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役の行動に根拠をつける

前回の記事で、台本を読み、演技プランを作る(役作りをする)際に、組成構造を作ることで役作りの作業がスムーズにできるようになる、という事と、組成構造から演技プランを作る際のポイントについて解説しました。

演技プランを作る際のポイントと組成構造の作り方については、コチラをご覧ください。

組成構造をしっかり作る事で
・シーンで役がどのように描かれているか
・どんな芝居が求められているのか(役割)
・シーンの最初の役の状態はどうなのか
・役の思考と感情がどんなもので、どう変化していくのか
が捉えられるようになります。

そして、組成構造を作るにあたって、いろんなパターンが見えてくると思います。関係性の捉え方、役の思考と感情のパターン。いろんなパターンを想定して、その想定の数だけ芝居を用意する。

演技プランを作り、実際に演じる時には、そのパターンの中から、自分が一番理想だと思うものを選択して演じること。
いろんなこと考えてきたんです感を芝居に出さないこと。
自分がこのシーンを演じる意図と目的を明確にすること。

とはいえ、いくら本を読み込んで、演技プランを作ったとしても、表現が良くないと伝わるものも伝わりません。
自分はこう思ってるんです。って思いはあっても、相手に伝わらなければ意味がありません。それって見た目では考えてないのと同じ。

じゃあどう表現すれば、自分に課せられた役割を全うできるのか?
いわゆるいい芝居ができるのか?

芝居には明確な正解の概念はないので、こうするのがいい。と断定する事はできませんが、どうすれば効果的に役の思考と感情を観客に伝える事ができるのか。と言う思考術はあります。

役の思考と感情を効果的に伝えるためには、俳優としてどんな心構えと思考を持っておくべきか、ということをお伝えしたいと思います。

俳優は、何を使って芝居をするのか?

俳優が芝居をする時、自分の何を使って役の思考と感情を表現するのか。という事を改めて考えてみましょう。我々は何を使って芝居をするのか?

台詞、声(声量、テンポ、キーなど諸々)、目線、表情、呼吸、間、体

何を使うのかを言語化してみると、意外と少ない。
じゃあ、これらをどう使うのか?
結論から言うと、全部です。常に全部使って表現をするんです。
大事なのはバランス。表現、行動は常に変動してます。では、このバランスを取るために、どんな思考で演技プランを作っていけばいいのか。

客観的感情表現

まずは、組成構造をもとに
役の思考と感情、役割、キャラクターの構築をする際に、それぞれの項目と行動(芝居)に根拠をつけていきます。

【〇〇だから××】【〇〇だったら××】【〇〇なら××】

という具合に紐づけていく。
この作業の事を【客観的感情表現】と名付けています。

客観的感情表現を用いて、芝居に根拠をつけるのですが、その根拠をつける作業には順番があります。

1、脚本(事実)
2、関係性、状況、状態、欲求、時間(組成構造)
3、思考、感情
4、人物(キャラクター)、役割
5、表現(行動)

この順番で役の行動、つまり自分の演技に根拠をつけていく。

脚本に書かれている事実に対して 【だから】 役の欲求はこれだ。
シーンに描かれている関係性を見て 【だったら】 こういう感情を抱く。
果たさなければならない役割がこれ 【なら】 こう行動するはずだ。

といった具合に、根拠をつけて演技プランを構築していく。

順番がとても大事です。
脚本に書かれている事実に対して 【だから】 キャラクターはこうだ。
とはならないのです。キャラクターを構築するためには、その役の思考と感情の情報が必ず必要になるし、思考と感情を読み解くには、組成構造が必ず必要なのです。

脚本という大きな一つのかたまりから、段階ごとに必要な情報を抽出していくようなイメージです。

このように、客観的感情表現を用いて、役の行動に根拠をつけていけば、役の思考と感情を観客に伝えるために、何をするべきか。という方向性が明確になります。そして、脚本に描かれている条件下で、どう反応(行動)することで、思考を表現できるか。その思考を効果的に伝えるためには、体の何を使うことで表現できるか。自分がやるべき行動が捉えられるようになります。

これを読んだあなたが、楽しく芝居ができるようになりますように。



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