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違和感あるもの 馴染むもの

病院での患者さんや施設で出会った利用者さんたちのことを思い出す。

その半数くらいの方々が今もご存命の方々であり、残りはお空へ旅立ってしまった方々でもある。

前者はもちろんのこと、後者の方々ですら今も鮮明に心の中で生き続けている。
施設ナースの時代に入ってからの人々は、主に相方のKちゃんも知っている方々が多いので、よく話題に上る。
今どうしていらっしゃるのかね?と。

歌うことが好きだったおばあちゃんたちは、多分今頃天界のカラオケルームでマイクの奪い合いをしているのではないか?という話が出る。
時期が重なった人たちの間では、このうつつで同様のことが起こっていたし。ばあちゃんたちは、皆個性的で暴力でバトっている人たちもいた。

きっと、神様に怒られている。『うるさいと思ったら、また〇〇ホームから来たやつか!』と。
きっと人より早く追い出されて転生しているかも知れないねと笑ってしまった。
よくその人のことを思い出して語ることが供養になるとは言うけれど、果たして本当なのだろうか。

不思議に思うことがある。
もう半年以上もお会いしていない特養の利用者様や、昨年そこを退職してから単発で行った施設で出会った利用者さんたちの顔が浮かぶ。
凄く短い間だったというのに、どうしてこんなに顔が浮かんで来るのだろう?そして、どうしてあんな話をしてくれたのだろう?と思う人が沢山いる。
数日前に蹴って来た施設で、かつて正社員の話が出た時、その不思議さが尚一層胸をかすめた。

本当にもう二度と会わないのかな?あの出会いは何だったのだろうか?と。

そして、クローゼットにぶら下がっている着慣れた白衣の数々を見ても同じ感覚に陥った。もうこれを着ることがないのかな?本当に?と。
正社員に誘われたその施設の白衣は男女兼用でズドンとしたデザインで好きになれなかった。高級有料老人ホームをうたっているというのに、ペラペラと安っぽい生地で絵具のセルリアンブルーのような色をしていた。

その支給された2枚の白衣は誰かのお古であるのにも関わらず、貸し付けられるときに誓約書にサインをさせられた。辞める時にはクリーニング代を実費で払うか、自分でクリーニングに出して返すことという文章が書かれた誓約書だった。

多分、嫌になって去る人が多いせいなのか、そのまま白衣が返って来ないというパターンがあるのだろう。
その安っぽい白衣以外を着ることも許されなかったので毎日洗濯しなければならなくて不便&不自由だった。

たかが白衣なのだが、振り返れば、来ている時間が私服より長いので充分面倒なルールだった。
『お世話になりました!』と実費を払った時には、軽くなり、どれがどれだけ重い出来事だったか?ということを思い知った。

その他にも変な方法で人間を縛ろうとするルールがあり、逆に向こうが『ほら、嬉しいだろ。あげるよ。』と押し付けて来るものは、あの変な白衣同様、不格好で要らないものばかりだった。

昨日行った単発派遣の施設は、ぶたっまげたことにまさかの一人ナース。でも、久しぶりにクローゼットに手を伸ばし、自分にピッタリしたサイズの白衣を着れたことが、この上なく嬉しかった。

***

来週はいよいよクリニックの先生と面接が入るわけだが、まだまだ日にちがあるので懲りずに単発派遣で行ける施設を探したところ、以前行ったことがある施設が目についた。
ここからたった3駅くらいの場所で、Kちゃんと一緒に行ったこともある。

途端に、その施設の利用者さんたちの顔が浮かんだ。お元気にしていらっしゃるだろうか?
思いもかけず、また1日2日でお会いできることになった。

そんなことがとても嬉しい。

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