泳ぐ」という可愛らしい和訳も載っている。

日本カルチャーに魅了されている様子のオーシャン。彼は映画フリークでもあり、XXLマガジンではオーシャンの好きな映画100本が公開されている。
その中には、日本映画も含まれる。

★フランク・オーシャンの好きな日本の映画(人名は監督名)
『羅生門』黒澤明
『七人の侍』黒澤明
『バトル・ロワイアル』深作欣二
『ソナチネ』北野武

https://rockinon.com/blog/nakamura/147612

オーシャンは日本の古典映画や独自のバイオレンスを好んでいるようだ。それにここでもクロサワの偉大さが再確認できる。


5.フライング・ロータス

ラッパーやDJ、音楽プロデューサーとして彗星のごとく現れたフライロ。ジョン・コルトレーンを大叔父に持つという音楽の血を引いている彼だが、日本カルチャーの大ファンであると公言している。
フライロは日本の映画のファンであり、「三池崇史、塚本晋也、北野武は僕のヒーローだ」と語っている。

★フライング・ロータスの好きな日本の映画(人名は監督名)
『夢』黒澤明
『めめめのくらげ』村上隆
『ナイスの森 The First Contact』石井克人、三木俊一郎、ANIKI
『鉄男』塚本晋也
『HOUSE ハウス』大林宣彦
『クリーピー 偽りの隣人』黒沢清

※複数のメディアより

フライロは深夜映画への愛が大きい。昼間は抑圧されているものたちが夜がおそくなってから解放される。彼はそこに美学を感じ取っている。それで「抑圧」から解放される日本の映画のバイオレンスや変態性を特に好んでいるようだ。
ちなみに彼は『KUSO』という長編映画を監督している。極めて変態的でバイオレンスでグロテスクなものになっている。(※星野源は宇多丸との対談でフライロの音楽は好きだがこれは観れなかったと述べている。笑)彼の映画にはキタノやミイケのスピリットが受け継がれているように見える。


6.ジム・オルーク(元ソニック・ユース)

かつて、アメリカのオルタナティヴ・ロックの祖の一つであるソニック・ユースで「道楽」を担当していたのは、マルチプレイヤーのジム・オルーク。
彼は大の親日家であり、武満徹や高柳昌行、細野晴臣、加藤和彦らのファンである。
また、映画監督の若松孝二の映画をすべて観ており、若松映画の音楽をやりたくて日本語を学習したというほど。

★ジム・オルークの好きな日本の映画10選(人名は監督名)
『天使の恍惚』若松孝二
『ゆきゆきて、神軍』原一男
『巨人と玩具』増村保造
『神々の深き欲望』今村昌平
『穴』市川崑
『愛欲の罠』大和屋竺
『蜘蛛の瞳』黒沢清
『化石の森』篠田正浩
『ああ爆弾』岡本喜八
『海女の化物屋敷』曲谷守平

https://ameblo.jp/e-dp/entry-11929000841.html

さすがはオルークという感じのラインアップである。
日本の一般人でもほとんど知らないような映画ばかりではないだろうか。


7.ジェイミー・スチュワート(シュ・シュ)

米・カリフォルニア州サンノゼ出身のエクスペリメンタル・バンド、シュ・シュの中心メンバーであるスチュワートは、親日家である。
好きな作家には、三島由紀夫や大江健三郎を挙げ、好きな映画に日本人の名前も挙げている。

(シュ・シュの音楽的影響源について)
音楽ジャンル以外では、トッド・ソロンズ、今村昌平、デヴィッド・リンチ、鈴木清順らの映画も彼らの源として特筆される。
※和訳は筆者による

https://www.basemental.it/artists/xiu-xiu/

スチュワートの好きな清順、昌平の作品も知りたいものである。


8.トレント・レズナー(ナイン・インチ・ネイルズ)

NINのレズナーは、2020年に憧れのデペッシュ・モードらと共に「ロックの殿堂」入りを果たした。
彼はソロでもグループでも活躍しており、これまでも映画音楽の制作に励んできた。映画監督の塚本晋也との交流も有名だ。

中心人物トレント・レズナーが、大ファンを公言する塚本晋也監督の最新作『鉄男 THE BULLET MAN』に共鳴。デヴィッド・リンチ監督『ロスト・ハイウェイ』以来となる書き下ろし楽曲「THEMEFOR TETSUO THE BULLET MAN」をエンディングテーマとして提供する事になったのだ。
(中略)
トレント・レズナーが20年前にオリジナルの『鉄男』を観て、塚本晋也監督に「自分のミュージック・ビデオを作って欲しい」という非常に丁寧な手紙を書いた理由は、彼の音楽性を知った上で映画を観れば、始まった瞬間に容易に理解できるだろう。怒りを抱えた人間が機械になる、というそのテーマ自体が、トレント自身が最も恐れていたことそのものであるし、そこで鳴り響くインダストリアルな爆音こそ、まるでトレント・レズナーが作ったのかと錯覚するような親和性に満ち満ちていた。監督の映画を観た瞬間に、トレント・レズナーは自分の頭の中が目の前で映像になっていると感嘆したに違いない。

https://www.barks.jp/news/?id=1000060640


9.マリリン・マンソン

NINのレズナーと不仲?になってしまったマリリン・マンソン。
マンソンもまた、日本の映画に大きな関心を寄せている。村上龍原作、三池崇史監督『オーディション』にショックを受けたらしく、三池監督に電話をして、通訳ごしに「オーディションをリメイクする機会があったら俺を使ってくれ」と伝えたという。

(好きな日本映画は?)
三池崇史監督の『オーディション』。それと塚本晋也監督の『鉄男』だな。北野武監督の作品も気に入ってる。日本映画は色彩感覚が素晴らしい」

https://twitter.com/_marilyn_manson/status/738598522765746176?s=46&t=LaeBLWfHrAVyiLH6lthTwg


10.トム・ウェイツ

日本では星野源、松田優作、吉野寿らに多大な影響を与えたトム・ウェイツ。
2011年には「ロックの殿堂」入りを果たした彼は、映画音楽の制作もし、俳優としても活躍している。

★トム・ウェイツの好きな日本の映画(人名は監督名)
『座頭市』シリーズ 三隅研次、森一生、岡本喜八他
『生きる』黒澤明

https://jgjhgjf.hatenablog.com/entry/2017/09/16/120500

酔いどれ詩人の異名を持つ、渋さの塊のようなウェイツだが、映画のセンスもなかなか渋い。



これまで日本映画フリークの海外勢を10名見てきた。
どの人もこだわりの強さを見せている。総じて、黒澤明、三池崇史、北野武、塚本晋也、今村昌平、黒沢清などが人気であろうか。
もちろんここに書いた人以外にも日本映画好きは山のようにいるだろう(ビョークやロブ・ゾンビなど)。ただ、今度は内容の長さから割愛した。

この記事を見た人が、昔見た映画をもう一度見ようかな、とか、映画好きミュージシャンをきっかけに新たな映画を発見した!とかなってくれれば幸いである。

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