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「きれいなだけでは済まされない」

いつもの帰り道、

夕焼けが、とてもきれいに見える橋の袂に差し掛かり、

ふと大空を見上げた時、ぎゅっと抱きしめられたいって、

衝動に駆られて自らの腕を両脇に廻した。

あまりにも壮大で、吸い込まれそうになったから。

ぎゅって。


その後、

何も無かったかのように、ふらふらと街中へと歩いていき、

すぐさま溶け込むように、自らの姿を消そうとした。


いま思えば、妙に気恥ずかしさが、込み上げてくる。

あの時の風景は、パノラマ写真にも、収まりきらない。

天から降りてくるもの、一斉に降り注いでくるもの、

身ひとつで、全身で受け止めたいって思えたから。


抱きしめると同時に、眼から透明なものが流れ落ちていった。


もう二度と、同じ気持ちには、ならないだろう。


大空を、大空と、ハグしたくなった刹那。




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