忘れ去られる朝の景色を
来訪した嵐にさらされて、吹き荒ぶ風の中に雷のとどろきの声を聞く時、掻き乱されてゆく静謐な部屋は水底へと沈む。かつてこの部屋の奥でまどろんでいたわたくしの足にもひれが生えて、長い髪を結うこともなく波間になびかせて、沈殿した書物を開き、そこに記された叡智と詩の響きとに耳を傾ける。もはや陸は崩れ去って久しく、この間に百年の時を経た。愛猫もまたその永いときを生きる魚(うお)となってわたくしの傍にある。沈黙と月光とを友として。やがて波間を照らす月影があなたの横顔に重なるとき、わたくしは