金木犀のにおいが連れてくるのは
早朝、窓を開ける。ひんやりとした風がカーテンを揺らす。秋の風だ。しんとした、まっすぐな空気。あまいにおいがまじる。
まだ九月も上旬である。例年、金木犀のにおいに気が付くのは十月の足音が聞こえる頃ではなかったか。そう思いながら、そのにおいを深呼吸する。そうすると、必ず思い出す風景がある。
高校の、クラブハウス、というと聞こえはいいが、実際には古ぼけた木造の部室棟、は二階建てだった。一階の最も校庭に近い、端の部屋が生徒会室。建物のきわに植えられた金木犀が、秋になると香った。私