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失うとたくさん得るものがある

去年の今頃、何をしていたかはよく覚えている。入院、病室でひとりクリスマス、手術、術後の痛みに耐えた一夜、翌日から癒着を防ぐためによちよち歩き。手術への不安や恐れが去ったあとは、生まれ変わったかのように歩くことからスタート。歩くことがすべて、最も重要なことは歩くこと。傷ついた体を回復させるにはそれ以外ないから。歩幅5㎝くらいでのそのそ歩く。亀とはいい競争になるだろうってくらいの速さでゆっくりゆっくり。

廊下の端には大きな窓があり、そこからは富士山とお寺の五重塔が見えた。
「退院したら絶対、あそこに行く。普通に歩けるようになってあそこへ行くんだ」って思いながらひたすら歩いた。ガラス窓の向こうに見える富士山と五重塔が私の心の支えになった。

退院して五重塔のあるお寺へ行った。病院の窓から眺めていた五重塔がさえぎるものなく目の前にあることや、自由に歩けるようになったことがうれしかった。富士山にはまだ行っていないけど。
その後も数カ月間は手術した部位の筋肉に負担をかける運動はできなかったので、常に体の動かし方に気を付けていた。次第に気にしなくなり、そのうち全く気にならなくなった。

毎年この時期には、入院&手術記念日として思い出すことにしよう。入院中に出会った病気と闘う患者さんたちから感じた命の尊さ、一晩中いつなるかわからないナースコールに備え、患者さんのお世話を懸命にされていた看護師さんの献身、そして、頑張って健康を取り戻した自分のがんばり、不安、孤独、痛み、不自由ってどんなものか、健康のありがたさ、人の笑顔や優しい言葉や命があることへの感謝、いろんなことを学ぶことができたから。

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