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他力本願それとも自主自立?        【エッセイ】よもやま子育て話10

驚くべき動物の帰巣本能はよく知られていますが
人間の子どもにも負けず劣らず驚きの帰巣本能が
備わっていると思うのです


愛着のある安心できる場所を『巣』と呼ぶのであれば
子どもにとって最も大切な『巣』は母親です

未熟であればあるほど母親をつなぎとめるための能力は高く
「天使の笑顔」「つぶらな瞳」「頼りない泣き声」
などなど
母性本能が発揮されるための 
ありとあらゆる技を駆使して

母親にとって
「無償の愛をささげるに値する存在」であり
「すべての疲れを吹き飛ばしてくれる天使的な存在」であり
「この子は自分がいないと生きていけないと思わせる頼りない存在」
であり続けています

そうやって母親の愛をつなぎ止め
最も大切な『巣』から離されないように
彼らも必死に泣いて笑って能力をフル稼働しています

そんな大好きな『巣』から離された時に
動物に負けない帰巣本能が発揮されるのです



息子が幼稚園年長さんの時のことです

その日 いつものように
朝7時ごろ目を覚ました2歳の娘が
どういう訳か 朝8時半という中途半端な時間に
また眠ってしまいました

息子を幼稚園に送らなければならない時間で
娘を起こして連れていくか 
眠った娘をそのままにして幼稚園に送るか悩みましたが
幼稚園まで歩いて往復20分ほどの時間
大丈夫だろうと 娘をそのまま寝かせて家を出ました

音を立てず 靴を履いて 玄関を開けて
そーっと そーっと 家を出て
急いで 急いで  幼稚園に向かい
息子を送り届けた時にスマホのライン電話が鳴りました

ママ友:「今 家の前を りりちゃんが大泣きして走っていったで」

私 : 「えっ 今?」

ママ友:「うん、私も今追いかけているところ 声は聞こえるんやけど」

私 : 「有難う 大急ぎで帰るわ」

そう言って幼稚園を飛び出したところで
ずっと向こうからこちらに走ってくる娘を見つけました
後ろからママ友も走って追いかけてくれています


裸足で走ってきた娘は 
ヨレヨレのパジャマ姿に髪はボサボサです
「ごめんね ごめんね」と謝る私に
鼻水と涙でドロドロの顔を押し付けて
なかなか泣き止んでくれません

よっぽど怖かったのだと思います
心配して追いかけてくれたママ友にも感謝です

飛び出した娘が
事故に合わずに済んだからよかったものの
娘に怖い思いをさせて
友達にまで迷惑をかけて
猛省しなければならない事なのに
その時は 
ここまで追いかけてきた娘への驚きが大きくて
友達に満足にお礼が言えたかどうかさえ覚えていません(;^ω^)


確かに息子の送り迎えの時 
いつも娘を抱っこして連れてはいたけれど
歩いて10分の道のり 
曲がり角だって何か所もあるのに
よく覚えていたなぁ、、、

そもそも 今この時間に 家に誰もいないことが
幼稚園に向かっていると結びつくなんて凄すぎる

家の鍵を開けることだって教えたことないのに
見ていて覚えたなんて、、、

子どもの凄さに心底驚きました

きっと目覚めてすぐは いつものように
母性本能を発揮させるような
少しか弱い泣き声で母親を呼んでいたのだと思います
それなのに なかなか姿を見せない母親に

『あれ? なんかいつもと違うで』
『これは まさかの一人ぼっち?』

底知れぬ恐怖が湧いてきて

『待ってー 私も行くー』
『置いていかんといてー』
と 飛び出したのでしょう

何を頼りに『巣(母親)』の場所が分かったのか
動物に負けない驚異の帰巣本能です

本当に逞しい(笑)



そんな娘とはタイプの違う帰巣本能を持ち合わせているのが
三歳年上の息子

彼は 妹に比べてちょっと弱虫
でも弱虫は弱虫なりの帰巣本能を身につけています


息子は
いつでもどこでも かなりの確率で迷子になります
買い物に行っても 遊びに行っても
とにかくじっとしていないのです
好き勝手ウロウロするからすぐ見失います

でも私も慣れたものです
慌てたりなんかしません
するのはただ一つ

『耳を澄まして待つ!』

立ち止まってジーッと耳を澄ませます

5,4,3,2,1

「おかぁーさーん ぎゃー」

息子の泣き叫ぶ声が聞こえてくるのです
必ず聞こえてきます(笑)

それで迎えに行って
『はい 捜索終了!』


弱虫のくせに好奇心旺盛な息子は
あっちへウロウロ こっちへウロウロ
迷子になったって 
泣けば迎えに来てもらえることを知っているのです


自分の一声で『巣(母)』を呼び寄せる力があるとは
これはこれで驚異の帰巣本能の持ち主です

人ごみの中で自分を見つけてもらうには
じっとして声を上げるのが一番ですもんね
迷子になった側も探す側も動き回っていたら
いつまでたってもすれ違いで見つけてもらえない

本当に賢い(笑)



現代の社会で生き抜くには
息子のような
他力本願的な生き方も時には必要で
無人島で生き抜くには
娘のような自主自立的な生き方が必要になってくるのだろうな
と二人の寝顔を見ながら思うのでした


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