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「遊び」こそアクティブラーニングだ

学校帰りふらりと空き地に立ち寄る、仕事帰り居酒屋の灯りに吸い寄せられるサラリーマンたちも子供頃そんな経験をしていた(かも知れません)時代がありました。

しかし、日本人のソウルアニメ、ドラえもんに登場する空き地のような場所は私たちの日常からはどんどんと姿を消しています。

一体今の子供たちはどこで遊んでいるのでしょうか?厚生労働省の調査によると、子供たちは、「海岸や林」で遊んでいるようですが、23区にはそんなところありそうにないですよね。郊外に行けばまだたくさんありそうですが・・・。

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(第15回21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)及び第6回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/syusseiji/15/dl/gaikyou.pdf

さて、話をもどして、現実問題、子供たちの遊び場は「公園か家」となっているようです。このことから何が言えるのかというと、子供たちの遊びは基本的に「大人たちによって安全の担保された、ガイドラインの決められた」中に移行しつつあるという分析です。つまり、子供たちがドラえもんの空き地で遊んでいたように「自分たちでルールを決めて遊ぶ」という機会が少なくなってきているのです(失っているではないです)。この厚生労働省の調査の調査では「誰と遊ぶか」という項目がないので、詳しいことはわかりませんが、この点も興味深いところです

遊びはなぜ大切なのか

オランダの歴史家、ホイジンガは人間を「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」と定義した用に、「遊び」というのは、人間にとってとても大切なことのようです。心理学の研究では、自由に遊べないことによって

1 自らの行動や感情のコントロールが出来ない

2 不安・落ち込み・無力感を持つ

3 自己中心主義の増大や共感能力の低下

というネガティブな症状が出てくることがわかっています。

今回詳しくは書きませんが、子供頃の「ごっこ遊び」が後々の学習パフォーマンスや非認知能力に影響を及ぼすという研究もあったり、「自由に遊ぶ」というのが実はものすごく大切なのです。そして、「遊び」こそが人間の持つ可能性を解き放つエネルギー源であるという研究が続々なされています。

遊びとは何か

ボストン大学心理学部で教鞭をとるピーター・グレイ教授によると、遊びの要素は以下の5つにまとめる事が出来るそうです。

1 遊びは、自己選択的で、自主的である

2 遊びは、結果よりもその過程が大事にされる活動である

3 遊びの形や規則は、物理的に制約を受けるのではなく、参加者のアイディアとして生まれるものである

4 遊びは、想像的で、文字通りにするのではなく、「本当の」ないし」「真面目な」生活とはいくらか意識的に解放されたところで行われるものである

5 遊びは、能動的で、注意を怠らず、しかもストレスのない状態で行われるものである

グレイ教授の研究を一言でまとめると「自由で能動的な状態」こそ遊びの最も根幹であるということになります。そう、可能性の解放、最も自由で能動的な状態こそ、学習にふさわしい状態なのです

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生涯幼稚園生 MIT Lifelong Kindergartenプロジェクト

「生涯ずっと幼稚園生だよ」と言われた、一瞬ドキッとしてしまいますよね。でも、「生涯幼稚園」とい名前のプロジェクトが名門マサチューセッツ工科大学で行われているのです。世界中の子供達に愛されるビジュアルプログラミングツールSCRATCH の生みの親、ミッチェル・レズニック教授率いるこのプロジェクトは、「遊び」をつうじて学びを最大化する、そして

生涯ずっと学び続ける

というテーマを掲げました。大人になると仕事に没頭し、遊び心を忘れてしまいがちです。「遊び心」を失ってしまうと、実は「学び」も楽しくないものになってしまうのです。

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このことを、レズニック教授は「4つのP」というキーワードを使って説明しています。学びに必要な要素は、

1 Project (課題)

2 Play(遊び)

3 Peer (仲間)

4 Passion(情熱) 

人は、課題を通じ、遊びながら、仲間と共に、情熱を持って学ぶのです。

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主体的・対話的で深い学び

「主体的・対話的で深い学び」の実現とは、以下の視点に立った授業改善を行うこと で、学校教育における質の高い学びを実現し、学習内容を深く理解し、資質・能力を身 に付け、生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすることである。

中央教育審議会答申(2016年12月)

我が国の学習指導要領でも2016年から「主体的・対話的で深い学び」というワードが登場しました。これはアクティブラーニングという横文字がしっくりとこないために置き換えられた、とまことしやかに噂されているのですが、兎にも角にも<ちょっとぴんとこない>という方も多いのではないでしょうか。

さらにこのようにも書いてあります。

「主体的・対話的で深い学び」の実現とは特定の指導方法のことでも、学校教育における教員の意図性を否定することでもない。人間の生涯にわたって続く「学び」とい う営みの本質を捉え・・・

つまり、「主体的・対話的で深い学び」は方法論でも教員の意図を越え、子供たちの生まれ持った「学びに対する意欲」を刺激するものだということになります。

子供たちは赤ちゃんの頃から能動的に学んでいるのです。学校は子供たちの持つ学びに対する意欲を阻害してはならず、むしろサポートし育てていく場でなければなりません。

こういった視点から見ると、近年話題となっている謎の校則とか部活問題も違う視点から捉えることが出来るのではないでしょうか。

「遊び心溢れる授業」を実践するヒント

レズニック教授らは、遊びを授業に取り入れるヒントを紹介してます。それは、

1 シンプルに始めること
2 好きなものに取り組むこと 
3 何をすべきかわからないときは、とにかくいじくりまわすこと
4 実験することを恐れないこと
5 共に働き、アイディアを分かち合う友人を見つけること
6 他のものをコピーしてもOK
7 あなたのアイディアをスケッチブックに残すこと
8 構築し、分解し、再構築すること マシュマロ・チャレンジ
9 こだわりすぎると、うまくいかないかもしれない
10 自分自身の学びのヒントを作ること

ちょっと今回は長くなってしまいましたね。

一度授業を振り返ってみて、もし「遊び心」が足りていないと感じることがありましたら、ぜひ実践してみてください。

読んでくださりありがとうございます!

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