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佐賀、博多、京都を巡るアート鑑賞、そして東京

YCAM の余韻に浸りつつ、佐賀へ移動してきた。kenakian の大垣美穂子展を見るため。

柳健司のアートプロジェクトスペース、柳さんには、いろいろとお世話になっている。展覧会は、ほぼ皆勤賞なので、行かないと居心地が悪い気がする。

書のインスタレーション、2階のスペースには漢詩を参照した作品が大きく展示されていた。文字とは違ったドローイングのようにも見えるが、作品と対峙していると文字として浮かび上がってくるようで、一点から全体の詩を見ることは適わないが、白居易の詩と認識したら、勝手に脳が見えない部分を補完する。一階は、書に星のように白い絵の具を散らした作品のインスタレーション、書なのか、絵画なのか。包み込まれるような空間に、しばし意識が溶けだすような感覚だった。

佐賀でディープなアート談義の翌日、博多阪急でアート書道展の開催を知る。ハシグチリンタロウ作品を見ていこう。

英文は左から右へ読む。漢文、和文は右から左へ読む。文字の種類に関わらず、横書きは左から右へ読むことが一般的になっただろう。ハシグチリンタロウのSUPER ERAは、上部に多数のエクスクラメーションが並び、飛び出す眼球が画面の大半を占める。そして、英文でSUPER ERAとある。視線はエクスクラメーションマークから画面中央に進み、この動きが視線を右から左へ動かす、そして文字を読ませる。ここにリズムがあり、自然とヘッドバンギングが起こる。そして、ループになり、自分が何を見ているのか不明で、陶酔していく。まさに彼のパンクの世界を表明している。

日野公彦の作品は、違った画面の動きを見せる。線の動きだろうか。

次の予定も入っている。京都行きの新幹線の時間ギリギリまで鑑賞できたのは、場所がとてもよかったからだと思う。心残りは、今回もハシグチさんと会えなかった。ニアミスが多い。

京都はオープンアトリエを訪問する予定だった。ちょうどACKが開催されていた期間だったけれど、このフェアのことはすっかり忘れていた。

京都の三つのシェアアトリエがオープンスタジオのイベントを実施しており、新正春に誘われたこともあって、寄ってみた。

到着してから気が付いたのだけど、水木塁、岡田佑里奈と、名前と作品を知っているアーティストも同じアトリエだったのね。

新さんが案内してくれる。今年の3月に岡崎のTSUTAYAで作品を見て、新さんを知った。実際に制作している場所を見学できるのは、とても刺激的なこと。そして、インスタレーションと絵画について話を聞けたのが、とてもよかった。

水木さんとも作品や、制作の話、考えていることなどを話ができた。都写美の展示のことを忘れていたから、行かないといけないな。アトリエは広々としていて、制作中の大型作品などを鑑賞することができた。いい空間だと思う。ちょっとWeb検索すると京都界隈にこうしたシェアアトリエあるいはスタジオがいろいろとあり、コクレターや、地域の人との関係性の近さが、いいなと思った。

帰ってきてから、岡田さんと松岡さんの対談が美術手帳で公開されていた。アトリエで、二人の作品を見て、会話をしたら、より身近に感じると思う。

岡山から始まって、山口、佐賀、福岡、京都を巡るアート旅は一旦終了。

11月、12月は展覧会が目白押し、忙しい。東京藝術大学でメチャバースを見た。田中綾子の作品を見たかった。

彼女のTwitterで展示を知り、期間長いなと思っていたら前期期間と後期期間で作品が入れ替わるということ、日程調整して慌てて出かけた。昨年だったか、Biscuit Galleryで作品を見たことがあった。

卒業生を中心とした作品展、田中さんの作品は大型の窓の作品をメインに数点の展示、窓枠から垂れる樹脂、樹脂に取り込まれた写真。木枠の窓は今では珍しく、アンティークの部類に入る。そこに照明があたり、キラキラと光る樹脂がかけられている。樹脂の中にはテキスタイルのようなものが見えるが、これは写真であり、樹脂にくるまれているがゆえに、これが何者なのか判然としない。ただ、樹脂に取り込まれた模様はノスタルジックな雰囲気であり、この木枠とを踏まえて時間の経過を感じさせる。そこにキラキラの樹脂は現在地的な表明をしており、しかしながら、やがて劣化していく。この先のこの作品の変化を考えたとき、時間の流れが、もったりと立ち上がってくる。

樹脂の時間の経過、Biscuit Galleryで見た作品の時間が経過した様子を見られたのがよかった。

上野から三越前に移動する。NACC のむいみなのだを見るため。

ここでは児嶋啓多、千葉雅也の作品を見ようと思っていた。
大きな壁面の児嶋さんの作品、QRコードからはARを体験することができる。都市の記憶とそこに浮かび上がる文字、佐賀、博多で見た文字の形と見方が蘇る。そして、AR体験が、鑑賞者のより積極的な参加を促す。

偶然にも児嶋さんの在廊日だった。都市と都市で遊ぶということ、文字、言葉、記号など、様々な話ができた。


別の日程で都写美。アトリエで見た水木さんの作品に再会する。

都市の記憶を写し取るかのような作品、雑草のポートレート。微妙な立体感を持つ表面のザラザラ感が、ロックダウンの記憶を呼び覚ます。窓から見えた景色を、それこそ手が届きそうなのに、憚られる。黄色と緑色が、そうした閉じ込められているにも関わらず旅情的な感情を呼び起こす。

そして、圧巻なのが多和田有希の作品、海の写真を泡の部分を残して焼いた

この前の部屋には涙壷が展示されており、写真と人との関わり方を深考させる。この作品は、涙壷のワークショップも含めて掘り下げて考える必要がありそう。


ブレイク前夜で見た額賀苑子、ちょうど展覧会が開催中ということで出かけてきた。

住所は銀座だけど新橋からの方が近いギャラリーART FOR THOUGHT

ギリシャ神話を参照した作品を提示している。彫刻と陶板にドローイングを施した作品がある。

メドゥーサとペルセウスが対となって提示されていた。お互いがゴーグルのようなサングラスをかけており、対峙している彫刻がうつる。メドゥーサのゴーグルの中に移り込むのは対面に設置されているペルセウスが写り込む。

神話と作家の解釈による物語、様々な位置から鑑賞できる彫刻作品、そして作品同士の呼応、軽やかな作品がとても面白い。


まだまだ見ておかなければならない展示は多く、期間は短い。綿密なスケジュール化が必要だな。

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Tsutomu Saito
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