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ソムニウム(45)下宿屋敷


四畳半の部屋が
数百戸ある
下宿屋敷に引っ越しする
111号室に荷物を運ぶ
隣りの住人に挨拶する
左の部屋の住人は留守で
音楽が小さく鳴っている
右の部屋には難民たちが
体育座りで詰まってる
戻って畳に寝転がる
窓に大きな月が昇る
畳の下の地面が怖い
刑事と警官が訪れる
死体を埋めていませんか?
ああ、うん、埋めた、
と白状する
床をはぐって捜索開始
土を掘る掘る
現れる
屍蝋化した巨大な老人の死体
ぱかっと目を開け警官を襲う
撃たれても死なない
刑事を食べる
体がどんどん再生する
あはは、食え食え
笑って目醒める
畳の上でうたた寝していた
小さな黒猫が浮いている
脚が六本生えていて
人間の手指が生えていて
頭に耳がついてない
猫ではないな
とても可愛い
おいで、と右手を差し伸べる
左の二の腕を枕にして
大きな赤ん坊が泣いている
夢の中の老人の
生まれ変わった姿と分かる
おいで、と胸に抱き寄せる
下宿屋敷が気に入った


(終わり)


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