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ぽんこついんず奮闘記 VOL.4妹の流涕
「なんとーなんと〜!入社4か月の期待のヒヨッコが、経目(経営目標)を達成しました!!」
リクルートの代理店に勤務して4ヶ月目のことだ。
一通り取り扱っている求人広告のサービスが頭に入っただけの、駆け出し者が祭り上げられていた。
ビギナーズラックであり、まだ何者でもない。
そんな私をのことを先輩たちは、まるでホストクラブでドンペリを入れたように持ち上げ、私はどうすることもできずただ、苦笑いを浮かべていた。
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あの日から、1年半。
私はまた、経目を逃していた。期末こそ次期クオーターに向け野心に燃えるが、バイタリティーが続かずにいた。
そう、ビギナーズラックとは言葉のままで、往々にして初心者に訪れる幸運のことなのだ。
残業組が多い帰りの電車。隣で居眠りサラリーマンが、私の肩を借りていた。商人の神よ、私の肩はいくらでも貸してやる、その代わり数字を私に下さい。
「やり直したい…。」
電車の中で、人目を憚らず、口からこぼれた。
期待の新人は、あれから目立った活躍をすることもなく、いつも誰かの偉業に拍手を送っていた。もはやエキストラとして拍手をする役と化し、営業成績は下から数えたほうが早かった。
「何言ってんの!明日からみんな0からのスタートなんだよ!
うちらの仕事ってさ、3か月サイクルじゃん、だから明日からリスタートだよ。やり直したいって言いながら、全然明日からのこと考えてないやん。」
隣でぼやきを聞いていた先輩が、すかさず放った。
「あんたってさ、いっつもネガティブだよね。過去のことに執着しすぎて、今に全力投球できてないじゃん。むしろ、あたしは先週から来期の達成シミュレーションができちゃってるからね。明日、週次予算とりいくよ!
あ、この駅だから、じゃ明日ね!」
その瞬間、涙がどわっと出てきた。
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半ば泣き落としで先輩を巻き込み、私達はチェーン居酒屋にいた。
行きつけらしい先輩は、おすすめを何個か注文する。
注文と気配りの速さが、彼女が売れっ子営業であることを証明していた。
「とりあえず今日までのことは、忘れてお疲れー!」
乾杯して流し込んだ生ビールだけが、私のことを癒してくれる様な気がした。
「あんたってさ、お客様のことを語る時はすごくいい顔してるのに、営業ができないって悩みだして人と比べだすと、とことん落ちるよねー。もったいなっ。」
つまみを片手に、先輩は話し始めた。
営業の世界には、大きく分けて2つのタイプがいる。
ゲーム感覚で数字だけを追えるタイプと、数字よりも顧客に寄り添う営業をするタイプ。
私はまぎれもなく後者で、私に頼んで良かったと言われる仕事をしたい。
自分じゃなきゃ次もお願いされない営業とは、お客様にとっての最大限のメリットを提案出来る営業。
私がやっていたのは、いい仕事をしたいと言いながら、お客様の懐事情に合わせて提案する言ってみたら、
「あんたじゃなくてもいい営業。」
先輩の話を聞きながら、浮き彫りになるのは自分の情けなさだった。
すると、先輩は自分が新人だった時の話をしてくれた。
入社した年の9月にリーマンショックが起こり、当時の人材系の広告代理店はニーズが減り新卒の半分以上は、わずか入社半年でリストラ…。
「私も、実はリストラ対象だったんだよね。」
「……。」
ショッキングな言葉に耳が痛かった。社長に懇願し、結果を出す事を条件に努力した彼女は、文字通りの優秀社員に成長したのだ。
「社長に、救ってもらったからね。泣き言なんて言ってられないよね。求人の広告が売れないなら、代わりにオリジナルの集客チラシを作ったり、アイディアを売りに行ったんだよ。」
「まだ、あんたは生温い。」
帰りの電車、先輩の言葉が突き刺さった。
「あんたは生温い…。」
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その翌日から、私は人間が変わったように営業行動を変えた。
週に12件以上訪問、約300社ある担当リストの採用状況を月1で舐め回し、オリジナルのメルマガを週2で配信。
社内にいる時間、「すべてはお客様のいいね」のために使っていた。
3か月後…。期末の最終営業日。
今回ばかりは狙いに狙っていた。
今日の締め切りの受注分で試合は終了。朝から暇さえあれば顧客へ
営業電話をし続け、電話が鳴る度に私へのコールだと、自意識過剰に反応していた。
「なぁなぁなぁ!きみ、あといくらかわかってるぅ??」
激励半分、冷やかし半分で上司が様子を伺いに来る。
「あと、12万です…。」
気がつけば、山の頂は見えるところまで来ていたのだ。初めて、自力で予算達成を目前で、時間だけが足りなかった。
あと30分…。時よ止まれ!
刻一刻と試合終了が迫る中、電話営業できる顧客は、もうあと1社しかなかった。
最後のチャンスにかけ、連日の脳内ロープレを思い出す。
そして、私は受話器を握った。
「3人採用の目標なんだけど。まだ1人しか採用決まってないんだよね。
そうだな、もう1週継続してみるかな。発注するよ!」
まさかのミラクルである。あの時貸した肩の褒美を、神は覚えてくれていたのだろうか。
ガッツポーズとともに受話器を置いた。
しかし喜びは一瞬で、”ぬか”に浸かってしまった。
媒体エリアの違いにより、数字を読み誤っていたのだ。
「足りない。」
応援してくれていた先輩が、ハイタッチしようと手を近づけたが、その手は行き場をなくしていた。
「あと3万円…。」
涙目になりながら、私は先輩に伝えた。
「ちょっと、もう一回提案できるものがないか、全部顧客リスト洗い直しっ!!」
先輩は、一緒になって顧客リストや名刺に目を向けてくれた。
『ここまでよく頑張ったよっ』という山の下を見下ろす自分と、『ここまで来たからには、絶対達成!』というまだ山の頂を見据える自分が戦っていた。
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「ピーーーーーーーーーーーーッ。」
試合終了のホイッスルが頭の中で響き、求人広告の受注時間が終了した。
その瞬間、3か月前のあの言葉が頭の中を駆け巡っていた。
「やり直したい…。」
「あんたは、生温い!」
グルグルと、3ヶ月間の記憶の記憶が蘇る。私の戦いには何の意味があったのか。
その途端。あるアイディアが落ちてきた。
先ほどのお客さんは、広告を掲載していても応募が少ないから…って言ってた。そうだ!クライアントの管理画面のコンサルを提案しよう。
既存の広告メニューしか売ったことがなかった私は、その場で新たなサービスを作ってしまったのだ。幾らに価格を設定しようか?セールストークは?
考えている時間はない。時間との戦いだ。
シミュレーションをする間もなく、私は勢いだけで電話かけた。
さっき声を聞いたばかりお客様のへの電話、震える手で番号を押した。
「うちは広告代理店だけでなく、採用特化代理店なので、コンサルサービスも出来るんですよ、それで御社のニーズがっぽり掴みます!」
自分でもびっくりする、饒舌に会話を進めていた。
「じゃ、それもやるから請求書後で送って!ちょっとこの後でるから…
ごめんね!」
勢いよく切れたその電話で私は、やっと自分の力で予算を達成するという喜びを感じた。
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「なんとーなんと〜!」
そう、入社4ヶ月の時に聞いたシャンパンコールのような祭り上げの中心に、私は居た。泣き崩れ、半ば笑っていた。
「変わりたい、その感情だけでは、変われない。でも、気持ちが行動を変え、行動量が結果をもたらす。」
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「ぽんこつ奮闘記」VOL4は、会社の中で葛藤しながらも、自分と戦うあなもたにむけて、思い出したリアルな話です。特に、営業でなかなかうだつがあがらない皆様には必見です。不器用ながら、コミュ症ながらに新規営業職に販売から転身し、待っていればお客様が来るという接客から、自分から売りに行くっという営業の仕事に出会い、もがきながら生きる日常はきっと私だけじゃない!と感じて頂けるのでは?と思います。さて次はどんなドラマが
待ち受けているのでしょう♪乞うご期待(フォローしてお待ちください!何卒)
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