あっぱれ あっぱれ な二人の子供 【エッセイ】よもやま子育て話14
娘が小学校3年生の時
学校から帰ってくるなり
「これに ド レ ミ 書いてー」
と楽譜をピラピラさせて言いました
来月行われる音楽会のピアノ伴奏の
オーデションを受けるというのです
娘の通う小学校では
音楽会のピアノ伴奏者を
毎年 希望者の中から
オーデションで決めます
勿論
『ド レ ミ を書いて―』と言うくらいだから
娘は楽譜がよめません(;^ω^)
「えっ オーデション受けるの?」
「うん 受ける」
「りりな ピアノ弾けへんやん」
「弾けるでぇ」
彼女の中では
右手の親指 人差指 中指を使って鍵盤を弾くことを
『弾ける』と言うらしい、、、のです
この家に引っ越してきて6年
この住宅地には
お医者さん 弁護士さん 学校の先生、、、
『師』『士』のつく職業の方が
たくさん住んでおられ
事あるごとに我が家が住むような地域ではなかったと
痛感させられる毎日なのです
勿論 子どもの習い事にピアノは常識
土曜日、日曜日ともなると
あちこちから 滑らかなピアノの音が聞こえてきます
師範級の強者たちがわんさかといる
そんな場所なのです
そのことを娘も知っているはずなのに
そんなことは 何のその
「たぶん合格すると思う」
そう言って
黄金の三本指で伴奏者の座を勝ち取れると
本気で信じている娘
いつもながら
彼女のその根拠のない自信には
あっぱれです
私も楽譜はよめないけれど
私たちには『ゆうと(息子)』という心強い見方がいます
息子は幼稚園年長さんから3年ほど
ピアノを習っていました
発表会にも出て
見事にサザンオールスターズの『TUNAMI』を
弾いたことのある最強の男子です
帰ってきた息子に早速頼みました
「この音符に ドレミかいてあげて」
「オレ 楽譜よめへんで」
「えっ ゆうと ピアノ習っていたやん」
「習っていたけど よめへん」
「でも弾けるやん」
「弾けるけどよめへん」
「どうやって弾くの?」
「初めの場所だけ探したら あとは音符の離れ具合で弾いてる」
「、、、」
言葉を失った私の脳裏に
息子が通っていたピアノの先生の言葉が蘇りました
「ゆうと君は 感覚だけで弾いています
これからも 楽しく弾かせてあげてください」
息子がピアノ教室をやめるときに先生に言われた言葉です
言われたときはあまり意味が分からなかったのですが
今 分かりました
同じ教室に通う友達のお母さんから
『教室をやめると言ったら 必ず引き留めはるよ』
と聞いていたのに
引き留められなかった理由も分かりました
三年習って 楽譜はよめず
それでいながら 発表会で『TUNAMI』を堂々と弾ききる
そんな 息子にも あっぱれです
仕方がない 私にも
『ド』の場所ぐらいは分かるから
一つずつ数えていくしかない
≪やるときは全力で挑む≫
これが私の信条です
『何事も全力で挑むことが大切だ』と
子供たちに伝えるよい機会だと
全力でサポートすることにしました
「ド レ ミ、、、これはファ」
「次は ド レ、、 これはミ」
というようにして
何とか全ての音符に『ド レ ミ』を書くことができました
ところが
ところがです
ドレミは分かっても
音符の意味が分かりません
真っ黒の音符 ♩
ひげがついた音符 ♪
連なった音符 ♬
全く分かりません
仕方ない
お隣のお力を借りることにしました
お隣のお子さんは
息子と同じ学年の女の子
ピアノの腕は師範級
お母さんとも仲良くさせてもらっています
娘さんにお願いして
楽譜通りに弾いてもらい
録音させてもらうことにしました
こうしてお友達の力を貸してもらい
何とか 練習を開始することができました
娘のオーデションに受かりたいという気持ちは本物のようで
毎日練習し
黄金の三本指だけではなく
両手の五本指を使ってなんとか音を出せるようにはなりましたが
なにしろ
『ドレミ書いて―』のレベルから
師範級の強者に肩を並べるようになるまでには
時間が短すぎます
三週間後に迎えたオーデションでは
当然、、、 イヤイヤ、、残念ながら
落選しました
「最後まで弾ききれへんかった」と
ニコニコ笑顔で報告してくる娘(笑)
大変だったけど
これはこれで面白かったなと
良い思い出で残るはずだったのに
次の年もまた
「ドレミ書いて―」とピラピラ楽譜をふる娘
ええー
またぁー
懲りてないのかよぉー (笑)
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