掌編小説「don't mind」(400字)
ラテン系アメリカ人の明るい母と、日本人の真面目な父。二人が出会ったのはアメリカらしいが、私が物心ついた時にはすでに日本に家を構えていた。
幼少の頃の記憶として強く残っているのは、毎晩母が昔話を読み聞かせてくれたこと。母のつたない日本語で聞く桃太郎や、カチカチ山がとても好きだった。たまに父が読み方を訂正するのが、なんだか幸せだった。
私が日本で困らないように、と、できるだけ英語ではなく日本語を使って家族の会話をしてくれた。周りの子どもたちが英会話を習う中、私は漢字の勉強をしていた。
ハーフのくせに、と、英語が話せないことを学校でバカにされるんだと母に伝えると、don't mind(気にするな)と珍しく英語でアドバイスが返ってきた。
大人になった今も、相変わらず英語は話せない。しかし、私は胸を張って教壇に立つ。
「それでは、国語の授業を始めます。」
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