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現代アート研究

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現代アートを学び始めた外資系IT企業のプリセールス。 難解な現代アートを探求する学びの記録。
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#現代アート

エンジニアとアーティスト

カンブリア宮殿のホンダ特集をみた。 エンジンのホンダと言われていたが、脱エンジンであるEVの開発へシフトする。そのシフトにあたってソニーと提携というメッセージから始まり、空飛ぶクルマ(ドローン)の課題を解決する技術開発などが紹介されていた。ここでの課題はバッテリー性能による航続距離の短さで、ホンダは、航続距離を400kmまで伸ばすという。その実現方法として発電しながら飛ぶハイブリッド方式というものを研究開発している。これは小型ジェット機の開発、自動車の開発などの研究ノウハウ

アンラーニング ランゲージ

2022年11月にYCAMで見たアンラーニング ランゲージについてWIREDで記事が公開されていた。改めて振り返っておきたい。ローレン・リー・マッカーシーとカイル・マクドナルドのインタビュー Googleや、Facebookに監視されていると言ったら、「なぜ?」と思うかもしれない。 検索する人は、何らかの購買ニーズを持っているのではないか?そうした仮説から検索結果に広告掲載スペースを作り、新たな市場を作った。ビジネススクールでは、顧客ニーズ(検索者と広告出稿者の両方)と市

アートワールド2022

Artsyのまとめ記事が便利 一つ目のまとめは2022年のオークションについて、ウルトラ・コンテンポラリー・マーケットという表現に目が止まる。プライマリーで若手アーティストをコレクションする人たちが増え、そうしたアーティストの作品がオークションに出始めたらしい。オークションデビューと紹介している。 アーリーキャリアのアーティストがオークションに出始めて、それらアーティストは、展示歴、美術館収蔵品のリスト、そしてコレクターのウェイティングリストを十分に積み上げている。年の後

“Variants” by Pierre Huyghe

トップアーティストを研究することは、現代アートの理解と楽しみを得ることに非常に役に立っている。研究は、作品やアーティストへのインタビューをはじめとして、様々なメディアに掲載された批評や論文、大きな受賞とその理由とコメント等々をソースとして、深く深く潜り、自分の解釈と解釈のための勉強(哲学、科学技術など)から整理してまとめていく。そして自分の言いたいことに辿り着く。ようやく修士論文を書き上げたが、気が付いてみると、それが自分のアートを見るまなざしと思考の基準になった。 現代ア

佐賀、博多、京都を巡るアート鑑賞、そして東京

YCAM の余韻に浸りつつ、佐賀へ移動してきた。kenakian の大垣美穂子展を見るため。 柳健司のアートプロジェクトスペース、柳さんには、いろいろとお世話になっている。展覧会は、ほぼ皆勤賞なので、行かないと居心地が悪い気がする。 書のインスタレーション、2階のスペースには漢詩を参照した作品が大きく展示されていた。文字とは違ったドローイングのようにも見えるが、作品と対峙していると文字として浮かび上がってくるようで、一点から全体の詩を見ることは適わないが、白居易の詩と認識

あいち2022

アートを巡る旅は愛知県にたどり着いた。会期が2か月と少し、十分に余裕があると思っていたら、あと少しで終わる。無理やりにでも予定をつける必要があった。 常滑会場へ向かう。 一度セントレアを利用したことがあるから、このあたりに来たことはある。特急で通過しただけだけども。名古屋に4年ほど住んでいたが、海側には縁がなかった。 名鉄の利用は難易度が高い。同じホームに何本も電車が来るし、行先が違う。カラフルに色分けされたホームの待ち列の適切な場所に並ばないといけない。行先の駅が終点とは

リヒターを見て、岡本太郎を見て

東京国立近代美術館の「ゲルハルト・リヒター展」を見た。確か9月の始めくらいのこと。 誰だったかアーティストのツイートで、リヒター展の感想を次のようにつぶやいていた ”(表現が)ほとんどやらられている。これからの人はどう(表現したら)いいの” というような内容だったと思う。美術館の2時間ほどの滞在で、その指摘がリフレインする。 展示会場入ってすぐのところにビルケナウが展示されている部屋があった。後輩のゼミ生がリヒターに向き合い、ビルケナウに向き合っている。彼にとっては大変な時期

伊藤雅浩「絶対写真論 アルゴリズム・オブジェクトとしての写真へ」読書メモ

写真は、かくも深遠なものなのか。 何が写真となるのか。写真を取り巻く技術や考え方の変遷を捉える。 伊藤雅浩の絶対写真論 カメラでの撮影、現像、プリントが技術の進化や、アナログからデジタルへのシフトよって、技術から操作へと変遷してきた。撮影にあたり専門スキルが必要ではなくなる。つまり、デスキリングが行われた。 フルッサーの言葉を引用し、カメラの操作者(いわゆるカメラマン)ではなく、カメラを作った技術者がアーティストと呼べるのではないかと問題提起する。そこに疑問を持ち、それ

写真とテキストあるいは絵画

名古屋駅から徒歩7分程度のところに鮮魚を扱う市場がある。それほど広くないけれど、台車に魚を積んで運ぶ様子はとても活気がある。卸が主体ではあるけれど、食堂もあるし、お昼近くの閉店時間になると小売りもしてくれるのではないかなと思う。ただ、旅先で生魚を買うわけにはいかないので、試したことはないけれど。 そんな魚市場のすぐ近くにFlowがある。現代アート写真をメインに取り扱うギャラリーであり、開廊して1年程になる。そこで石本陽の個展を行った。石本は一貫して音と視覚との関係性を探求し

NFTの展示問題

ArtyにNFT展示についてのコラムがあった。NFTに限らず、1990年代に台頭してきたビデオ・アートをどのように提示するのか?という問題(というか悩みだろうか)は存在していた。 古くて新しい課題なのかもしれない。 ロックダウンで閉じ込められていた時は、バーチャル空間に遊ぶことができた。そうしたバーチャル空間を彩るためにNFTは一役買っていた。フィジカルが大分戻ってきた段階で、これらをどのように提示するべきなのか、という点が大きくなってきたという。 NFTの場合は更に事

アート | ビジネス思考

社会人向け大学院に通い始めた当初は仕事に関連付けようとは思っていなかった。MFA(Master of Fine Arts)が取得できればいいだろう、それくらいに考えていた。このあたりのことについては、次のnoteにまとめた。 ところが、最近は現代アートの研究(修士論文の執筆経験)が仕事に役立っていると感じる。直接的ではないにしろ、アートを言葉で説明するということがビジネススキルと密接に関連しているように思う。 アートの研究が、仕事の何に役に立つのか?日常生活、世間には様々

六本木ギャラリー巡り

大学院修士課程を修了してからというもの、見る数は大幅に少なくなった。恐らくゼミの研究報告など、見たものをテキストにすることもなくなったからだと思う。 アニッシュ・カプーアが最終日ということを知って、暑い土曜日に出かけることにした。 気温が一度上がると5000億円の経済効果がある。どこかの総研系の人がニュースで語っていたような気がする。ただし、暑くなりすぎると人がでてこなくなり、逆効果だという。六本木は人が多かったような気がする。 駅からピラミデビルに向かうまでに汗が噴き

Other Rooms

6/1から19日まで開催されていた『Other Rooms』を鑑賞してきた。 予約をして、1時間30分枠を一人で鑑賞するという展覧会、狩野志歩、橋本晶子の作品が提示されている部屋に案内され、そこで一人で鑑賞をするというもの。部屋の場所は非公開であり、当日受付をするまで、どこに連れていかれるのか、どのような場所なのか想像するしかない。 意外な場所に案内された。 誰かが住んでいたスペースであるが、生活感はなく、痕跡だけがある。ベッドと机、ミニキッチンに椅子が二つ配置されてい

Seth Price 『DISPERSION』読書メモ

以前、セス・プライスとMOMAのキュレーターの対話についてnoteを書いた。その元となるようなドキュメント、DISPERSIONを読んでみた。そのメモを残しておきたい。 セス・プライスは、ポスト・コンセプチュアル・アーティストとして紹介されている。1970年代前半生まれで、アラフィフのアーティスト、二コラ・ブリオーが紹介した一連のアーティストよりも下の世代、ニューヨークに在住している。 コンセプチュアル・アートとは何であるか?難しい問いかけであるが、セス・プライスは、難解