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ソムニウム(33)猫のポサーダ


飼い猫が行方不明
サイドカーで探しに出る
三年探して見つからない
もう死んだかとあきらめる
悲しくて眉を剃り落とす
帰る途中で道に迷う
限界集落にたどり着く
藁葺き屋根の大きな宿
中に千匹の猫がいる
探していたのはどの猫ですか、と
女主人が訊いてくる
すべて死んだ猫だとわかる
すべて自分の猫だと答える
女主人が頷いて微笑む
一緒に宿で暮らし始める
一日一匹猫が消える
毎日眉を剃り続ける
三年たって二人きりになる
猫がみんないっちゃったね、と
女主人が隣りでつぶやく
まだいる、君だ
言って目覚める
公園の東屋で野宿している
サイドカーのシートで
飼い猫が寝ている


(終わり)

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