【きいてみる稽古】立ち方と覚悟(研究生日誌 たか)
きいてみる稽古 第12回 までのプロセス
「きいてみる稽古」とは、聞き手のための型稽古で、相手の言った言葉(の語尾の部分)をただ繰り返すだけというやり方をする。たったそれだけのことなのだが、最初はなかなかできなかった。わざとらしい気がしたり、なんとなく”とってつけた”よう言い方になる気がして、口に出すのがなんとなく恥ずかしく、どうしても言えない。
そのうち、違和感はあるけれどもまずはやってみると心に決めて、おずおずと相手の言葉を繰り返すようになった。おずおずとやるもんだから、ちょっとタイミングがズレてしまう。変な間があいてなんとなく噛み合ってない感じがした。
今度は間髪入れずに返そうと思って、とにかく色々考えないで今だと思ったらパッと言葉を返すようになった。その時繰り返した言葉が的を得ていたのか、どうでもいいところで返しているのかはよくわからなかったが、とにかくパッと動くということをやるようになった。
そうするうちに、時々、楽に語り手についていける瞬間が出てくるようになった。相手の語りがゆっくりになって、相手自身が自ら内側に降りていき、時々浮上して言葉を発し、また内側に潜っていく。そんな風に相手がどんどんと自分の世界を探求するとき、こちら側はどんどん楽になっていく。相手の内的世界をこちらも理解できるとか感じられるとかではなくて、相手が何を考えて何を感じているのかよくわからないまま横にただいるだけ。それがなんとも心地いい。そんなこともあった。
でも、わたしの繰り返し方がちょっと表面的すぎて、それが語り手には違和感として感じられて、ちょっと語りにくくなったりすることもある。よくある。つまり、わたしは相手の語りの中のポイントとなる言葉には気づいているのだけど、そこに込められている実感や意味を体感しながら繰り返すってことができていない。たぶん、わたしはちょっと焦っちゃってるんじゃないかな。繰り返すことに精一杯というか。あ、ここ!と思って即反応して、相手の語りの流れの合間に自分の言葉を入れることに一生懸命になってるというか。
この稽古を指導してくださっている岩橋由梨さんは、相手がどんどん語っていてこちらが言葉を差し挟むタイミングがない時は、心の中で繰り返すだけでもいいと言う。次からはそれをちょっと心に留めてやってみようと思っているところだ。
日常生活では、わたしは相手の言葉を繰り返すことがほとんどない。ラボラジオでもやらない。なんとなく、繰り返した言葉が不自然に浮いてしまいそうで、やっぱり言えないのだ。まだ自分のモノになっていないからだろう。
だけど、心の中で繰り返すということは、時々思い出した時にやっている。昨夜ゆきのさん(ラボ研究生)とzoomで打ち合わせしていた時も、ここは大事に聞きたいと思った時は、なるべく心の中で繰り返そうとした。
相手が話してくれた大切なこと対して自分がなんて返そうかとか考えるているときは、ちょっと私の体がこわばる。でも、心の中で相手の言葉を繰り返そうとすると、相手の語りの終わりまで注意深く聞くことになり、相手の語りの細部にまでわたしの意識が向いていき、こわばりは少しゆるむ。相手になにかしようとしないでついていく、ということが少しできたような気がした。まぁそれは、気心の知れたゆきのさんが相手だったから、ということもあるのだろう。
聞き手としての立ち方
ところで、今週の稽古でわたしが一番印象的だったのは、相手の言葉を繰り返す時に聞き手として「これでいいのかな?」という疑問を挟まない方がいいと、由梨さんから言われたことだった。
今自分がやっている型を一回信じ切って、自分の型を守る。この人のために、この時間をかけがえのないものにしたいというプロ意識、職業としての覚悟が欲しい。わたしはこれでいきますよとこちらのスタンスを示せば、相手も覚悟を決めざるを得なくなる。と、由梨さんは言っていた。
この稽古の直後にわたしが書いたメモはこちら↓
わたしは今まで何度もこの間違いをやってきた。知っていたはずなのに、また同じことをやっていた。何度も何度も同じ失敗をする。でもそうやって繰り返しながら学ぶしかないのだろう。
それにしても、こうしてフィードバックしてもらえるのは本当にありがたい。由梨さんはいつも、その人が今抱えているテーマやその人が進みたいと思っている方向に向かって、そっと光をあててくれる。
岩橋由梨さんのワークショップ情報
きいてみる稽古に興味を持った方は、一度岩橋由梨さんのワークショップに参加してみてください。きいてみる稽古情報は、ワークショップ会場で直接お尋ねください。
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