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駆け出しデザイナーからプロへ。理想的なキャリアとは?

クリエイティブディレクター/プランナーのぽりです。
DesignToastでデザイン講師、日本&アジア間でのクリエイティブディレクション・企画を行っています。

デザインも教えているのですが、
デザイナーやフリーランス希望の生徒さんからよく相談を受けることがあります。

「今はほぼ未経験ですが、デザイナーとして将来はフリーランスを目指したいです。一番近道でプロになるにはどうしたらいいですか?」

といった質問です。

私自身のキャリア

私自身のキャリアとしては、

ー都内の美大卒業
ー百貨店の空間ディスプレイデザイナー(2年)
ーグラフィックデザイナーに転職。広告制作会社に勤務し、転々とする(5年)
ー海外でフリーランスになる(2年)

一番下を除けば、美大グラフィックデザイン専攻卒業後の典型的なキャリアかなあ、と思っています。

※といっても美大生は個性的な人も多いので、デザイン科の友人はある日突然大工に転職しましたし、油絵科から銀行に勤めた人もいますし、私のように海外に出ていって帰らない人もいます。

理想的なフリーランスデザイナーへのステップ

結論から言えば、まず1年くらい会社に勤めるのはどうですか、と答えることが多いです。

基本的な流れとして
未経験 → スクールまたは独学 → 会社勤務1-2年 → フリーランス
という流れが最短かなと思っています。

ただ、これは「どうしても会社勤めしたくない!」という人向けの最短の話で、個人的には会社勤務期間はもっと長い方が理想的じゃないかなと思っています。

「未経験でもっと早くフリーランスになれないの?」と思うかもしれませんが、
まずデザイナーは「ポートフォリオ(=作品実績)を見せて」と発注前に必ず聞かれ、作品がないと仕事が貰えないので、
自分で作品を作るなどすれば不可能ではありませんが、未経験からフリーランスになるのは一般的には少し厳しいことが多いです。

そして、個人的な経験から、早めにフリーランスになるのはちょっぴりおすすめできない理由がいくつかあります。

フリーランスになるのが早すぎると、5年後に後悔するかもしれない

フリーランスに早くなることの問題点をあえて挙げてみると

一つ目は、
フリーランスは単独で人のデザインを見る機会や刺激を受ける機会が少なく、自分の引き出しから出します。
そのため、例えば同じ5年間、フリーランスをしてきた人と、会社員で蓄積してきた人は、5年後比較するとインプット情報量に圧倒的に差がついています。

例として、私の会社の先輩で、フリーランスとして数年働いて会社に勤め直した人を知っていますが、
ある限られた得意なもののクオリティは素敵なのですが、できるジャンルの幅が少ないように感じました。また、本人もそれを気にしていました。

私の1-2年生時代を振り返っても、制作者目線以外での提案ができず、引き出しも少なくアイデアを即座にいくつも出せず、クオリティも安定しませんでした。

今はPinterestやデザインのシェアなどもありますが、どれも表層のできあがりデザインです。会社であれば、クライアントの傾向やそもそもの課題(お題)に対し先輩たちが出した答えや、修正の経緯を見ることもでき、学べる量が違います。というのは、経験から感じます。

二つ目は、
今までやってきた制作実績に似た仕事しかもらえなかったり、キャリアにない仕事を依頼されないこと。
デザイナーと名乗ったら、デザイン制作の作業依頼が来ます。当たり前ですが、それ以外の仕事は来ません。実績にない企画や写真撮影ディレクションなどの依頼はその手のプロに依頼されます。
(だからフリーランスって「ハイパーメディアクリエイター」等、すこしぼかした肩書の方が多いですよね)

会社であれば「やりたいです!」と手を挙げたら新しい案件を請け負え、新たなスキルがつくこともありますが、フリーランスは「やりたい・できます!」ではなく「こんなものをやりました(実績を見せる)」で依頼がきます。

フリーランスになると、お客さんは私たちを育てる気もないし、リスクを背負いたくないので、会社よりビジネスライク。
なので、新しいチャレンジはむずかしく、成長機会は会社員よりも少なめです。
ダメ出しを貰えることもなくなり、ダメなものを出せばただ仕事が来なくなるだけです…切ない…。

ただ、例外はあると思っていて
・アート寄りの感性を追求したい
・自習が得意で、勉強会等で高め合えるハイレベルな仲間がいる
・ディレクター・マネジャーになり技術者を動かす側に回りたい
・ビジネスが得意で起業したい

など、一般的なプロデザイナーへの道を追求するのではない場合、会社に属さないことで学べることも多いのではないかなと個人的に思います。
交渉力などの営業寄りのスキルはフリーランスの方が伸びますし。

具体的に会社で学べること

私は今「デザイナー」という立場として、幸いなことにすごく困ったことはありません。
キャリアに悩みに悩んだ20代でしたが、今はそんなに間違いではなかったのかなと思ったりしています。

じゃあ実際、会社でどんな経験を積めたの?というところですが、

・先輩の良いデザインを見れた
・色々なデザインやアイデアに触れ、ディレクターの意見・情報を聞けた
・真剣度、時間、求められるクオリティのレベルが、
大手広告代理店の下請け制作会社はフリーランスの4倍くらい、一般的な制作会社も2倍くらい高いので全力でやらざるを得なかった(必然的にスキルが伸びた)

最後のは特に。営業含め目が肥えているので、求められるデザインを出せるまで帰れないこともあるし、ちょっと手を抜けばコンペは落ちるし、資料を1日かけて血眼で探したりもしました。
その分、目に入るデザインのレベルは高かったし、ダメ出しも具体的で、より高いデザインを完成させられるまでやらされました。

そのおかげか、フリーランスになってからもありがたいことに、
「デザインがステキなので真っ先に連絡しました!」
と言ってもらえる機会もあります。(ありがたい…)

とはいえ勤務当時の私は若手組で、特別エースだったわけではありません。
先輩が毎回私の予想を超えるものを作るのを見て圧倒されていました。

私は体育会系な現場も、その先輩の人格も、なんだこりゃな場面も正直沢山ありましたが、
デザイン力は心から尊敬していましたし、グサッとくる物言いであっても、言われたことに素直に従って制作をしました。
苦しい経験が必要という意味ではなく、良いデザインの生まれる環境で、ひたすらインプットに努めた修行の時期が成長させてくれたのかなと今は思います。

ただ、そんなお得なインプットができる貴重な時期は限られていますし、
年功序列文化の日本では20代~30前半までに会社勤め修行期間は過ごしておいた方がスムーズかもしれません。

独学か、スクールか

ちなみに、駆け出しの第一歩、独学かスクールか。

まずデザイン初学者の陥りやすい傾向として「見た目おしゃれでそれっぽいけど機能しないデザイン」があります。
実際、「Webデザイン」と検索すると見た目が凝ったサイトばかり出るし、小難しいビジネスサイドよりおしゃれっぽく見せるスキルにフォーカスしてしまうのも分かります。

おしゃれさは、もちろんデザイナーを志す上であるに越した事はないのですが、
骨組みのない状態で肉付けから入ってしまうと、デザインの目的自体を見失うこともあります。(私もそうでした)

でも、そもそもお客さんが10万単位もお金を払って、デザインを私たちプロに依頼するのには理由があります。「クリックさせる」とか「視認性を上げる」等のミッションをクリアするためです。

その点を理解するには、独学でもスクールでも
・実践的な課題をやること
・本当の意味で将来必ず力になる、自立するスキルを教えてくれるメンターや先輩に出会うこと
が、私はすごく大切なことだと思っています。

独学の人は、よい先輩に出会うこと。


スクールを離れた後も本当の意味でその人が独り立ちできるように、骨組み肉付け含めリードしていきます!

DesignToastも受講生受付中なので、ぜひ!


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