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芝居が上手く出来ないと思っている人の9割がここでつまづいている。

「台本読んだんですけど、上手くできなくて…」

「思ったように出来なかったんですけど、どうすればいいですか?」

「台詞覚えてたんですけど、頭が真っ白になっちゃって…」

「やろうと思ってた事はあるんです。けど…」

よく耳にする言葉です。主に授業終わりに。

こう言う類の質問というか、相談に対して僕が言ってあげられる事って意外に少ないんです。もちろん、この言葉をかけてくれる子が抱えている課題は何かとか、個別に次のステップに進むために必要なアドバイスはするんですが、9割以上の確率でアドバイスよりも先に言うことがあります。それは…

とにかく台本を読みまくれ

まずはとにかく台詞を徹底的に体に入れる。そう、台詞は覚えるのではなく、入れるんです。条件反射で出てくるまで徹底的に。
台詞がちゃんと体に馴染んでないと、いい芝居はできない。当たり前ですね。当たり前すぎてわざわざ書くことじゃないくらい当たり前。でも、この工程をすっ飛ばして芝居をしようとする人って結構多い印象。いや、自分ではこの作業はすでに終えたのに、上手くできないと思い込んでる。と言うほうが正しいかもしれません。つまり”自分では覚えていると思っている”状態で芝居をしている、しようとしている。

俳優が芝居をするために使えるものって意外と少ない。

俳優が芝居をする時、自分の何を使って役の思考と感情を表現をするのか。という事を改めて考えてみましょう。何を使って芝居をするのか?

台詞、声(声量、テンポ、キーなど諸々)、目線、表情、呼吸、間、体…

他、何かありますか?(あれば教えてください)
芝居をするのに使える武器って案外少ないんです。これらを使って、役の思考と感情を表現するんです。持ち道具や衣装はその表現を補強する手段であって、表現そのものではありません。じゃあ、これらの何を使えばいいのか?

全部です。常に全部使って芝居をするんです。

大事なのは、そのバランス。その時、その役にどんな考えが湧き起こっているかに合わせて、常にそのバランスは変わります。
そして”自分では覚えていると思っている”状態で芝居をしている、しようとしている人は、このバランスが極端に悪い。恐らく頭の中はこんな感じ。

冒頭の質問や相談をしてくる子たちの9割が、このような状態で芝居をしようとしています。台詞を言う。正確には台詞を思い出しながら言う、台詞にとらわれまくり、みたいな状態。頭の中が台詞のことでいっぱいの状態で、一体どうやってその他のこと(声、目線、表情、呼吸、間、体)に集中するというのでしょうか?
このような状態では、当然他のことに意識を飛ばす余裕なんてありません。結果、芝居も当然「ただ台詞を喋っているだけ」に見えますし、やってる本人も上手くいかなかったと感じるわけです。
演技プランを作る際、何をどう表現しようかというところに意識が行きがちですが、それよりも前にやる作業は、とにかく台詞を徹底的に体に入れること。頭の中の台詞の割合をとにかく減らすこと。そして、徹底的に台詞を体に叩き込むと、こうなります。

台詞のバランスが全体の1割未満になる事が望ましいと考えています。これはこれでバランスが悪く見えるかもしれませんが、台詞そのものの重要性は実はそんなに高くありません。大事なのは、その台詞を喋ってる時に役がどんな思考と感情を抱いているか、です。ここまで台詞を頭に叩き込んでから、シーンで出来ることは何か、何を表現するべきかを考える。大抵の場合、台詞を叩き込んでいるうちに気付きや、アイデアが湧き出て来ます。台詞を読んでる時に他の事を考える余裕が生まれれば、頭が勝手に芝居に結びつきそうな情報を引き出してくれますし、シーンの状況や相手を見る余裕も生まれます。
“その時、その役にどんな考えが湧き起こっているか”を体現するためには“相手の台詞を聞き、反応する”事が不可欠です。
自分の演技プランをリアクションで捉えて構成するためには、周りを見る余裕が必要です。そのために僕から言える事はただ一つ。

とにかく台本を読みまくれ

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