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ハッピーの準備

喫煙所にあるベンチの一つに座ると、目の前に地下の入浴場の窓がある。それは、レースのカーテンに仕切られていて、ほとんど何も見えないが、ただ室内の窓辺に誰かが近づくと、かろうじてその人物が見える。少なくとも明るい昼間はその程度だ。

しかし、仕事をあがって帰る間際にそこで一服していると中が見えた。気が付かなかったのだけど、室内が明るくてこちら側が暗いと透けて中の様子が見えるらしい。
ということを今夜気が付いた。
何せ、こんな遅い時間に入浴場の電気がついていたのは、初めてのことだったから。

複数の人影が見えるし、それが誰なのかが分かる。そしてこの夜に限っては、とある歌が流れていて、5人の介護職員が踊っているのが見えたのだ。しかも、キレッキレのダンスで、全員が揃っている。ノリノリだ。どうも、山本リンダさんの曲に合わせて踊っているらしい。

すぐに何をやっているのかが分かった。
クリスマス会の日に披露するダンスを皆で練習しているらしい。
あまりに上手なので、呆然として見惚れてしまった。

先日は、冷たい地下のコンクリの上で一人の介護職員が大きなダンボールで何かを作成しているので訊いてみたところによると、大掛かりな手品の仕掛けを作っているとのことだった。

管理室には日々華やかなラッピングが施されたプレゼントが積み上げられていく。多分全員に行き渡る数なのだろう。

この施設のイベントへの力の入れ方は凄い。施設の部屋や廊下の壁にも日々飾りが増えて来ていて、もう飾るスペースがないやんか!というくらいになっている。

楽しむ方も楽しませる方も、皆その日を待っているようだ。

ただそれだけのことなのだけど、こんなことにも全力なのだなあと感心してしまう。

もしかしたら12月は、一年で一番忙しいのと同時に、一年で一番誰かのことを思う季節なのかも知れない。

このカウントダウンに入ってからつくづく思う。

毎日色んなことがあり過ぎるほどあるのだけど、今この時期、この施設に居られて良かったなあと言うことを。

一つ一つ、大切なことを思い出している。

つい3か月前まではこんなところに自分が居るとは思いもよらなかったと言うのに、一つ一つ思い出しては、要らないものをまた捨てて、大切なものをしまい直している。

メリークリスマスと言いたい相手と言いたい場所。

キラキラと輝いている。

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