『吊り橋渡る』

風にあおられユラユラ揺れて
なんとか一歩踏み出して
とにかく一歩踏み出して
頼りない足場に
頼りない一歩を踏み込んで
吊り橋渡る

「下を見るな」と言われても見てしまう人の性
下半身のあたりも縮み上がってしまう
子孫残しておくべきだったか
後悔してももう遅い

ギシギシという音に耳を塞ぎたくても
両手はバランスを取ることに精一杯

遠くに美しい山々見えてホッと一安心も
気まぐれな強風にあおられ引き返すこと考える

しかしながら
すでに戻ることも難しく
とにかく真ん中あたりでしゃがみ込む

どうしてこんなところに来てしまったのか
せめて隣にあの子さえいてくれたら

嘆いても遅く
意を決してもう一歩踏み出す

そうだ私は私ではないのだ体は借り物なのだ
投げやりという名の勇気が湧いてくる
気分はインディアナ・ジョーンズさ

どうにかこうにか最後まで歩いて
ふと気づいた

なあんだ
向こうから回れば良かったのか

でも
なんか達成感はあるなあ

というわけで
甘ったれた現代人の偽りの冒険心を満たすために
吊り橋という旧態依然とした代物は未だに存在するのである