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白昼の恐怖(だったこと)

週末は重病なのに入院させて貰えない人の元へ点滴をしに通った。
そこそこ距離がある職場なので行って帰って来るだけの軽作業だけでも少々大変な気がする。

が、しかし、それ以外はのんびりと自宅で過ごしていた。

昨夜は相方Kちゃんが、勤めている施設で最後の夜勤。これで彼女はそこを退職。

夜勤明けだけど最終日だから色んな人に挨拶をするので「帰りは11時くらいになる。」と言っていた。

なので10時くらいにレタスとハムとチーズのサンドイッチを作り始めて、珈琲を立てる準備をしておいた。

あとは動画でも見て帰りを待つだけなのだが、10時半頃に玄関のダブルロックを鍵で開ける音がして、カバンをドサッ!と置くといういつもの帰宅時の音がした。
玄関に駆け寄って『おかえり~。』と言った私は、次の瞬間、ぎょっ!とする。

ダブルロックはかかったまま誰も居ない玄関を目にしたから。

慌てて外に飛び出て4階から地上を見下ろす。彼女の自転車は無かった。カバンを置いてすぐに出かけたとしても、自転車で走り去るには間に合わないほどの短い時間だ。

何かの聞き間違いだろうか?

何だか不気味だな~と思いつつもソファーに戻ると、本物の彼女が返って来た。今度は鍵を開けてドアを開けてドアベルが鳴って、カバンを置く音。
よく彼女がする猫の鳴き真似で「にゃー、ただいまー。」

私は駆け寄って『なんか、怖いんだよ!さっきね!』と口に出したのだけど、また背筋が凍る。異様に静かな玄関。開けた形跡もない白いドア。

えー?!

寝ぼけているとか金縛りならいざ知らず、覚醒時にこんなことがあるとは。

幼い頃から不思議なものを観たり体験したりして来たのだけど、ほとんどの場合『怖い』という感情を持ったことがない。でも、この私が怖い!と思うんだから、ほんとに怖いことが起こっているのかも知れない??と妙にパニクった。

『気を付けて帰って来て。』とラインを打って待つしかないのだが、何かあったんじゃないか?という恐怖と、いったい2回も玄関に入って来たのが何者なのか?というダブルの恐怖。

それが何と、11時半まで5回も繰り返された。

4回目の時には同じ音がしても駆け寄らず、黙って息をひそめていた。本物であって欲しいけれど、行ってみてまた誰も居なかったら怖い&ガッカリだからだ。

そうし息をひそめてじっとしていると『あれ?』と、かすかな声がしたので戦慄。
が、こういう時に人間の本質が出るもので、怖いのは確かなのだが、反射的に玄関に『この野郎!』と言いつつ走って行ってしまう。『いい加減にしろ!』と。
怖すぎて「ぶん殴ってやる!」と思ってしまうのだ。(←?)
で、結果、誰もいない。
そんなに広い家じゃない。ほんの数メートル歩けば玄関。

5回目にはカバンを置いた後、これまた微かな声で「ふう。なかなか帰り着かないな。」と聞こえた。

もう、どうしようか?どうしたら良いんんだろ?と思ってお香を焚いて、茫然としていると、正真正銘のKちゃんが帰って来た。今度は本物だ。『いやあー、疲れた!なかなか帰して貰えなくて!・・・、え?どうしたの?お香なんか炊いちゃって。』

この話にオチは無い。あれが何だったのかも分からない。

ただ、バリバリの覚醒時に起こったこの出来事をKちゃんに話すと『ああー。多分私自身のやつ(生霊)かも。だって、本当に早く帰りたかったんだもん。』と言う。

その後二人で話し疲れてソファーで寝落ちしたのだが、彼女が帰って来て移行、同じ現象は起こらなかったので、ほんとにそうだったのかも知れない。

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