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テロリストの《核》パラソル (エッセイ)

藤原伊織作「テロリストのパラソル」は、1995年に江戸川乱歩賞、翌1996年に直木賞を受賞したミステリー小説です。
私は直木賞を受賞して間もなく全文を読みました。
オール読物の直木賞受賞発表号に全文掲載されたものか、ハードカバーを買ったのかはもう憶えていません。

主人公が事件に巻き込まれていくと共に、振り返りたくない自らの過去をたどらざるを得ない ── とにかく傑作でした。
電通に勤務していた藤原伊織は、ギャンブルによる借金を返済するため、当時(おそらく今も?)最高だった賞金(1000万円)を目当てに乱歩賞に応募したそうです。

小説の内容はここに書きません ── ネタばれになるからではなく、その内容とこの記事は、まったく無関係だからです。

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ほぼ3カ月前に、

・政敵や自分に都合の悪い情報を流す人びとを毒殺する。
・相手に恐怖を植え付けるために徹底的に町を破壊し、無差別に市民を殺戮する。

こんなことを行う首謀者がいたら、私たちは間違いなく、

《テロリスト》

と呼ぶはず(「大統領」ではなく)── と書きました。

この頃から、私の頭の中に、藤原伊織氏の小説タイトルが《こだま》するようになりました。
作者には申し訳ないのですが、── タイトルだけが

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事態は悪化の一途をたどっています。

・《テロリスト》はさらに町を破壊し続けており、

・《テロリスト》は組織的に住民を強制連行(=大規模誘拐)し、

・《テロリスト》による黒海封鎖のためにアフリカの人びとの飢えが懸念される中、備蓄された輸出用の穀物倉庫を爆撃し、

そして、この27日、

・《テロリスト》は一般の買い物客で込み合うショッピングセンターをミサイル攻撃しました。

しかし、《テロリスト》を捕えたり、罰することはできていません。
《テロリスト》の棲み処に反撃をすることもできません。

《テロリスト》が《核》というパラソルを持っているからです。

──《テロリストのパラソル》

藤原さん(故人)、まったくの巻き添えでゴメンナサイ。

── では、私たちには何もできないのでしょうか。

国際連合は《テロリズム》を以下のように定義しています:

住民を威嚇する、または政府や国際組織を強制する、あるいは行動を自制させる目的で、市民や非戦闘員に対して殺害または重大な身体的危害を引き起こす事を意図したあらゆる行動

2004年11月、国際連合事務総長による報告書における「テロリズム」

我々にできることは、そして、「無力」ともいわれる国連の心ある人、心ある国にできることは、このような行為に対して、大きな声で、

それは《テロリズム》だ!
その連中は《テロリスト》だ!

何度も何度も叫び続けることです。

── 繰り返し、繰り返し、何度も何度も、《テロリスト》の耳元で、「《テロリスト》にも正義がある」と《テロリスト》をかばう人たちの耳もとで、何度も、何度も……。

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