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フリーランス白書から読みとく、フリーランスの仕事獲得経路と働き方満足度

フリーランスを対象にした実態調査「フリーランス白書」をご存じでしょうか?これは、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が実施している調査です。

プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会とは、「誰もがライフイベントやキャリアステージに応じて、多様な働き方を行ったり来たりしながら、自律的にキャリアを築ける世の中にしていきたいという想い」から設立された協会であり、フリーランサーやパラレルワーカーのための土壌づくりを目指しているだけではなく、アドボカシー活動の一環として「フリーランス白書」を発表しています。

「フリーランス白書」には実際にフリーランサー・パラレルワーカーとして働いている方の生の声をデータ化したものがまとめられており、多くの有益な情報やフリーランスの現状を知ることができます。

毎年発表されている「フリーランス白書」ですが、2022年3月に発表されたばかりの最新版は最近急激に増加しているフードデリバリーに関する調査に多くのページを割いている内容でした。

今回、この記事では2022年版の「フリーランス白書」の中でも、フリーランス全般に共通するであろう「仕事獲得経路」と「働き方の満足度」に焦点を当てて解説します。

2022年版フリーランス白書

回答者の内訳

今回の「フリーランス白書2022」は、調査期間が2021年11月30日~2021年12月27日で有効回答者数が1,254名でした。男女の内訳はほぼ半数で、参加者の7割近くが40代以上の方です。フリーランスとして2年以上働いている方が回答者数の3/4を占め、140時間以上のフルタイムで稼働している方が半数以上にのぼります。

首都圏にお住まいの方が回答者の6割以上を占めているため、国内全体の回答を反映しているとは限りませんが、実際の声を収集している調査なので、地方の方にも参考になる点が多くあると思います。

収入源となっている職種

今回の調査で回答されている方々がどのような業種・職種で活動しているか見てみましょう。まず上位から、クリエイティブ・Web・フォト系(20.2%)、エンジニア・技術開発系(17.2%)、通訳翻訳系(11.1%)と続きます。これらの職種で回答者の半数近くを占めていますね。

他にも職種は多岐にわたり、コンサルティング・企画・映像制作・事務やバックオフィス・芸術人事や人材、と色々な分野で独立して働いている方々がいらっしゃるようです。

フリーランスとしての働き方

特徴的なのは、回答者のうち9割近くの方は雇用される企業を持たない「独立系フリーランス」と言われる働き方であることです。

もちろん、「副業系フリーランス」として企業に在籍しながら副業をこなしている方もいらっしゃいますが、今回の調査結果から見ると、まだまだ副業系フリーランスはマイナーなワークスタイルだと言えるのかもしれません。

「仕事獲得経路と働き方満足度」より

仕事選択時の重視項目

フリーランスの方はいったいどのような基準で仕事を選択しているのでしょうか?「フリーランス白書」では、「自由度」「収益」「スキル」「自律性」「協働者」「社会貢献度」の6項目にカテゴリー分類をしたうえで、順位を決めてもらう方法で調査を行っています。

その結果、「自由度」「収益」「スキル」の3項目が「重視する順位1位」の回答の中で2割を超えていました。「自由度」が約3割、「収益」と「スキル」が2割台となっており、組織にとらわれない自由なワークスタイルに魅力を感じ、重要視している方が多いようです。

また、職種別に見ると、重視項目に多少の違いが生じるようです。回答数上位5職種(クリエイター、エンジニア、通訳翻訳者、ライター、コンサルタント)のうち、クリエイターとライターの2職種は「自由度」、エンジニアは「収益」、通訳翻訳者とコンサルタントは「スキル」を重視項目の1位にあげる人が最も多いことがわかりました。

クリエイティブな仕事をする方はやはり自由度の優先順位が高くなるのでしょうね。エンジニアは今や引く手あまたの売り手市場ですから、収益が重視項目となるのでしょうか。

仕事獲得の経路

「フリーランス白書」では回答者のうち9割近くが企業に所属しない「独立系フリーランス」であることはすでに解説した通りですが、では、そのようなフリーランスの方々はどうやって仕事を獲得しているのでしょうか?

一番多い回答は「人脈を駆使する」で、7割近くにのぼります。その後は、「過去・現在の取引先」「自分自身で広告宣伝活動を行う」と続きますが、この回答はフリーランス白書の調査開始時(2018年版)から5年間変わっていないそうです。つまり、この上位3点のような仕事の獲得の仕方はフリーランスの間では非常にメジャーで、なおかつ仕事に繋がりやすい方法だともいえるでしょう。

最も収入が得られる仕事の獲得経路

「最も収入が得られる仕事の獲得経路は?」という質問に対しては、「人脈を駆使する」「過去・現在の取引先」以外に「エージェントサービスを利用する」という解答が登場しています。

過去のフリーランス白書(2018~2020年度版)における同様の設問に対する回答と比較すると、2021年度版と今回の調査である2022年度版では「人脈を駆使する」割合が低下し、「エージェントサービスの利用」が上昇、そして「クラウドソーシングの利用」も微増しています。

これは新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の世界的大流行が大きな理由だと考えられています。人と会う機会が激減したことで、それまで仕事獲得のための重要なツールであった人脈形成が難しくなり、オンラインで仕事を獲得できるエージェントやクラウドソーシングの利用が増えたのでしょう。

今の働き方に対する満足度

フリーランスは今の働き方にどれくらい満足しているのでしょうか?フリーランスとしての現在の働き方に対して9項目の質問を設け、5段階評価で回答してもらった結果、満足度が最も高かったのは「就業環境(働く時間/場所など)」で、回答者の8割近くがこれを高く評価しています。

一方、2020年版の白書と比較すると今回の2022年度版白書ではすべての項目で満足度が低下しています。どのようなことに不満を抱いているのか見てみると、「収入」が約4割、「多様性に富んだ人脈形成」が約2割という結果になっています。

コロナ禍においてテレワークが推進され、働く場所の自由度が高まり、好きな場所で仕事をすることができるようになりました。一方、収入や人脈形成の面でこれまでと同様には行かなくなった方々も多く、この調査結果はそれが顕著に現れた一例と言えます。

契約方法や頻度

続いて、フリーランスにとって非常に大切な契約締結についての調査結果も見ていきましょう。

回答数上位5種であるクリエイティブ・Web系などでは1年に1回以上の契約が全体の半数以上を占めますが、通訳・翻訳系のフリーランスは「わからない/答えたくない」が全体の4割以上にのぼり、「1年に1回以下」「契約自体していない」という解答と併せると半数以上になります。

回答数が多いということは、それだけ業界にフリーランスの方が多いということだと読み取れますが、なぜ通訳・翻訳系の契約ではそれ以外の上位4種と大きく異なるのでしょうか。これに関する詳細な理由や記述はありませんでしたが、フリーランス白書以外の調査結果も参考に調べてみました。

労働組合の中央組織である日本労働組合総連合会、通称「連合」が2021年の10月に「フリーランス」として働く20代から50代の1000人から回答を得たアンケート調査によると、回答者のうち企業から契約の内容が書面やメールで必ず明示されると回答したのは、およそ3割にとどまっていたそうです。つまり、フリーランス側にもわかる形で正式な契約を提携している企業が多いとは言えない現実を表していると考えられます。

厚生労働省などがフリーランスを保護するためのガイドラインを策定していますが、まだ業界全体に浸透しているとは言いがたいようです。「法的保護の拡充やセーフティネットの機能強化が喫緊の課題」と調査結果にも記載があるように、今後さらなる改善が求められます。

フリーランスとしての今後

インボイス制度

「インボイス制度」とは、消費税の仕入税額控除の方式として、一定の事項が記載された請求書や納品書などの書類を保管・提出することを指します。

免税事業者・課税事業者、または事業収益によってこの制度を利用するかどうかは異なってきますが、2023年10月の導入が現段階では決定しており、フリーランスの間でも関心の高いテーマとなっています。

今後の対応の予定については「わからない/答えたくない」が約4割を占めています。回答数上位5職種の中では、エンジニア・コンサルタントは課税事業者への登録を検討している方が5割を超えています。理由としては、契約頻度が高いことが別パートの回答で明らかになっており、取引先が固定されていない可能性を「連合」では指摘しています。

また、年収800万円以上の回答者では、課税事業者への登録を検討している回答が6割を超えているそうです。自由回答から見えてくるのは、仕事獲得の経路と新規案件の発生頻度などで差が出ているようでした。

インボイスについては下記の記事も参考になります。


マイプロジェクト

「マイプロジェクト」とは、金銭的対価を目的とせず、自らの創作活動やスキルアップ目的とした活動のことを指しています。フリーランスに限定されるものではなく、主体性をもって、自分の未来のために学びや活動を広げていくこと全般を指しているようです。

フリーランス白書では、「マイプロジェクト」を実行していると回答した方が6割になることがわかりました。この活動を通して「収入があがった」「スキルアップになった」「人脈が広がった」「人から感謝された」という回答もあります。

自分自身の幅を広げるためにチャレンジしたというきっかけが、結果として人とのつながりや感謝に繋がるということがわかりました。「マイプロジェクト」を実施することが、新たな働き方や人脈形成の活路を見出す糸口になるのかもしれませんね。

まとめ

「フリーランス白書2022」の内容はいかがでしたか?現役の方々の意見をまとめたこういった調査は貴重なものであり、とても興味深いですね。自分らしく働けることが大きなメリットであるフリーランスですが、「契約締結」や「インボイス制度」などさまざまな問題が山積しており、あらたな制度を求める業界の声もあるようです。

ひとくちにフリーランスといっても働き方や目標はそれぞれ異なるでしょう。「独立型」なのか「副業型」なのかによって、働き方だけではなく社会保障の面なども多種多様です。こういった調査を一つの参考資料として今後の「フリーランスライフ」の糧にされてはいかがでしょうか?

参考資料

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 「フリーランス白書 2022」

連合(日本労働組合総連合会)「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2021」


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