記憶から消されたヘブン

クロアチアの美しい海岸線に沿ってバスで南下する旅もとうとう終わり。ドゥブロヴニクに到着した。ここは30年ほど前に内戦で破壊されたが市民たちが再建させ、いまでは「アドリア海の真珠」と謳われる美しい街並みで、世界遺産になっている。
（この旅での出来事は「あれは…妖精だったと思う」にも書いています）

ここの海の色は格別に美しく、見ていて飽きることがない。海に見とれながらどこ行く当てもなく小径を歩いていくと、誰もいない小さなビーチをみつけた。浅瀬にはごつごつした岩が点々としていた。ひとつひとつの岩には、意味があってその場所に存在しているんだという意思の強さのようなものを感じた。容易には海に近寄らせないようにしているかのようだった。

その中でも近寄りやすい手前の岩までたどり着いた。岩の上に腰をおろしたとたん、波が穏やかになった。

静寂の中で波の音だけ
太陽が熱を伝えてくる
光が波の上で踊っている

目を閉じて贅沢な時間を味わう。
すっかりリラックスして、一瞬にして眠りと覚醒のはざまに入り込んだようだった。

”よくここにたどりついたわね。
ここの海、岩、空気、光、
すべて汚さないでほしいの。
ここは地上のヘブン。
だから、この場所の記憶は消させてもらうわね。
充分休めたでしょ、あなたがすわっている岩は、太陽の光（パワー）が集まるところなの。
この先、何が起こっても、ここで得た力があれば乗り越えていける。この力は尽きることがないから。さあ、お帰りなさい”

「夢、見ていたのかな？」
すっきりしてさわやかな目覚め。
体の隅々まで力がみなぎっている感じがする。旅の最後にここに来られてよかった。

日常の生活に戻ればつらい現実が待っているけど、うまくやっていけるような気がしていた。”またいつかここに戻ってきたいな”　ホテルに戻り、この場所のことを日記に記しておこうとしたけど、どうやって行ったのか・・・思い出せなかった。

#私の不思議体験