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廊下でラグビー

「あー、やってたやってた、バカな男の子たちが……」シリーズでいくつか小学校時代のエピソードを書きました。
これまでのエピソードは、地域的偏りが比較的少ないものでした(豊登の「パコンパコン」は年代的偏りがありましたが)。

今回の話は少々特異なので、「やったやった共感」は少ないかもしれません。

反発係数が非常に大きなゴム製のボール《スーパーボール》が流行した時代がありました。

その少し後のこと、学校帰りにカプセルトイ(いわゆる「ガチャ」)を回したら、見たことのないものが現れました。素材はスーパーボール、形はラグビーボールの玩具おもちゃでした。

これをスーパーボールのように放り投げると、床に跳ね返る方向がまったく予測できず、うまくキャッチできない。
この「予測不能」がなかなか面白く、友人と廊下で遊んでいましたが、そのうちに、このボールを使ったラグビーゲームを思い付きます。

といっても正しいルールを知るわけでもなく、
「ボールを手にしたまま、廊下の端にある壁にタッチしたら《トライ》」という、単純なルールとしました。
「本家」と違って、前方に投げるのも「アリ」です。

本家ラグビーのように抱えて走るのでは面白さが激減するので、バスケットボールのように、パス(というより、とにかく投げる!)を奨励するルールにしました。

クラスの男子ほぼ全員が参加した《廊下ラグビー》です。
この企画は大成功!でした。
私個人も、── もちろん、「『ガチャ』で出た既製品」を利用しただけとはいえ ── 自分で考案したオリジナル競技にクラス全員が夢中になるのは、とてつもない《快感》でした。
競技上で問題が起こるたびに、ルールを作るのは私の役目でした。

これは、当時通っていた小学校で大流行しました。
……そして、面白いだけに、「トラブル」も内包していました。

想像してみてください:
ボールと共に、教室廊下を、十数人の男子が突進してきます。おっとっと、と避けようとすると、ボールは床に撥ね、まったくあらぬ方向に飛び、それに従って、突進してきた軍団も方向を変える……。
猪突猛進してきた連中は廊下の壁に激突し、その後ろから方向を変えた、新たな「猪突」が出現する……。

廊下を「平和裏に」歩けない他のクラスの連中が文句を言い始め、教師が問題解決に乗り出す……いつものパターンです。

……仕方なく、校庭に戦いの場を移そうとしましたが、「ラグビー型スーパーボール」はグラウンドではうまく撥ねることなく、その魅力は失われていきました。

開発品が流行し、それに伴って問題が起こり、当局が規制に乗り出す……思えば、《エレクトロニック・ショート・サーキット社》の開発商品もそんな経緯をたどります。

私は小学生の時、既にそのプロセスを見ていたのかもしれません。

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