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マイルールのぶつかり合い

先日、うちのナースと介護職員が電話で言い合いをしていた。どした、どした?と訊いてみると、あきらかに相手の方がおかしいという事情だった。間違った時間に間違った事をしている。

で、この方の場合、いつもそうなのだ。決まった時間帯に居るパートさんなのだが、いつもマイルールを作ってしまう。そして、そのマイルールには、危険なことまで含まれる。また、マウントを取りたがる人でもあるので、自分より下だと判断している職員にそのルールを押し付けて回る。極端に言うと、何しているか分からない。

でも、幸か不幸か、お喋りなので、それがすぐにばれる。

お題は変われど、毎回同じような状況なので、本来だったら介護のトップである課長に相談すべきなのだが、この青年は、揉め事が嫌い。もっとも、本来、間違ったことを注意するのは揉め事とは違うのだが、彼の場合はこれも揉め事に入るらしい。もう、とにかく嫌われないように過敏に生きている感がある。

そうなると、組織の中で介護の棟梁として扱われるのが主任のKちゃんになる。何だか申し訳ないのだが私も他の人々同様、Kちゃんに相談した。「あの時間帯の職員がこういうことしているんだよね。これは危険だよ。もし、Kちゃんの指示なら止めてくれないかな。」と。まあ、Kちゃんの指示なはずないと分かってはいるんだけど、念のため。

その時、たまたま課長さんが傍にいた。「あ。カッチョさん。」← 気まずい。

すると彼は「あの人はパニックを持っているので気を付けてモノを言わないと。」と言う。

思い切り、スルーした。

私もパニックの辛さは分かるのだけど、仕事で人命を危険にさらしているのに、周辺がその人にいつも気を使ってモノを言い、その人自身は全然気を遣わずマイルールを作って行くってのは、どうなんだ。その上、正当なことを言われると「私はパニック持ちなので優しくして下さい。」。

ある予測したルール通りにならないと激しい症状が出てしまうのなら、次から次へと根拠のないルール増設を止めていただくのはその人のためでもある。

多かれ少なかれ、みんな、ルールを作りたい。そのルールからはずれなければ安心・安全というエリアを決めて、その中で過ごしたい。

カッチョさんには、自分はイケメンで人気者で全員に優しいナイスガイと常に思われていなければならない。というルール。

パートさんは、”この時間帯は、私がいつもいる時間帯だから全員が私のルールに従わなければならない。これを破る人が居たら、私はパニックになってでも権利を行使すべきである。”というルール。

私は、”ええから、人命守れや。変なことすんな。恰好つけるより人命守れや。”というルール。

すると、そこまで話を聴いていたKちゃんは「黙れ。」

え?今、パートさんに何と言いました?

「この時間帯にやるべきこと、なーーんにも終わってないじゃないかあああ!最低限のことを終わらせるまで口を開くな!」

・・・・。確かに、Kちゃんが至るところに貼っているワークフロー。どれも終わっていない様子。

注)このワークフローは凄いです。どんなド素人でも、このフロアの仕事が全部出来る内容です。作るの大変だったろうと思うほど詳細。

「やれ。話はそれからだ。」

「はい。」

・・・・・・・・。”パニック持ってるから気を使え”って言われて腹を立てた私の、さらにその上を行っている。いいんだ、それ。

私たちは、時間番長と呼んでいるそのパートさんが大丈夫かな?と思ったのだが、やるべきことが分かると、特に問題なくこなしている模様。

しかも。

パートさんの就業時間が来たその時。

「時間だよ。お疲れさまでした。(帰れ)」

「あ、はい。お先に失礼します。」

え?話は?

あとから、うちのナースさんが「さっきのあれ、どうなりました?」と言うので「うーん、なんか、大丈夫みたい。間違いは正されました。」と答えておいた。

私の中にもカッチョさんのような良い人ぶりっこな部分がある。なんだかんだ言って、嫌われたくない、きつく言いたくない。そして、時間番長ドアホウなパートさんも10人くらい居る。”みんな、あたしのルール守れよ!あたしは、こんなに精神追い詰められるほど頑張ってるんだぞうっ!”とか。

半端しないKちゃんを観て、似たり寄ったりの投影合戦に気が付いたのだった。

***

家に帰ると、棟梁は、マグロのように横たわり、時々トドのように寝返りをうち、ドーナツを頬張りお笑いを観て粉を飛ばしている。

深く考えないのと迷いがないのは、同義語なのかも知れない。

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