これは"うつ"なのか

毎朝5時〜5時半起き。
寝ぼけ眼でスイッチを入れたケトルが『カチッ』と鳴った頃には、
知り合いが釣ってはお裾分けしてくれる大量の鮭を2切れ魚焼きグリルに乗せ、
白湯を啜りながら野菜とバナナを切って、さぞ近所迷惑だろうなと申し訳なさ半分、大音量のミキサーにかけて、
沸騰した味噌汁に卵を落とす。実家でよく作ってくれていた母の顔がちらりとよぎる。

白を基調として、片付いた部屋。
家事の中でゴミ出しが一番好き。楽だし部屋が片付くから。

冷凍ごはんのストックはない。毎朝炊き立て。
ランチョンマットを敷いてダイニングテーブルでいただきます。
騒がしいのが苦手でテレビはつけない。
ただ、「おいしい、天才」と呟き、にんまりしながらご飯を食べる。

朝ごはんと同時に作ったお弁当を冷ましながら、洗い物を済ませ、SNSをチェックしながらソファでくつろぐ。
しばらくするとベランダに出て、椅子に座りながらゆっくり煙草を一本。

暇だからと掃除機やトイレ掃除をしているうちに、もう出る時間かとゴミをまとめて、早くも遅くもない時間にゆっくり家を出る。

そんな日々を続けていたのに。
いつからだろう。きっかけはわからない。

届いた荷物の段ボールは箱のままいくつも放置。
洗い物は何日間も置いたまま。3週間とか、置いていたかな。
今はもう、洗い物ができないことがわかっているので使い捨てのコップやお皿、割り箸を使用。

起床時間は7:00過ぎ。お風呂は起きてから。朝は食べない。お昼はパン食。
ゴミはテーブルの上に放置。もう何ヶ月もテーブルの面を見ていない。
服はトイレやリビングどこにでも脱ぎ捨ててある。
洗濯物は2週間もしない時がある。それでも着る服はたくさんあるのだなー、と思ったり。
化粧道具は床に置きっぱなし。寝る時のコンタクトは外して枕元に放置、つけたままの日も多い。

仕事から帰ってきたら何もせず。
一向に片付かない部屋を一瞥して布団の隅で過ごす。
早く帰れた日は19時に寝ることも。朝までぐっすり。それも望んで早寝しているわけではない。

こんな自分は本当はとっても嫌だ。
だって出来ていた時の自分を知っているから。

原因がわからない。
解決策も見つからない。
昼間は「よし、今日こそ帰ったら頑張ろう。」と思うのに、いざ帰ると無気力で、自分ってやつは。と思う。

それでも仕事場では全く気丈に振る舞えていて、全て何もかも順調ですといった調子で。
だめだめな自分を私だけが知っているから、職場での笑顔溢れる自分がひどく滑稽に感じたり。

職場でのストレスかな。
そもそも頑張りすぎていただけだったのかな。
きっと原因は職場でのセクハラだったのだろうと今になると思う。

解決口がわたしにはわからない。
歩道橋やベランダから下を見るのはすき。昔から好き。でも、わたしがここで死んだら離れて暮らす家族にあの汚い部屋を見られるのか、それは嫌だな。と思う。
そして、そう思えているうちはまだ全然大丈夫、と思う。

だからわたしはまだ全然大丈夫。
月1回、恋人が遠方から来る時には一生懸命片付けて、見せかけのモデルルームを作る。それがなければ今頃ゴミ屋敷になってたかな。

ところが、決死の思いで作ったモデルルームを見て、彼がひとこと。
「最近心配してたけど、部屋見て本当にしんどいんだなって思ったよ」
あぁ、なんなの。
頑張ったんじゃん、あなたが来るから。
ボロボロの中、必死に部屋を片付けたのに。

わたしが作り上げた偽物の豊かな空間は、
一瞬で作り物だとバレてしまった。
取り繕うこともできなくなったのか、と自分に落ち込んだ。

この状況をなんというのかわからない。
わたしの知っている浅く狭い知識の中では、これも"うつ"というのかな、と思ったり。
いや、もっと深刻な人がたくさんいるんだからきっとわたしはそうじゃない、と思ったり。

病院には行けないとセーブしてる、だってきっと病院では外モードで気丈に振る舞えてしまうのだから。
そんな自分をまた客観的に感じたくない。家ではあんななのに、「あんたださいな」と思う。

そうやってもう何ヶ月も経った。
解決したい、どうにかしたい。そう思う反面、
誰にも知られたくない。自分が我慢すればいい。
そして動く気力もない。

現状から逃げ出すにはどうすればいいのか。
と解決口を探ってはみるけれど、思うだけで何時間も経過して、その日は結局何もできない。の毎日。

抜け出したいな、抜け出したいな。
あの頃に戻りたい。
崩れた生活と真っ暗な部屋と対照に、減らない紅鮭のおかげで冷凍庫は嫌味なほど鮮やかだ。

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