すごく気になるけど、なかなかたどり着けない場所

伊勢神宮では20年ごとに式年遷宮、神様だって定期的に新しく清らかなご神殿に移られる。私も環境を変えてリフレッシュしようと思い、ネットで物件探しを始めた。

すぐに気になる物件がみつかった。駅近で買い物にも便利な今の住まいと比べると、近くにスーパーなどはないからちょっと不便。でも「魔女の宅急便」のキキが仮住まいした部屋のような感じで心惹かれた。それにこの家賃でこの広さはめったにない。
不動産屋さんにまだ募集中なのを確認して、まずは自分で見てみようと、今日、自転車で向かった。

今の住まいからは4kmくらい。1時間で帰ってこられるだろうと12時過ぎ、昼食をとらずに自転車で出発。
ナビが「到着しました」と言う建物はきれいな高層マンション。私が目指すマンションは4階建て。
「住所はこの辺りなのに見当たらないなあ」とその一角をぐるぐるまわること６周。しかも傾斜のきつい坂道。何度もナビを設定しなおしてもどうしてもみつからない。いったん自転車を降りて歩き始めたら、ナビでたどりついたマンションの裏に建物が見えたのだけど、そこへ行く道がない。道を探してまたこの区画を１周。もう３０分以上、くるくる回っている不審者みたいな私。
「この場所とはご縁がないんだろうな、もうあきらめよう」と思った時
「ここまで来たのにここであきらめたら、きっと見ないで帰ったことを後悔する、また気になって見たくてしかたなくなる」と思った。

もう一度、歩き始めたら、高層マンションの駐輪場にしか見えなかったスペースの奥に、裏のマンションに通じる小径があり、おそるおそる通ってみると、キキのいそうな目当てのマンションがみつかった。
中は見られなかったけど、環境がわかっただけでも十分来た意味がある。
恋焦がれたマンションへの思いが一気に冷めた。この坂の多いエリアはしんどい。空腹で家にたどり着いたのは３：３０だった。

こんなに時間をかけて何してたんだろう。でもこれでいいんだ。
強く望んだことを途中であきらめたら、
絶対に気になってしかたなくなるから。
そのあとずっとずっと長いこと、やらなかったことを悔いるだろうから。