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形見分け

昨日は、会議と委員会三昧の日で、いつもだったら、うんざりするはず。ところが今月は、この”通常”が嬉しいくらいだった。

先月の今頃は、感染対応まっさかりで、非日常的過ぎた。悲しいことが沢山あった。

それで昨日は「反省会をせねばなりません。」と言うノリで、施設会議の際に鬼化していた私。

その一方で、同じくらいの比率で感じ始めていること。

例え、利益のためとか、良い顔するために、まったく情報不足のまま入所させて来る相談員や施設長らに怒りつつも、結局は感謝していることに気が付いている。

情報不足を許すわけじゃない。主治医が誰かも分からない、既往歴も分からない。そんな人たちを我々に押し付けることは許せない。でも、結局は介護の人々と我々で、色んな謎解きをしていくうちに、その人々が元気になっていく。

そんな時、この出会いに感謝せずにはいられない。もう、ほんとに大変だけど。

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コロナ陽性者が発生した際、一番の脅威は、命の存続なのだけど、同じくらいの脅威として、廃用症候群というものがある。隔離は、生身の人間にとって辛すぎる。

そんな中、コロナではなく、老衰でお看取りして行った方々に寂しい思いをさせたのではないか?と悲しんでいた。

皆、現場の職員たちは、「忙しくてごめんなさい。」と、忙しいことを謝る。考えてみれば変な話だけど、走り回らなければならない状況を詫びて周りつつ仕事をしていた。

そして、もう一つの問題は、コロナに振り回された先月は、大きな赤字を出すはずだった。一番かかるのは、材料費。ガウンも防止もN95マスクもシューズカバーも、全てがディスポーザブルなので、どんどん使う。アルコールも山ほど使う。

ところが、月次報告を出してみると、黒字。これはいったいどういうことなのか?特養である限り、普段でも黒にすることは、それなりに難しいのに。

それは、お看取りした方の旦那様が、奥様を看取ったその後で、多額な寄付をして下さったからだ。これには度肝を抜かれた。そんなものは受け取れないよ。

しかし、その老紳士は「とんでもない。私は、正月に自分自身が手術を受けましたが・・・。妻が逝くのは、その間だと思い込んでいました。いや、それよりもっと前、昨年末だと思っていたくらいです。それなのに、こんなにもたせて下さって。」。

私たちではないでしょう。奥様自身が旦那様の退院と、再会を待っていたのでしょう。その気持ちを思うと涙が出る。

そして、会議中に月次の数字を見つつ、その手前に旦那様と先に旅立った奥様の顔が浮かび、涙が出る。

「これは妻の形見分けです。本当に皆さん、ありがとう。皆さん、是非ともお身体に気を付けて。大変だとは思いますが、お身体に気を付けて。」

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涙がハラハラと零れるので、施設の傍の公園を散歩する。初めて行ってみたのだけど、巨大な鯉が沢山いることに驚いた。

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しかも、亀まで寄って来る。

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げっ!亀もいるんだ?!亀なんて、久しぶりに観た!

などと思っていると、すぐそばに、もっと居た。

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しかも、寄って来るし。

そして、何だか、白黒模様の鴨らしき子たちもいた。可愛い形をしているけど、何故だかすごぶる目つきが悪い。

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確か、こういう公園の生き物には、餌をあげてはいけないはず。生態系を崩したり、水を汚したりするから。

それなのに、あらゆる生き物が沢山寄って来る。

広い池の生き物が一点集中して来るので、あきらかに変。

そして、そんな最中、真っ白い巨大な鯉が浮上して来たのでビックリした。

でも、写真はダメなようだ。撮ろうとすると、首(?)を横に振って深く沈んで消える。また浮き上がって来る度に、またスマホを向けるのだけど、また首を振って沈む。

分かりました。写真はダメなんですね?と、手を降ろすと水面に巨大で真っ白な身体を半分出して、グルグルと旋回していた。

わけも分からず「ありがとう」と口をついて出る。

何を観ても思う。

生きているって、素晴らしい。

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