マガジンのカバー画像

10秒で読める小説

119
100作書けたので、次の目標は150作!ってことでボチボチ書いていきます。
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

【10秒で読める小説】わんぱく

【10秒で読める小説】わんぱく

息子の通う保育園にはわんぱくな子が多く、毎日泥だらけになっている。が、繊細な息子の服はいつも綺麗だ。
つい「泥だらけだと、ママ嬉しいな〜」とこぼしたら、次の日、息子は泥だらけで帰ってきた。
「ママ嬉しい?」
「とっても嬉しいわ」
「ママのために頑張って、泥を擦り付けた甲斐があったよ」

【10秒で読める小説】味にうるさい

【10秒で読める小説】味にうるさい

猫は一生に一度、人語を話すという。
タマが喋ったのは、唐突だった。
「このメーカーのカリカリ、好きじゃニャいよ。訴えてるのに気付いてくれニャいからさぁ!」
驚きつつも「じゃあ何が好きなの?」と尋ねる。
「ニャーニャー!」

貴重な一回を、好きなものを伝える方で使ってくれたら良かったのに。

【10秒で読める小説】隠し味は愛情です

茹で上がったパスタに特製ソースをかけて黒胡椒を挽く。
恋人に出すと「美味い」と喜んだ。
私たちは、とうにお互いに飽きていたが、味は気に入ったらしい。

「どうしてこんなに美味しいんだろ」
「それは、あなたの……ことを想って作ったから」

照れた彼を見て、私も満足してほほ笑み返した。

嘘よ。
本当は、
「あなたのお兄さんのことを想って作ったから」

【10秒で読める小説】とりあえず詰まったら叩く

【10秒で読める小説】とりあえず詰まったら叩く

グホォ!何かが詰まった。
「いやねえ、吐いてちょうだい」
ママさんは言うが、そう簡単に、僕吐けないよ。
「仕方ないわねぇ」
ママさんが力いっぱい叩く。やめて、見かけによらず僕、繊細だから、大事にして?
「ホラ出てきた」
ママさんが僕の口から摘み出したのは、坊ちゃんの小さなレゴだ。
「さ、お掃除再開っと!」
ママさん、もうレゴは吸わせないでね。

【10秒で読める小説】俺がバスを降ろされた理由

【10秒で読める小説】俺がバスを降ろされた理由

バスの中、赤ちゃんの泣き声が響いた。必死に赤ちゃんをあやす、若い母親。

周囲から浴びせられる白い視線に憤慨した俺は、「母子を救おう」と意を決した。
床に座り込んで地団駄を踏む。
「うわあああああん!!」
毒をもって毒を制す。
泣き声を制すのは、更にでかい泣き声だけだ。

【10秒で読める小説】タマゴ

【10秒で読める小説】タマゴ

「さっきコレ出産してん」

オカンはそう言ってダチョウの卵のようなものを見せた。
「俺もう二十歳やで?下らん冗談やめろや」
そう答えてから、オカンの腹が凹んでいるのに気付いて、面食らった。

「ひと月温めたら赤子が出てくるで」
「ハァ?なんでわかるねん、そんなこと」
「二十年前にも同じ事があったからなぁ」

【10秒で読める小説】イマジナリー?

【10秒で読める小説】イマジナリー?

「マスター聞いてくれよ。3歳の娘と実家に行くと、犬が怖いって騒ぐんだよ。犬いねぇのに」
犬の霊ですかね?
「嫁もそう言ってたわ」

男がトイレに立つと、連れの男が話しかけてきた。「もっと怖い話してやるよ」
あー実は僕、幽霊信じてなくて。
「あいつ娘いねぇよ。結婚もしてねぇし」
やだ怖い。