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マーケティングリサーチ初心者必見!効果的な調査のコツと落とし穴

皆さん、マーケティングリサーチって何をするかご存知ですか?

聞いたことがあるが自分ではやったことがない、自社会員向けにアンケートを作ったことはあるが実はよく分かっていないという方が多いのではないでしょうか。私もそうでした。

私自身、事業会社で7年間ファッションEコマースに携わっていた際に上司から「(リサーチ会社は使わずに)リサーチして〜!」と無茶振りされた経験があります。その時はNPSとかVOCという言葉がでてきたときで、世の中で話題になっているし、自社でもやろう!というような特に何を知りたいはないが、顧客の声を聞いてみたい、というようなふわっとした依頼でした。

困りますよね?

しかも私はアパレル企業の総合職だったので、リサーチなんてしたこともないし、アンケートも作ったことがなかったのでとても困りました。

参考書を読んだり、ウェブサイトを巡回したりしてリサーチのためのリサーチをしたりして、なんとか調査結果を出すことができました。

数年後、データアナリストとして働く中で、当時に比べればリサーチについての知識や経験も得ることができたので、当時の私と同じようなお悩みを持つ方向けにこの記事を書いてみました。この記事を読んでもらえたら、リサーチへの理解が進み、実践するハードルが下がるはずです。


こんな人におすすめ

  • マーケティング/ECの部署に配属されたばかりで、右も左もわからない方

  • 自社の会員向けに簡単な調査をしてみたい方

  • リサーチ設計を初めて行う方

この記事で伝えたいこと

  1. マーケティングリサーチとは、マーケティング活動全体を円滑に進めるための活動であり、リサーチの目的は、客観的データに基づく意思決定と新たなビジネスチャンスの発見にある

  2. 調査目的を明確にした上で、最適な調査手法を選ぶことが何より重要

  3. 効果的なリサーチのためには、既存データの活用、仮説設定、適切な調査対象者の設定、サンプルサイズの確保などの準備作業がとても重要


マーケティングリサーチの概要

簡単に言うと、お客さんの声や市場の動向を調べて、マーケティング活動に活かしていく取り組みのことです。

例えば、新商品を開発する際には、まずターゲット層のニーズを探るための調査を行います。 食品メーカーが新商品を検討する際は、ターゲットの食生活や嗜好、健康志向などを徹底的にリサーチします。

そうして見つけたニーズを元に製品コンセプトを作ったら、今度はそれをターゲット層に実際に見てもらって、評価を聞くコンセプトテストを実施します。 ネーミングや特長、価格帯などに対する反応を探り、コンセプトのブラッシュアップに役立てるわけです。

このようにマーケティングリサーチを行う理由は大きく2つ。

  1. お客さんの声を客観的なデータとして把握し、意思決定の根拠とするため

  2. 調査の中で思いがけない発見をし、新たなビジネスチャンスを見出せる可能性があるから

また、リサーチ結果を商品開発や販促施策に活かすためには、得られた知見を具体的なアクションに落とし込むことが重要です。

例えば、ニーズ調査の結果、「低価格帯の商品ラインナップの充実」という示唆が得られたとします。 この場合、具体的にどのような価格帯の商品を、どれくらいの割合で品揃えするのかを検討し、 来期の商品計画に反映させていくことが求められます。

このように、リサーチ結果を単なる情報の集積で終わらせるのではなく、 意思決定や施策立案に直結させていく視点を常に持つことが大切です。


マーケティングリサーチの種類

マーケティングリサーチは、新商品開発に限らず、価格設定、プロモーション、販売後の改善など、マーケティングのあらゆる場面で活用されています。 ニーズ調査、コンセプトテスト、使用実態調査、ブランドイメージ調査、広告評価、顧客満足度調査など、その種類は多岐にわたります。

マーケティングリサーチは、大きく分けて以下のタイプがあります。

・定量調査・・・インターネットでのアンケート調査や電話調査
・定性調査・・・グループインタビューやデプスインタビュー

定量調査

定量調査は、アンケート調査に代表されるように、数値化して統計的に分析する手法です。 サンプル数を大きくとって、結果を数字で表すのが特徴。 得られたデータは客観性が高く、仮説検証に適しています。

■代表的な定量調査
インターネット調査
電話/FAX調査
訪問調査
郵送調査
モバイル調査
ホームユーステスト
会場調査

定性調査

一方、定性調査は、グループインタビューやデプスインタビューなど、お客さんの生の声を直接聞く手法です。 少人数のお客さんに集まってもらい、特定のテーマについて深く掘り下げて議論してもらいます。 心理的な背景や本音を引き出すのに効果的で、新しい仮説を立てるのに役立ちます。

■代表的な定性調査
グループインタビュー
デプスインタビュー
オンラインインタビュー

定量調査と定性調査、この2つの手法は一見すると別物に見えますが、実はうまく組み合わせることで、より深い気づきが得られるんです。

例えば、アパレルブランドがリピート購入者を増やしたいとします。

まずはロイヤル顧客を集めてグループインタビュー(定性調査)を行い、 ブランドを好む理由や他ブランドとの違いなどを深堀りして、リピートを促す要因の仮説を立てるわけですね。

次に、その仮説を検証するために、ロイヤル顧客と非ロイヤル顧客を比較するアンケート調査(定量調査)を実施します。 リピート購入の頻度や金額、ブランド満足度など、定量的に数値化できる項目を中心に聞いていきます。

こうして定性と定量を組み合わせることで、リピート購入を促進するための具体的な施策アイデアが見えてきます。

別の例として、新商品を開発し発売を計画しているとします。

新商品開発の初期段階やアイデア出しやコンセプト作りの段階では、まず定性調査が有効でしょう。 グループインタビューなどで、ターゲットとなるお客様の生の声を聞き、ニーズや課題を深堀りすることで、新しいアイデアが生まれやすくなります。

一方、コンセプトがある程度固まってきたら、今度は定量調査を実施し、数値データで検証していくのが良いでしょう。 価格設定などの際は、アンケート調査で許容価格帯を探るなど、定量的なアプローチが有効です。

このように、プロジェクトのフェーズごとに定性調査で仮説を立て、定量調査でそれを検証するというのが、マーケティングリサーチの王道の流れと言えるでしょう。

他にも、マーケティングリサーチには様々な手法があります。 インターネット調査、訪問調査、郵送調査、モバイル調査、ホームユーステストなどなど。 それぞれに特徴があり、目的や対象者に合わせて使い分ける必要があります。

適切な手法を選ばないと、本当に知りたい情報が得られないリスクがあります。 リサーチ目的を明確にした上で、最適な調査手法を選ぶことが何より重要ですね。

定性と定量、それぞれの特徴を理解した上で組み合わせることが、リサーチ成功の鍵を握ります。


マーケティングリサーチの準備

マーケティングリサーチを始める前に、まずは入念な準備が欠かせません。いくら優れた調査手法を選んでも、準備が不十分では意味がありません。マーケティングリサーチを行う上で、最も時間がかかり、関係者とのすり合わせが不可欠になるのがこの段階です。

POINT1:既存データの有効活用

自社でもっているPOSデータ、CRMデータ、過去のリサーチ結果や業界団体が公表する過去のデータ、政府統計などの2次データを洗い出し、分析してみましょう。 既存データを見ることで、リサーチの方向性が見えてくるはずです。意外と宝の山だったりするんですよ。

POINT2:リサーチの目的を明確にする

漠然と「お客さんの声を聞きたい、サービスを改善したい」では、リサーチのゴールが定まりません。 知りたいことを具体的に落とし込み、それを基に仮説を立てるのがポイントです。

調査目的を明確にするコツは、まずは自社の課題や問題意識を整理することが大切です。

漠然としたテーマしか浮かばない時は、社内外の関係者とディスカッションを重ねて、 「どのような意思決定にリサーチ結果を活用するのか」を明文化してみましょう。

例えば、「新商品のターゲット像を明確にしたい」「既存商品の満足度を上げるためのヒントが欲しい」など、 できるだけ具体的にリサーチの目的を言語化することが、テーマを絞り込むコツです。

一例として、外食チェーンが新業態を検討しているとします。

まずは公的統計や業界レポートを分析し、市場規模や価格帯の動向、競合他社の状況をしっかり押さえます。

その上で、「主なターゲットは20-30代の単身者。外食予算は1人1,000-2,000円程度と推測される」といった仮説を立てます。

また、過去のデータからターゲットのニーズやペインを仮説に肉付けすることも非常に有用です。

外食中心の生活になりがちで栄養価が偏っていることが不安、体型に不安が出てきたなどの声を基にターゲットを明確化できれば、よりリサーチの精度を高くすることができます。

こうした仮説があると、自ずと調査対象者や設問などの解像度が上がり、調査設計がグッとしやすくなります。 逆に仮説なしにリサーチを始めると、焦点がぼやけてアンケートは取ったけど使えるデータにはならない恐れがあります。お金や時間をかけるので失敗はしたくないですよね。リサーチの目的はしつこいくらい明確に言語化しましょう。

仮説を立てる際には自社の強みを起点に、ターゲットを仮説化してみるのがおすすめです。

例えば、ファッションブランドが新たな客層を開拓したいというテーマがあったとします。 その際は、まず自社の強みや独自性を棚卸しし、それを手がかりに仮説を立てていくのが有効でしょう。

例1
デザイン性の高さが他社との差別化となるポイントだ

デザイン重視の20代女性をターゲットにできるのでは

例2
機能性と価格のバランスの良さが強みだ

子育て中の30代男性をターゲットにできるのでは

自社の特徴を突き詰めることで、ターゲット像も自ずと見えてきます。

POINT3:調査対象者の設定

ここを間違えると、せっかくのリサーチが台無しになりかねません。

例えば、スマホゲーム会社が新作アプリのコンセプトテストを行うとします。

その際、現在の自社ゲームユーザーだけでなく、他社ゲームユーザーや非ゲームユーザーにも声を聞くことが大切です。

多様な視点からフィードバックを得ることで、コンセプトの訴求力を見極められるからです。

POINT5:サンプル数と割付

調査対象者の割付も慎重に検討しましょう。 ユーザーと非ユーザーの比率を適切に設定することで、バランスの取れた知見が得られます。

サンプル数の設定は大切なポイントです。 サンプルが少なすぎると、データの信頼性が下がってしまいます。 かと言って多すぎると、コストがかさんで非効率です。 目的に応じて必要十分なサンプル数を設定することが肝心です。

サンプルサイズの目安について

サンプルサイズは、母集団の大きさや求める精度によって変わってきますが、 一般的には母集団の5~10%程度を目安にすると良いでしょう。

例えば、母集団が1万人の場合、500~1000人程度のサンプルを確保できれば、 ある程度信頼に足る結果が得られると考えられます。

ただし、セグメントごと(性別や年代等)の分析を行う場合は、セグメントごとにこの規模のサンプルが必要になるので、 全体のサンプルサイズはそれだけ大きくなります。

このように、綿密な準備なくしては、効果的なマーケティングリサーチは成り立ちません。時間をかけて入念に準備することが、リサーチ成功の大前提です。


まとめ

ここまで「効果的な調査のコツと落とし穴」を自分なりにわかりやすくポイントを纏めてきましたが、最も大切なことはひとつだけです。

調査目的を言語化するだけ!

調査目的が定まらないことには、仮説設定もターゲット設定も設問も作れません。逆に調査目的が明確であれば必然的にどのような調査をすべきかが明確になります。

「調査目的なんて簡単に決まるはず/決まっているはずだ!」、と思われるかもしれませんが、実はふわふわしていることが多いのはあるあるです。

もし漠然とした文章しか浮かばない時は、社内の関係者とディスカッションを重ねて、 「どのような意思決定にリサーチ結果を活用するのか」を明文化してみましょう。

「企画している新商品のターゲットが持つペインを明確にしたい」「既存商品の満足度を上げるためのウェブサイトのハンバーガーメニューについてヒントが欲しい」など、 できるだけ具体的にリサーチの目的を言語化することで自身やチームの思考を整理することができます。

お客様のニーズを捉えるマーケティングリサーチ。
その成否は、入念な準備にかかっています。
綿密な準備を心がけて、効果的なマーケティングリサーチに挑戦してみてください。

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