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企業研究者編_#3.アカデミアで通用する企業の研究者になるには?【就活・転職活動編】

はじめに 

 #1では、企業の研究者とは?に関する一般的な回答を、#2では、企業にはアカデミアと遜色ない研究活動を実施できる研究者(基盤企業研究者と定義)と開発が中心の研究者(開発企業研究者と定義)がいることを示しました。#3では、基盤企業研究者になるための就職活動や転職の具体的な方法(就職活動の方法)を示します。

 私はこれまで、自分自身が実践してきたノウハウを独自の理論として体系化し、学生にアカデミアで通用する企業の研究者になる方法を伝え、夢の実現に貢献してきました。ここでは、そのノウハウの一部をご紹介します。

断言します。「就活ノウハウは間違っている!」

 あくまでも、企業に務めても、大学にいる研究者からも、研究者をしているねって思ってもらえるような研究が継続できるかという点においてです。世の中の就職ノウハウ本に書かれている方法は、全て一般的なものであり、企業研究者としての将来設計について示されている本はありません。私の個人的な感想ですが、全ての就職活動の方法は明らかに間違っています!

 確かに、研究を単純な手段と割り切るのであれば、最終的に生み出される価値にのみ目を向けるべきという意見があります。そうした考え方に基づけば、誰がが見出した成果や剤を使えばよいという考え方になり、主体性を持って新しい価値を作ろう、見つけようとする気持ちが失われていくと私は思います。繰り返しになりますが、研究はものづくりに対する技術者や研究者の心の現れであると考えます。

 さて、ここから私がおすすめする就職活動の方法を明示していきますね。

1.Google検索

 まず、自分が興味のある研究トピックス、技術、分野を3つ挙げます。そしてそれらの「研究トピックス+株式会社」、「研究トピックス+学会」で検索をかけます。そこで、得られた企業と学会をメモします。

2.学会名称からの検索

 自分が興味のある心当たりのある学会(1.Google検索で見つけた学会を含む)や、学会のスケジュール一覧から学会名で気になるところをピックアップします。次にそれらの学会のHPを確認します。そして、学会の評議委員名簿と、大会の発表演題の講演者を確認し、所属する企業をリストアップします。

3.論文検索

 続いて、1と2の検索でピックアップした企業の論文をPubmedなどの論文の検索サイトで検索します。企業名の英語名称を企業ホームページで確認してから、検索をかけます。このステップでもし論文がヒットしなければ、その企業では論文を書くことが重視されておらず、論文を書ける研究者も少ないと言えます。つまり博士号を持っている研究者も少なく、修士卒で入社しても論文博士を取得できる確率は低いと言えます。

 さらに、Pubmedで検索したなら、年代ごとの論文数のヒストグラムが表示されます。この情報は企業の研究アクティビティの変遷を意味しています。もし、トータルでの論文数がそれなりにあるが、ここ数年の論文数が少ない場合は、経営トップの以降を受けて、研究の縮小がなされていることや、業績の悪化により研究費を拠出できなくなった可能性などが考えられます。逆に、年々増加傾向にあるならば、研究への投資が拡大している良い傾向であると推察できます。JournalのインパクトファクターやCite Scoreと同じです。2~4年間の出版数を確認してみてください。それが企業のアカデミアから見た現在の研究遂行能力に近いです。

 次に、第一著者で出している論文が多いかを確認することで、主体的に研究を進められているかが判断できます。共著者だけの論文が多い企業は、共同研究先の先生との付き合いでやっているだけの可能性があります。論文博士を狙うのであれば約3報の論文を書く必要がありますから、”第1著者で書いた論文数÷3”が入社してから博士号を取得した人数と大差ないはずです。この人数が全研究員数に対してどのような割合になっているかが重要です。

(総論分数[過去30年分] ☓ 第一著者割合 ÷ 3)÷(社員数 ☓ 研究員比率)

 上の割合が3割以上に達している企業は、概ね順調に会社で研究をしていれば博士号を取れる可能性がある優良企業と判断できます。

4.部署とキーパーソンを絞り込む

 最後に企業研究を目的として、最近3年の論文タイトルを流し読みして、気になる論文のラストオーサーや責任著者、研究内容と機器名をメモします。ラストと責任著者の把握は、大学院進学先におけるラボの先生を把握するのと同じ意味があります。自分が興味のある論文を多くまとめている先輩がいる部署にいけば、よりあなたも生き生きと働けるはずです。

 研究内容と機器の把握は、企業研究で重要な役割を担います。なぜなら、企業のホームページにのる研究トピックスは無難で一般的なもので、かつ一番新しい情報は伏せられていることが多いからです。従って、論文や特許情報の検索によって、企業が今は何に力を入れようとしているかという、ホームページにない情報をつかめるかがとても大切です。論文であれば、特にIntroductionが特に重要で、今後その企業が何を狙いとしてどのような研究を進めているのかを窺い知ることができます。

 ホームページにない最新の情報を勉強していることが企業に伝われば、そんなに関心があるのかと、心象がとても良くなるでしょう。また、機器の把握は、その会社にある装備や予算を想像するのに役立ちます。

5.ヴィジョンや風土に惹かれるか

 ここまでやってみて、通過した企業の使命や仕事内容、風土や歴史、業界でのポジションや評判、給料や福利厚生、勤務地など、を調べてみましょう。このステップは通常、一般的な就活本では最初に行うことと書かれていると思いますが、私は最後で良いと考えます。

 その理由は、統計情報から1から4までのスクリーニングを通過した企業は、基盤研究を大切にした商品開発を目指したいという、あなたのニーズを満たしている可能性が高いと言えるからです。研究を大切にし、継続するために資金ぐりを継続的に行ってきた企業は、研究と開発のバランスに優れ、社会的な使命を全うし、世の中に大きな価値をもたらしていると考えられるからです。技術(研究)経営的な視点で見て、偏差値の高い企業といえます。「自分たちは研究を大切にしている」と語ることはいくらでもできますが、その真偽は検証しなくてはいけません。

エントリーシートの作成

 上記の1~5のスクリーニングを通過した企業に対して、エントリーシートを作成しアプライします。このスクリーニングを通過した企業であれば、基盤研究に理解のある研究員が多くいらっしゃるはずですので、①自分が同じ価値観を持っていること、②企業分析によって予想した”その会社が目指している世界”の実現に興味があること、③どのような貢献をしたいかを語ってみてください。また、志望動機には、④他社と比較して研究をビジネスに繋げるのが上手であること、⑤学会おいて存在感があることなど、調査して知り得た情報を混ぜながら話ができると、勉強しているのが良く伝わり、印象が良くなると思われます。①~⑤に対して、自分自身の頑張ったことや、価値観や経験との紐付けを行い、魅力的な文章を推敲する力が求められます。

まとめ

 以下は、上述のエッセンスを分かりやすく、まとめたフローになっています。新しい情報があるわけではありません。役に立ったと思われた方は投げ銭頂ければ幸いです。また、内容をおさらいしたい方、手帳に貼り付けて整理したい方、結論だけ知りたい方などにも、ご活用頂ければと思います。

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