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最近、こんな事があったんです。

希釈した会釈を会得しました。悪ガラスと申します。


最近冷蔵庫がギュウギュウになってきたんです。

皆さん、冷蔵庫って知ってますか?知ってますよね。風呂上がりに開けたくなるあのデカブツです。それ以外にも中に入れたものを冷やす機能があるんです。肝も冷やせますよ。この前冷蔵庫の奥に賞味期限が2003年の黒くなったフライドガーリックを見つけたんです。これは財宝発掘というよりはパンドラの箱の開封に近いですね。まぁそれはいいんですわ。それも確かに最近あった事だけど、さらに驚いた大事件があったんですよ。

その時はシリアルを食べていたんですね。時間帯は夜の11時頃でした。朝に食べるものを夜食べる。これが朝に対する反抗なんですよ。明けない夜はないそうなので、明けない夜を好む身としては許さないという気持ちを持ち続けているわけです。シリアルには牛乳がつきものですね。サクサクしていたシリアルが徐々にしっとりとふやけていく。まるで風呂場でやけに気になる親指の先の白さの様に、染み込んだ牛乳はそれはそれは甘く、僕はその光景を脳内で明瞭に描きつつ牛乳を目当てに冷蔵庫を開けました、というところで序章が終わります。

ここから悲劇は矢継ぎ早に訪問販売をしてきます。

なんと冷蔵庫の中にカッターが入っていたんです。そう、実は刃を冷やす事でアルミホイルを切る際に手の震えが抑えられるという情報を地表から受信したので実践していた事をすっかり忘れていました。ちなみに、カッターの刃はあらかじめお湯で消毒してあります。そのカッターの隣に見慣れない器があった事に強く惹きつけられました。冷蔵庫の中には食品が有象無象入っている為、特に不審に思う事なく手に取って中を覗いてみると、

中に入っていたのは湿った髪の毛の束と花弁だったんですね。

え、いつ誰が前衛的なコース料理の前菜をここに入れたんだ?と辺りを見回しましたが、既に拡張された現実には赤紫の荒野が流入しており、人の気配はありません。花弁は白く、先にいくにつれて淡い赤になっています。それはそれは細く美しい、吹雪の中でそっと微笑む雪女の唇を思わせる薄い一枚が荒れ狂う人毛の海の上に高瀬舟といった具合で静かに鎮座していたのです。

家族の仕業ではない事は明らかでした。だとしたら外部の攻撃、あるいはカッターを冷却した事による連鎖反応だと知覚したので即座にカッターを取り出しました。雪女をイメージしていたせいか、握ったカッターの先から一気に辺りの荒野が雪景色へと変わってしまいました。こうなると、冷蔵庫はものを冷やすものではなく、ものが凍らない様にするものへと変貌します。これがダブルバインドとなり、カッターの行く先に迷いを与えました。

器を再度覗くと、そこには先程のものは入っておらず、卵黄の健やかな黄色と芳しいバニラビーンズが入っていました。

そう、いつの間にか、カスタードプリンを作っていたのです。

これは飲みかけのコップの内容物を忘れて新しい一杯を淹れるのと同様の現象で、既に冷蔵庫にはスイーツが数種類入っていたのです。それなのにここにあるのは自家製プリン。怖い、怖過ぎる......

まぁそれはそうと、手で掬って一気に掻き込んだプリンは美味しかったですね。食べても食べても器からプリンが減らないので何杯も食べていると、ふと子供の頃の作文を思い出しました。プリンをお腹いっぱい食べた〜い!と、童心特有の強欲さを全面に描いていたあの文章。あぁ、今、叶っているんだ。叶って良かったなぁ......と、しみじみなりながら、残酷にも夜中に食べるプリンは太るという事実は曲がりませんでした。

最も怖いのはその後で、どうやら食べかけのシリアルをそのまま一日放置していたらしい、という事なのですが。


以上、世間話ではありますが、個人的に面白かった思い出なのでここで話せて満足です!











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