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住んでいた家や街がここに!《和倉昭和博物館》 (エッセイ)

母が亡くなった後、元気を落とした温泉好きの父を連れて能登の和倉温泉に行ったことがありました。
金沢から車で走ると、温泉街に入る少し手前に、《昭和博物館とおもちゃ館》という看板が見えます。
「ちょっと寄ってみようか」
建物自体はフツーのモダンな2階屋です。
鉄腕アトムが手を振って出迎えてくれます。
右側の塀には、謎の広告(?)《洗濯機はゼネラル》が貼られています。

「昭和博物館とおもちゃ館」正面玄関

《洗濯機はゼネラル》の横には、《おちょやん》こと、浪花千栄子サンが「家中みんなで」と《オロナイン軟膏》を体中至る所に塗るよう薦めています。外傷にも女性の肌荒れにもオヤジのヒゲソリにも効くそうですから、究極の《オール・イン・ワン》といっていいでしょう。
周りが錆びた、なつかしいホーロー製の看板ですね。
『わたしの名前はな、南口なんこうキクノといいますねん』
と本名と「軟膏」「効く」を《こじつけ》てたCMが懐かしい。

浪花千栄子の「オロナイン軟膏」ホーロー看板

もちろん、「15歳から70を過ぎた現在までスリーサイズがほぼ変わっていない」という由美かおるサンも、私たちを誘惑するかのようにフトモモを見せて、実は《アース渦巻》を買わせようと企んでいます。

由美かおるの「アース渦巻」ホーロー看板

さて、博物館の中に入ると、昭和30年代前半ぐらい、ちょうど西岸良平「三丁目の夕日」か少し前くらいの街並みや家の中が、かなり忠実に再現されています。

酒屋、駄菓子屋、煙草屋、……。当時走っていたオート三輪や原付バイクも並んでいます。

酒屋の前に停まっているのは、酒やビールの配達に使う、三輪の軽トラ、(たぶん)ダイハツ・ミゼットでしょう。
当時の酒屋には、こんなカウンターがあり、コップ1杯ずつ酒を買っては立ち飲みするオジサンがいましたね。

昭和の酒屋。「赤玉ポートワイン」など、当時の看板やポスターもそのままです。

ステアリング(操舵)構造が簡単なので、当時、いわゆるオート三輪は多かった。近所の商売をしている店は、酒屋も花屋も化粧品屋も、全て三輪軽トラでした。
時折、下のように大きな三輪トラックが、荷物をたくさん積んで危なっかしく走っていました。実際、スピードをしっかり落とさないと、曲がる時に転倒することもあったようです。

ダイハツ・オート三輪トラック(1.5トン積のCM型か?)

私が7歳の時に両親は洋風の家を建てましたが、それまで住んでいた家の《お茶の間》はまさにこんな感じ(↓)でした。母親の《鏡台》などは寸分たがうことなく、この部屋にあるモノ!でした。
ブラウン管テレビもこのサイズで、大鵬 vs.柏戸戦を見てました。大鵬に比べて人気は圧倒的に劣る、ジャングルポケットの斉藤慎二によく似た顔の柏戸が贔屓でした。
丸いちゃぶ台に関しては、大きさはこんなものでしたが、我が家のは中央が丸く外せるようになっており、そこに炭火をおこした《七輪》を嵌め込んで、一家全員で《すき焼き》や《鍋物》を楽しめる仕掛けでした。今の卓上カセットコンロより優れているのでは。

昭和30年代のお茶の間

台所に関しては、この写真(↓)ほどレトロではなく、水道水を使っていました。
ただ、いわゆる《シンク》はこの写真のようにタイル張りなので、うっかりガラスのコップを落とすとよく割れましたね。コップの強度自体も低かったのでしょう。友だちの家に行っても、台所も風呂の洗い場も、水回りはどこもタイルでした。

昭和の台所:水回り

マイカーブームは昭和40年代に入ってからですね。この写真は1968年発売のマツダ・キャロルですが、父はその頃、同じくらいのトヨタ・パブリカを買いました。

1968年発売のマツダ・キャロルと鉄人28号

鉄人28号と鉄腕アトムは同じ時期に月刊誌「少年」に連載されており、どちらも超・人気マンガでアニメ化もされました。
子供たちの中でも《アトム好き》と《鉄人好き》がおり、前者が多かったように思います。
私はといえば、《リモコン》をどちらが持っているかによって、《正義の味方》にもなれば《悪魔の手先》にもなるという、兵器としてはきわめて現実的な鉄人28号が好みでした。

博物館の中を歩き、《おお!》《あ、これ!》と、私はかなり反応したのですが、父はそうでもなかったですね。
同じ《昭和》でも、《ヒトケタ》ぐらいのモノを集めていないと感激しなかったかもしれません。

この建物の1階は以上のように「昭和博物館」、2階がメンコ、人形、ブリキのロボットや乗り物、ミニ家電などのママゴト用品、ブロマイドなど、昭和の玩具やタレント商品が集められた「おもちゃ館」になっています。

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なお、この時代のモノ・コト・ヒトについては、私より少し年長のイラストレーター《もりおゆう》さんが、マガジン「僕の昭和スケッチ」の中で素晴らしいイラストを添えて紹介されています。


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