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謎のオーダーメイド

何度かこのnoteに書いているとある介護職員のおばちゃんについて。

やたらとボディタッチしてくるところとか、余裕がなくなるとすぐ怒鳴ったりやつあたりするところとか、当初色々と険悪になる理由はあったのだが、今や憎めない。

多分この施設で一番長い職員さんかも知れないし、話を聴いていると介護保険が適用される以前からこういう仕事をなさっていたのかも知れない。それで新しい人が入って来る度にけんせいをしかけたりするのかも知れないが、『そういうの嫌いやねん。止めて。邪魔しないで。』という意思表示をしているうちに段々仲良くなった。色々あった諸々を割愛するとそんな感じ。

ところで、施設には100歳越えのお婆ちゃんが幾人か居るのだが、そのうちのお一人が入院中に褥瘡を作って退院して来たとのことで、私が入った2ヵ月前からその処置をしている。

円背な上に、エアマットの上に寝ているので、オムツ交換も褥瘡処置もやりにくい。皆さん腰が痛くなるし、第一本人がゴロゴロ転がされて苦痛だろう。

それでこのHさんという介護さんが『浴衣にしてあげてはどうかな?』と言ってくれたので「良いですね。」と賛成した。体形やエアマットの特性上、しょっちゅう更衣しているので、それは本人も楽だろう。

有言実行の人なので翌日はもう浴衣になっていた。

ありがとうね!と感謝してオムツを開けようと思ったその時、何と、浴衣の下にズボンを履いていた。ぎょっとした。長い長い浴衣の下にズボンである。

『寒いかと思って。』

一瞬『前よりやりにくいわっ!』という言葉が出かかったが、そこは飲みこんだ。何せ毎日汗ダラダラで利用者さんのことを考えてくれているんだから。

そんなわけで何も言わなかったというのに、最近この人、人の顔色を読むところがある。

何と翌日『お試しだけど、浴衣を一枚だけ短く切って縫って来たよ!』と綺麗にたたまれたそれを見せて来る。

え?凄い。あたかもオーダーメイド。(誰も頼んでないけど。)

『いや、昨日Ohzaさんが処置する時にやりにくそうだったから。どかな?これ。』

いやあ、凄いですね。一日で作って来たんですか。ありがとうございます!

仕事が早いので、次に訪室した時には、既にショート丈に裁断し縫われた浴衣を着せられていた。

処置をしていると、Hさんが走って来て、例によって距離を詰め、顔面を近づけ、『どう?どう?』と訊いて来る。

き、綺麗に縫ってありますね。ありがとうございます。

『いや、そういうことじゃなくて、やりやすい?』

はい。やりやすいです。ありがとうございます。
少し前だったら怒号していただろうが、今や憎めない。
まさか『浴衣をショート丈にしてズボン履かせた。つまりは元のパジャマスタイルと同じだろ?!』とは言えなかった。

その代わり、100歳越えのFさんに話しかけた。『Hさんはさ、あなたと私の両方のことを考えてくれてるんだね。』と言っただけなのだけど、何故だか顔をくしゃくしゃにして爆笑してくれた。可愛い。

F婆ちゃんもきっと私が何を言いたいのか読む人なのかもしれない。

愛すべき人々であるということに変わりはない。

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