詩の同人誌『フラーギ』に寄稿しました
ご縁があって、ロシアの若い人たちがやっているかっこいい詩の雑誌『フラーギ(Флаги)』(https://flagi.media/)に参加させてもらいました。
詩人アレクセイ・パルシコフの特集号で、詩「Минус-корабль」の翻訳です。正直、とても難しかった…… 下記リンクからお読みください。
パルシコフ(1954-2009)は、以下のマニフェストで言及される「メタリアリズム」という詩の潮流を代表する詩人として知られています。
すばらしい機会をくださった鈴木佳奈子さんとВладимир Кошелевさんに感謝します。
おまけ:『フラーギ』について
『フラーギ(旗)』は詩人たちによって作られる。探究的な詩の雑誌だ。探究的な詩においては、現代のもっとも困難な呼びかけに応え、形式において実験を行い、伝統を更新し、みずからの個人としての声を隠さないことが目指される。ボリス・ポプラフスキーの言葉を思い出そう。「芸術とは個人的な手紙である。それは、未知の友人たちに宛てて運まかせに送られるものであり、ちょうど空間と時間における愛する者たちの別離に対する抗議のようなものだ」。だから、その「未知の友人たち」をぼくらは探す。そして、控えめだが欠かすことのできない声たちが、以前と変わらずぼくらの中で響いてほしいと思う。
『フラーギ』が目指すのは、伝統と革新、社会的なものと形而上のもの、高いものと低いものといった偽りの二分法を拒否することだ。ぼくらは、それ自体で独立した詩に関心がある。時としてそれは難解なものであるが、何度でも繰り返し自分の生の新しい側面を読者に開示し、そもそも詩とはいったい何かという問いを絶えず問いかける用意ができた詩のことだ。
『フラーギ』は、世代と結びついたプロジェクトである。ぼくらの大多数は、ロシア語文学の若い世代からなる。若い書き手たちとともに、簡単でない問いへの答えを探し、対話のための場所を作り、未来のプロジェクトを形づくり、現実を記述する新しい言語を発見しようと試みる。「もっとも現代的な思想潮流とは、個々の人間をふたたび開くような潮流である」という言葉を信じる。また、ぼくらにとって特に大切な詩の系統をトランスフォームさせるやり方を追跡・探求することが欠かせないと思われる——それはつまり、メタリアリズムや1980年代レニングラード・アンダーグラウンドの詩学が残した遺産を、明確化し、現勢化し、脱神話化し、再考するということだ。
若いロシア語詩は、世代的崩壊を経験した。それは、『フラーギ』を世に出しながらぼくらが予感したあの「転換」のことである。いまぼくらに必要なのは、自分独自の詩の書き方の新しい基礎を見つけることだ。現在、ロシア語そのものに対する認識というのは、言語実験や美的システムの構築のためのニュートラルな場であるのみならず、帝国的差異と文化的優越の印を帯びてはたらく意味空間というものでもある。『フラーギ』で中心的に扱う世代の詩人たち、その作品が成長し、形づくられていった状況というのは、ロシア語の聖別化がなされ、ロシア語が国際コミュニケーションの言語、「文化的連結点」となり、それによって暴力が正当化されえたような状況である。これを問題化することは、詩の読解のロジックをも変えるだろう。
ぼくらにとって探求することがとりわけ大切であるのは次のようなこと。すなわち、多様な言語システムがテクストの中でどのように相互に作用するか。地理上・歴史上でパロールがどのようにローカライズされるか。書き手がロシア語文化空間との関係性を築けるような新しい立場を発見し、あるいはそれに対抗するための道具として、どのようにロシア語を使用することができるか。——そういったことが、ぼくらの仕事の動機をなす。ぼくらはロシアの諸地域でローカル化した詩にとりわけ多くの注意を払おうと思うが、それによって新しい詩人の名を発見するだけでなく、文学的モデルにおける辺境と中央の機能を再考したい。多様な文化圏・言語圏からの作家たちと交流するための新しい方法を作りたい。そうした方法は、強制的(命令による)方法ではない。それは、他の作家と仕事する時はもちろん、自分たちの詩的方法論に取り組む際にも、思考を脱植民地主義化することの一助となりうるものである。このプロセスは、最終的なものとはなりえない。だからこそ、ぼくらが「思考の脱植民地主義化」と言う時、それは新しいパースペクティヴ、美的ニュアンス、現代の困難な問いについての答えの探求に対して己れを開き、注意を払うことを意味するのだ。
原文→Флаги: О нас
*「ぼくら」は男性ジェンダーの標示ではなく、ジェンダーニュートラルな若い人たちの集合的代名詞として読んでほしいです。
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