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脚本の意図にコミットした効果的な演技プランを作る時のポイント

誰だっていい芝居がしたい。失敗したくない。自分が作った演技プランが間違っていたら嫌だ。脚本の意図、演出のイメージにコミットした芝居をしたい。と言う気持ちを持つのは当然。

だって失敗したくないもん。

でも、最初のうちは失敗いっぱいした方がいいよ。とも思っています。失敗から学べることの方が多いと考えているからです。

さて今回は、台本から収集した役の情報を使って、演技プランを作る時のポイントについて解説していきます。
以前書いた演技プランを作るための9項目を前提に書いていきますので、演技プランを作るための9項目って何ぞや? って方は、こちらも是非合わせて読んで頂けると嬉しいです。

まずは組成構造を作る。

ちょっと待て。組成構造って何だよ。

組成構造とは、演技プランを作るための9項目の中の①から⑥までの項目
① ストーリーラインを把握する
② シーンの変化を見つける
③ 役の欲求を理解する
④ 役の状況と状態を理解する
⑤ 役の関係性を理解する
⑥ 役の時間を理解する
これらの情報をひとまとめにしたものを組成構造と呼びます。と、言うか僕が勝手にそう呼んでます。各項目に関する情報、例えば……


男「ごめん。お待たせ」
女「ううん。私も今来たところだから」
男「そっか」
女「……久しぶりだね」
男「そうだね。高校の卒業式以来?」
女「うん」
男「で、話って何?」
女「うん……」
男「………」
女「あのね…本当はね、卒業式の時に言おうって思ってたんだけど……」
男「ごめん」
女「えっ?」
男「なんて言うか、間違ってたらごめんなんだけど、俺、実は今付き合ってる人がいてさ」
女「……そう、なんだ」


と言うセリフがあったとしましょう。そして、このシーンのメインが女だった場合、ここから分かる情報は何かというと
・女がどこかで男に告白しようとして遮られる(ストーリーライン)
・女が自分の欲求が叶わないことを知る(シーンの変化)
・女が男には彼女がいるということを知る(シーンの変化)
・女は男に告白をしようとしている(欲求、目的)
・女は男と付き合いたいと思っている(欲求)
・男と女は高校の同級生である(客観的な関係性)
・女は男に好意を抱いている(主観的な関係性)
・女がどこかしらに男を呼び出している(状況、時間)
・男はそこに遅れてやってくる(状況)
・女は男に告白をしようとしている(欲求、目的)

この状況から鑑みて
・女は緊張している(状態)
・男、急いで女のもとに来たのなら、若干息が上がっている(状態)
・男、女の好意を知らない(主観的な関係性)
・男は女に呼び出された目的を知らない(時間、状況)

ざっくりですが、このようなことが読み取れます。この箇条書きが組成構造になります。そして、この組成構造を元に、これらの情報が全て成立するには。という前提で、役の思考と感情は何か? シーンで果たさなければならない役割は何か? これらが成立するには、女と男がそれぞれどんな人物であるのが望ましいか? というのを固めていくのが役作りという作業です。

組成構造を作るメリット

組成構造を作ると、シーンにおいて、役がどのように描かれているのか。というのが分かるようになります。これが分かると、自ずと果たさなければならない役割も分かるようになります。つまり、このシーンにおいて、どんな芝居が求められているかが理解できるようになる。ということです。いいことづくめです。やるっきゃありません。

さて、ここからが本題。
脚本の意図にコミットした効果的な演技プランを作る時のポイントについて解説していきます。

脚本に書かれている事が、事実である。

そのシーンで起きること、交わされる会話が面白かろうが、面白くなかろうが、そこで書かれている事は絶対に起こること。事実なのです。
事実は変えようがないという事を肝に銘じておく。演技プランは書かれている事実が成立することが大前提で作ること。そして役はこれから起こることを知らないという事を忘れないこと
勝手に事実を変えない。例えそれがどんなにつまらなくても。

思考と感情は必ずセットになっている。

思考と感情がそれぞれ独立して存在する事はありません。思考には必ず感情が伴うし、感情には必ず思考が伴うのです。湧き出てくる順番が変わる事はあっても、どちらかだけがある、という状態は現実的ではありません。
そして、可能な限り役の思考と感情を言語化する。どんな思考が湧き出て、それに付随する感情は何か? そしてその思考と感情に対して体はどんな反応を示すのか?
思考と感情に対する体の反応は、作ろうと思えば無限に作れますが、組成構造を作っておくことで、どんな反応であるべきかの選択肢を絞ることができます。

想像と創作は違う。

役の思考と感情、キャラクターの構築の際に「もし」とか「実は」とか「裏では」と言った枕詞が出てきたら要注意。ホンには書かれていない設定を勝手に作って、その設定を元に役作りをしてしまっている可能性が高いです。
役の状況や状態、時間に対して想像する事は大切な作業ですが、書かれていない設定を作り出してしまうと、後々必ず矛盾が発生します。
想像と創作の定義が曖昧なのですが「もし」「実は」「裏では」と言った枕詞で作られたイメージが前提にないと芝居が成立しないようなら、それは創作と言えるでしょう。

できる限りシンプルにまとめる

演技プランを作る作業って、いろんなパターンを想定して、その想定の数だけ芝居を作る作業だから、いろんなパターンを作ったら、いろんなパターン作ってきたんだぜ! って見せたくなる気持ちがムクムクと立ち上がってくるものです。けれども、僕たち俳優の仕事って、作ったたくさんのパターンを見せることではありません。
”その時、その役にどんな考えが湧き起こっているか”を表現するのが仕事です。脚本に書かれた事実が成立するには、その役が、そのシーンで、どんな考えの元で行動しているのか、が全てです。演技プランを作る時に収集した情報を芝居をするにあたって(脚本の意図を伝える前提で)必要のないもの、表現する必要のないものは可能な限り削ぎ落とす。いろんなパターンの中から一番理想だと思うものを選択して芝居をする。情報は荷物と一緒です。大きな荷物を抱えていたら、動きや反応が鈍くなります。必要最低限なものだけ持ち、相手を見ることに集中力を使いましょう。

以上が、脚本の意図にコミットした効果的な演技プランを作る際のポイントとなります。

これを読んだあなたが、楽しく芝居ができるようになりますように。

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