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焼き鮭と肉じゃがと味噌汁。

スマホのメモ帳にそう打ち込み、打ち込まれた字面をぼーっと見ながら、ああ、字面から受け取る印象ってあるなあ、とあたりまえのことを改めて思った。

焼き鮭と肉じゃがと味噌汁。

典型的な和食のイメージと、なんだかおふくろの味的ななつかしさと。男受けしそうなボリューム感がないかわりに、胃にもたれない、ちょっと重たいものはなぁというときでも安心して食べられそうなやさしい感じ。

白い紙に記された、ただの黒い細い線が形づくる文字。あるいはPCのスクリーンにタイピングされた、ただのドットが形づくる文字。

直線やドットがどれも等しく構成しているはずの「ただの文字列」なのに、単語の羅列を見た瞬間に、ひとは無意識に、あまりにも多くのイメージを受け取っているなぁ、と思う。

焼き鮭と肉じゃがと味噌汁。

部屋とYシャツと私。

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ところで週末、なぜそんな昭和感ただよう文字列をスマホに打ち込んでいたのかというと、翌週分のざっくりとした献立を考えていたのである。

妊婦時代、安静指示を受けたのをきっかけにネットスーパーの便利さを知り、以来、育児中もかなりお世話になっている。日々の食材はもちろん、オムツやお米なんてかさばったり重たいものも玄関まで運んでいただけるのは大変ありがたい。

休業中は毎日のように散歩がてら買い物へでかけていたけれど、事業を再開してからは毎週末、ネットスーパーでまとめ買いをし、週の半ばに1度だけ、足りないものを買い足す。そんな週2の買い物サイクルで我が家の食材事情はまわっている。

なので週末、ネットスーパーの発注のために食材画面をみながらぼんやりと、翌週前半分の献立を思い浮かべるのだ。

この「ぼんやりと」、というのがポイントで、わたしの場合は本当に、メインの食材がまあ決まってその材料があればいいか、くらいのイメージである。あとはある野菜を組み合わせて適当に、なにかどうにか。

世の中ではいわゆる「ワーママ」さんのための?作り置きレシピ本が売れているらしいのだが、週末にがんばる!ということができない天性のだらけ体質のため、簡単につくれる手抜き料理をその日につくる、ということしかできない。しかたない。

ちなみに、ワーママって字面はあんまり好きじゃない。なんだろう、「わー!ママ!」みたいで(笑)。

なんか、いろんな商品のターゲッティングをしたりするのにわかりやすくキャッチーなカテゴライズが必要なのだろうけれど、そのパワフルできらきらしたイメージから脱落した、だらけ体質の身としては、普通に「働くお母さん」、とかでいいじゃんねと思っちゃう。

* * *

話が脱線した。…ようでいて実は本筋にもどった。

今日は字面の話をしていたのだ。

焼き鮭と肉じゃがと味噌汁。

無機質なスクリーンに打ち込まれた、白黒の文字列をぼんやりとながめつつ、「あ、この文字列なんか好き、落ち着く」とか言う人とは、ぜったいいい友だちになれそうだな、なんてことを思う。

あまり有名でない、つまりは中身が知られていない小説のタイトルだけを30個くらい並べて、この中から好きなもの5つに丸をつけてください、みたいなアンケートがあったら、近しい5つを選んだ相手とは男女問わず、高確率で相性がとてもいい気がする。

字面相性診断。

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最近は育児やら仕事やらをうまくまわすことで頭がいっぱいで、過去に書けていたようなゆるいエッセイがなかなかかけていない気がしていた。

焼き鮭と肉じゃがと味噌汁。

ほんとはこのくらいのトーンのゆるいタイトルだけで、もっとnoteを埋めてゆきたいのだけれどね。

まあ仕事や育児の奮闘も、わたしの「日常」であることに変わりはない。それについていろいろ考えてしまうのも自然なことなので、それを記すのもよいだろう。

ただ、たまに立ち返る指針として。

なんだか肩にちからが入りすぎているなあ、そんなときは「焼き鮭と肉じゃがと味噌汁」くらいゆるい字面をみて、フッと、ちからを抜いてみたい。

自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。