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言葉の効果が与える影響とは何か?~ぽんねぇの金平糖物語①

「可愛いよ」女性にとって、嬉しい甘い言葉。彼はこの言葉を金平糖が詰まったかのごとく、震えながら私に伝えた。正確には私が彼に言わせてしまった。言葉というのは圧力をかけると、味気がなくなる。甘い言葉を手を伸ばした先に、出てくる言葉は何だかほろ苦い。いや、苦い。その苦さは残酷さすら帯びていた。終焉がチラ見していた。それは“永遠”というぬるま湯に浸かったお別れの切符を予期させていた。

彼(けいたくん)とはマッチングアプリで出逢った。28歳という若さで好きな女優は檀れい、篠原涼子という知性漂わせるセンスに惹かれた。私達は磁石の如く引き寄せられて、秒で意気投合した。

初回のデートは初詣だった。人混みに埋もれながらも、私たちの気持ちも煮詰まった。帰り際、お茶をしている時に、彼はお茶をしながらジッと目を逸らすことなく私の目を見つめていた。一重でキリッとした目元の先の奥の中に潜んでいる眼球は、水晶如く真っ青で、透明感があった。愛おしそうに私を見つめてくれた・・あの優しい瞳は彼の人柄の良さを象徴していると言っても過言でない。

店を出てしばらくすると、彼は何も言わず‥凄まじい勢いで冷たい私の手を握った。不器用さを感じさせつつも、その男気が愛おしかった。帰りは彼の温かい手から感じる温もりのお陰で、人混みに埋もれながらも安心して駅に向かった。けど、私は自分がして欲しいことばかりに気を取られ・・彼の真の優しさが埋もれていることに気づけない愚かな自分がいたのだ。

事件は2回目のデートの帰り際だった。初回のデートで「巻き髪のぽんちゃんも見たい」と言ってくれた。その言葉が何だか嬉しくて、3ヶ月ぶりに“頑張って”巻いた。今思うと、その“頑張り”が空回りして…彼の心にモヤを巻かせてしまった。だがシンプルに頑張っている人はウザい。“頑張り”といういうのは、自分の中で留めておけばいいのだ。だけど、女性というのは何歳になっても「可愛い」という言葉と共存している。「可愛い」と言われる為に生きているようなものだ!と自分にしらけの言葉を言い放ってみる。いつまでも経っても髪を巻いたことに、何も言ってくれないもんだからスッキプ調で可愛くこう言った。

私「今日、髪巻いてきたんだよ♪」
彼「あ、そうなの?」
私「えー、けいたくんが髪を巻いてきてほしいと言ったから巻いたんだけどなぁー♡」
さらに無駄な承認欲求を添えて・・「3か月ぶりに頑張って巻いたんだけどなぁぁ・・」

  彼「へぇぇーーそうなんだーーー」

デートで温められた私の心は一気に氷結した。塩気が交わる彼の言葉に返す言葉が見つからなかった。帰り際のお茶は断ったが、彼は「このまま帰すの嫌だから話そう。」と提案してくれて渋々お茶をした。だが私はショックのあまり、彼の言葉が入る余地が全くなかった。脳内に金平糖が敷き詰められた感覚に陥っていた。そして無理に「可愛い」と言わせてしまった気がする。その日の楽しさが蒸発して、巻き髪は緩むと共に私たちの気持ちは絡まり始めていた。蟠り(わだかまり)が浸透し始めていた。それが私の極めてエゴな思考からきているとはその時は予期もしなかった・・

翌日、彼と電話をした。私は巻き髪に気付いてもらえなかったことではなく、塩気な反応が悲しかったと彼に伝えた。微かな和解をし、次のデートの約束をした。だが私の心には先日の件で、微かに蟠り(わだかまり)が心に沈んでいた。その絡みついた蟠りの糸をほどく為にも見知らぬミシルさんに電話相談の申し込みをした。

https://misiru.shop/

ミシルさん:「「へーそうなんだー」は私に興味がないから発した言葉ではない。単に女慣れをしていないだけですよ。ぽんこちゅさんの主観的な解釈で傷ついています。」とのお言葉を頂いた。

やり取りしているライン、彼の思考のセンス。そして一緒に嫌なことがこの件以上にない、不快感がないことを伝えた。ミシルさんはこう言った。

「めっちゃいい彼ですね!!この彼を逃すとぽんこちゅさんは後悔しますよ。絶対に手放してはいけないです!!マイナスを言わないことは本当に素晴らしいことなんですよ。それに気づけないのは、ぽんこちゅさんが相手にどう見られているかばかり気にし過ぎてて、彼の発言の素晴らしさに気付けてないからです。彼自身を見ていないですよ。彼のいいところを見つけて伝えるといいですよ。それと、相手の気持ちを試す行動は控えた方がいいです。マイナスでしかないですよ」とのお言葉をミシルさんから頂いた。私はミシルさんに相談しなければ、彼の良さに気付けなかった。尊い優しさ程、見えなくて埋もれていることを・・

私はラインを読み返してみた。連絡は1日1往復強だが、彼から編み出されるラインの言葉1つ1つに温もりが感じられる。やはり私は連絡頻度や分かりやすい愛情に振り回されていた。しかも彼は女性が喜ぶ言動ではなく、私が喜ぶ言動をしてくれていた。その尊さに気づけなくて私は猛省した。彼は私を見てくれているのに、私は自分しかみていないのだ。

さらに私は彼にお試し行動をしてしまった。別れを予兆させる一言を送り、自分への本気度を確かめてしまった。彼は私から身を引こうとした。それにより彼がアホとは遠い、賢い男であることが分かった。だがその私のアホなお試し言動が、彼との距離を縮むことができなくなっている引き金になっていた。この時はまだ私は気付いていなかった。言葉の効果を・・・

3回目のデートはみなとみらいを周遊した。心に写る尊い瞬間瞬間を記憶に残したくて、ひたすら写心を撮り記録していた。

午後16:00。山下公園で夕日をみた。真冬の冷たさが私達を取り囲むと共に、みなとみらいの波に優しく見守られてた。アスファルトの大地の冷気を体全体で感じながら、一歩一歩丁寧に歩いた。共に時を刻んだあの瞬間瞬間が忘れられない。涙と不安が真冬の海にゆっくり沈んだ。海を見渡すと、静寂な沈黙が舞い降りていた。沈黙の先には"永遠"を願う私がいた。仮に私達のアイがキエたとしても、今日この瞬間の記憶はキエることはない。心に刻みつけたくて、記録に残していた。

夕食を堪能した後、観覧車に向かった。手元には真っ青な金平糖が儚く、ぶら下がっている。その金平糖は赤レンガ倉庫で購入した。赤レンガ倉庫に来た記念に、彼が購入するか迷っていたものだ。いつもご飯をご馳走していもらっているので、お礼がてら手土産に渡そうと思っていた。ご飯後にさらっと渡す予定だったが…何となくお菓子言葉を調べた。その言葉が尊すぎて、タイミングに悩んでしまった。金平糖のお菓子言葉は「永遠の愛」だった。

観覧車の切符を購入した、私の脳内で金平糖が弾けだして、小さな妄想が小走りし始めた。"3回目のデートだから告白されるかもしれない"という枕詞が脳裏に浮かぶと共に、淡い妄想を抱いていた。観覧車に乗り、みなとみらいの夜景を堪能した。冷気漂う観覧車の中で、真冬の口吸いをそっと交わし、Melty Kissを丁寧に重ねた。観覧車の室内が私たちの気持ちで一気に温まった瞬間、彼は優しい笑みを添えながら、こう言った。「可愛いよ」

“交際”という切符はもらえず、観覧車を降りた。ため息を飲み込み、私の脳内に敷き詰められた金平糖がゆっくりと溶け出し始めていた。片手にはまだ淡い金平糖がぶら下がっている。

彼の終電まで時間があったので、芝生でお茶をした。少しでも長く一緒に居ようとしてくれてることが尊いのに、“3回も濃密なデートをした”という枕詞が脳裏に浮かんでは消えていた。脳内に何度もミシルラジオの唱えが横切った「〜恋愛ははっきりさせようとした方が負けだ」

ミシルさんの唱えを見事に横切り、私は脳内に残っている金平糖を彼に向かって飛ばしたかのようこう言った。

私「また会えるの?」
彼「?? 会えるよ」
私「鼻(アレルギー性鼻炎)の手術があるんだ。下手したら1ヶ月会えないんだよ。」
彼「1ヶ月でしょ?」
私「・・・」
彼「電話もするし、お見舞いもいくよ」

何だか信じられなかった。私は”交際”という切符に拘っていた。はっきりさせた方が負けでも、はっきりさせたかった。”付き合う”という言葉が一時的な表現にしか過ぎなくて、もっと大切なことはあることを頭で分かっていながらも・・
今日逃すと会えない予感しかしなかった。それらを濁してやんわり伝えた。すると…

「気持ちがないわけじゃないんだ。最初会った日から気持ち変わらないよ。でもぽんちゃんは感受性が強いというか繊細で…もっと同じように繊細な人がいいかな、と思ったりする。今のままだと、僕の発言で・・またボタンの掛け違いが起こりそうな気がするんだ。交際するなら、互いの性格をもっと知った方がいいと思っていたんだ。」ミシルラジオを熟知しているかのような回答ぶりで、やっぱり彼は賢かった。付き合う前に信頼関係を構築することがいかに大切か、を彼は分かっていた。

2回目のデートの蟠りは消えていなかった。私の脳内の金平糖は溶け始めていた。だが、私は彼の脳内に”不安“という名の金平糖を植え付けてしまって、私のアホなお試し行動でさらにぎっしりと詰まらせていた。ミシルさんは私にこう伝えていた。「言葉を伝える効果をもっと考えた方がいい。」

私が彼にお試しで伝えた言葉は、マイナスにしか働いていなかったことが証明された瞬間だった。私があえて植え付けた不快な記録(言葉)が、彼にとっては深い記憶として・・”残骸”という形で強く残っている。

私は”何もしない勇気“という名の鎧を捨てた代わりに、彼に”何も言わせない空気“という名の鎧を背負わせてしまった。彼は私に本音で話せなくなっている。言葉の効果を知っている。傷つけてしまうと思って、遠慮している。長時間居ても距離が縮むようで、縮まらない理由はここにあった。だから私達は”対話“ができなかったのだ。

見上げると、大きな観覧車があった。やっと少し本音で話せた気がして、私たちも観覧車と共にゆっくり前進した。そう、信じるしかない・・

真っ青な金平糖は彼に渡せなかった。我が家の愛猫、ジジが今日も見守っている。お菓子言葉の”永遠”は、「愛」という切符に代わるのか。それとも「別れ」の切符に変わるのか。彼の脳内に敷き詰めた金平糖が溶けるのは、私の言葉次第だ。もう残骸を取りだすことが出来ないかもしれない。このアイがキエた先に残るものは一体何なのだろう・・その前に私はもっと言葉の効果を私は知らないといけない。

自分で犯した眼の前の苦さを噛みしめ、パソコンをゆっくり閉じた。そして、私はまた祈るようにアイキエを読み始めた。言葉の効果を知って、真の対話ができるようにと願いを込めながら・・・






















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