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important feeling

ああ、やっぱり、なんで…

彼女の顔をさりげなく見つめていたら

嫌でも気づいてしまう。

俺にはあんな風に笑わない…


何ヶ月ぶりかの職場の飲み会。

少人数で軽く飲みましょと

いつものメンバーで久しぶりに飲み屋にいる。

これまたさりげなく、彼女の隣をキープするが、

特に気にする風でもなく、淡々と接せられるとこちらもいささか、気後れしてしまう。


俺と話す時は、あんな全開の笑顔じゃないよなあ…

心の内でぼやく。

そりゃ、口を開けば憎まれ口や嫌味が飛び出る自分ではと、分かってはいるものの、

これでは、好きな子に悪戯してしまう小学生以下ではないかと自虐が止まらない。

そのくせ、そんな顔、他のやつには見せるなよと、誰目線の台詞だと自分自身にツッコミたくなる。

あーくそ。

俺、こんなに独占欲強かったか?

触れたい、抱きしめたい、俺だけのものにしたい。


そう思ってしまうのだからしょうがない。

「どうしたんですか?」

こちらは見ずに彼女が尋ねる。

「何か言いたいのかなって。…違いますか?」


「…うっ」

言えるか、ド阿呆。

「いや….久しぶりやな。飲み会。」

何かを誤魔化したのはバレバレだろう。

それでも、彼女は

「うん。ほんとに久しぶり。」と素直に応えて、みんなとの会話に戻っていった。


もっと近くに彼女を感じたい。

手を伸ばせば届く距離にいるのに、

彼女の側にいる自分は全く想像できない。


いつか、本音を言えるだろうか。

いつか伝えられるだろうか。

その時彼女はどんな顔をするだろう。

どこまでも弱気な自分に喝を入れたくて、

グラスを一気に飲み干した。










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